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  3. 地方創生工夫に限界 交付120億円、商品券が中心

 「地方創生」に向けた国からの交付金は、県内の自治体には総額約122億円が配分されることになった。県と33市町村は人口減や少子高齢化対策、地域活性化の事業に活用するが、その内容は国が推奨するプレミアム付き商品券が中心だ。自治体からは「新規事業を立案する時間がなかった」との不満も漏れ、統一地方選をにらみ交付金をアピールしたい政府の思惑をよそに、地方による創意工夫の限界も垣間見える。

 地方創生交付金は自治体の人口やその流出状況、財政力などを基準に算定され、これらの状況が厳しい地域に手厚い。このため、人口規模が同じでも配分額が大きく異なるケースがあり、金額の多寡にまちの盛衰が重なっている。

 人口42万人の藤沢市の交付額は約3億円。40万人で約5億5千万円が交付される横須賀市の半額程度にとどまる。「人口が伸びているから交付金が少ないのは仕方ない」と藤沢市の担当者。使途を外国人観光客向けの環境整備や中小企業の販路拡大などに絞っている。

 人口72万人の相模原市にも迫る交付金を受け取る横須賀市は子育て支援や定住促進、都市イメージの向上、公園の遊具整備など幅広い分野に使う。「最大の課題は人口減」との危機感から、住民の市外への転出を食い止めるすべを見いだそうとしている。

 ただ、両市で最も金額が大きいのは、プレミアム付き商品券の発行事業だ。他の市町村も基本的に同様で、宿泊券とした箱根町を除く32市町村が商品券の発行を行う。「バラマキ」との指摘もあるが、ある市の財政担当者は「経済効果が高いとして国が推奨しており、他の選択肢は事実上なかった」とこぼす。

 「交付金は使途の自由度が高いと国は説明していたが、いざ事業を計画するとハード整備には認められていないなど制約が多く、受け取れるはずの交付金の全てを予算化できなかった」という自治体もある。

 各自治体は交付金を2014年度の補正予算に計上し、15年度当初予算に繰り越した上で4月以降に事業を進めるが、「本来の予算編成で忙しい時期に、新規性のある取り組みを別途考える余裕はなかった」という声は多い。このため、新年度予算に盛り込む予定だった事業を単に14年度の補正予算に前倒ししたケースも出ている。

 こうした制約や課題がある中で、各自治体は知恵を絞っている。横浜、川崎、相模原の3政令市は産業支援や福祉の充実を図り、厚木、大和市など県央地域では子育て支援策を拡充する動きが目立つ。

 民間の有識者会議「日本創成会議」に「消滅可能性都市」に名指しされた9市町村をはじめ、小規模な自治体は直面する人口減の課題に対応。空き家対策や多世代居住への支援、コミュニティーバスの利便性向上といった地道な事業に交付金を振り向けている。

 これらの事業の実施と並行して、自治体は将来の人口ビジョンや施策の数値目標を盛り込んだ地方版総合戦略を策定しなければならない。

 地域経済学などが専門の岡田知弘・京都大大学院教授は「地域再生は長期にわたる問題で、計画作りも十分時間をかけて行う必要がある。国が一方的に指標を押しつけること自体、地方自治に矛盾する。自治体が裁量権を持って使える地方交付税交付金こそ増額すべきだ」と指摘する。

 ◆地方創生交付金 総額4200億円。うち3827億円の配分が3月下旬に決定した。商品券発行などに利用できる消費喚起分と人口減少対策などに活用する地方創生先行分に分かれている。全国1788自治体の97%に当たる1739自治体が購入額に一定額を上乗せした分の買い物ができるプレミアム付き商品券を発行する。地方創生分の配分額は観光振興が最も多く、産業振興、人材育成・確保と続く。地方創生分は300億円を上乗せ分として留保しており、10月末までに人口減少対策の5カ年計画「地方版総合戦略」を作成した自治体に配分する。2016年度に向けて新型交付金が検討されている。


■県内の地方創生交付金の配分額と主な事業 配分額と主な事業
県    45億7924万円  旅行券、地元名産品の消費拡大
横浜   25億7000万円  商品券、横浜ブランドの認知度向上
川崎   9億1606万円  商品券、がん検診のコールセンター
相模原  6億0071万円  商品券、ロボット導入支援センター開設
横須賀  5億5412万円  商品券、公園の大型遊具設置
平塚   2億5121万円  商品券、民間保育所への助成
鎌倉   1億3239万円  商品券、公共空間のWi-Fi整備
藤沢   3億0378万円  商品券、外国人観光客向けサイトやアプリ
小田原  1億9887万円  商品券、歴史的建造物の活用促進
茅ケ崎  2億4735万円  商品券、高齢者の就労・社会参加促進
逗子     8962万円  商品券、小児医療費助成の拡充
三浦   1億1162万円  商品券、住宅リフォーム券
秦野   2億0608万円  商品券、出産支援金の支給
厚木   1億8968万円  商品券、第2子以降出産でおむつなど支給
大和   2億1796万円  商品券、認可外保育所などへの助成
伊勢原  1億0628万円  商品券、農産物の販売・消費促進
海老名  1億1605万円  商品券、出産でおむつ支給
座間   1億7006万円  商品券、創業や販路拡大支援
南足柄    5541万円  商品券、産業集積構想の促進
綾瀬     9698万円  商品券、住宅リフォーム券
葉山     4804万円  商品券、小児医療費の所得制限撤廃
寒川     5054万円  商品券、コミュニティーバスの運行日拡大
大磯     5271万円  商品券、中学校給食の導入
二宮     6195万円  商品券、多世代同居・近居への助成
中井     2003万円  商品券、オンデマンドバスの利用促進
大井     3634万円  商品券、小学校のICT教育推進
松田     3986万円  商品券、小中学校へのタブレット端末導入
山北     4089万円  商品券、民間と連携した交流スペースの運営
開成     3061万円  商品券、定住促進のPRやサイト開設
箱根     2498万円  宿泊券、外国人観光客向けの情報環境整備
真鶴     4049万円  商品券、レンタサイクル
湯河原    6006万円  商品券、宿泊券、観光関連の新規イベント
愛川     4914万円  商品券、3世代同居への助成
清川     1960万円  商品券、道の駅整備


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