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県議選、約2割が審判なし 無投票過去最多タイに

社会 神奈川新聞  2015年04月04日 14:10

自身の当選が決まったものの、他候補の当選へ「頑張ろう」と気勢を上げた市川氏(中央)=3日午後5時40分ごろ、川崎市幸区の事務所
自身の当選が決まったものの、他候補の当選へ「頑張ろう」と気勢を上げた市川氏(中央)=3日午後5時40分ごろ、川崎市幸区の事務所

 11選挙区19人。3日告示された県議選(定数105)で、有権者の審判を受けない無投票当選者の数だ。1991年と並ぶ過去最多タイだが、定数は当時より10減で、全体に占める割合は18・1%と今回が過去最高。全国に目を向けても、無投票当選者の割合は21・9%に上る。審判のないまま多くの議席が決まる実態に、有権者からは「選挙を経てこそ、市民の代表」「地域をより良くしようという人材がいない証拠」などの苦言が上がっている。

 「残念だが、こればかりは致し方ない」-。前回に続き無投票となった川崎市幸区(定数2)。ともに2期目となる自民党・田中徳一郎、民主党・市川佳子両氏に「勝者」の感慨は薄い。万歳もなかった。

 県議選はこの日から9日間にわたる舌戦の火ぶたが切られたが、両氏とも初挑戦だった前回に続く無投票。県議ではこれまで一度も投票用紙に名前を書いてもらった経験はない。

 当選を伝える選挙管理委員会からの電話連絡を受けた田中氏は、支援者から「おめでとう」の声が掛かっても、硬い表情を崩さなかった。「これまでの評価を得票という数字で見ることができるのは4年に1度の選挙しかない。率直に残念」と話した。

 「議員を続けられるのはうれしいが、本来は有権者に名前を書いてもらって選ばれるべき。内心複雑だ」。市川氏は当選後、そう明かした。緊張感のある中で政策を訴える機会は1日で終了したが、「これからは仲間の応援に全力を尽くす」と語った。

 「厳しい選挙戦をくぐり抜けてこそ、有権者の声を聞くようになるはず。連続無投票は候補者にとってもよくない」。川崎市幸区に住む自営業の男性(74)は、区内の有権者の思いを代弁する。

 意思表示できなかった有権者にも認めてもらえるような議会活動を-。両氏は異口同音に、そう気を引き締めた。

 幸区以外で連続無投票だったのは足柄上(定数1)。厚木市(同3)、横浜市金沢区、川崎市高津区、相模原市緑区、鎌倉市(いずれも同2)では初めて無投票となった。

 11選挙区のうち半数超の6選挙区は2人区だった。ある国会議員は「2人区は自民、民主の指定席になりやすい」とし、他陣営が二の足を踏みやすいと指摘。実際、自民と民主で議席を分け合った2人区は、4選挙区に上った。

 関係者の要因分析は、さまざまだ。擁立を模索したある陣営は、人物・経歴重視で民間企業で活躍する人に白羽の矢を立てたが、結実しなかった。当選を見通せない上、国会議員と市町村議員の間で「存在感が薄い」との指摘もある県議の位置付けを踏まえ、「仕事を辞めてまで出馬を決断するのは難しかったようだ」と明かす。

 県西部の1人区の関係者は「保守地盤が強い上、安倍政権が堅調で、他党は対抗馬を立てる余力がない」と分析してみせた。

 政党の組織選挙が厚い壁になったとの指摘も。無所属出馬を検討した関係者は「選挙運動の制約が多く、政党相手の選挙ではかなわない」と回避理由を語った。

 国会議員のため息は深刻だ。「国会議員だって、批判されたり、自分の時間がなかったりで『割に合わない』と言われ、担い手を発掘するのに苦労している。まして、国会議員に比べ注目される機会の少ない地方議員は…」


 3日に告示された41道府県議選と17政令市議選では、総定数2284に占める無投票当選の比率は2011年の前回(17・6%)を上回る、過去最高の21・9%。5人に1人以上が、有権者の審判を受けないまま、議員として4年間活動する資格を得た計算だ。

 政務活動費の使途をめぐるメディアの追及に号泣したり、逃げ回ったりする地方議員の姿は、有権者の記憶にも新しい。国政関係者の一人は「魅力がないと映っている面もあるのでは」との見方を示す。

 こうした現状に、有権者は何を思うのか。

 「県議は地域の声を反映させる人」と話す相模原市緑区の自営業の男性(79)は、「名乗りを上げる人が少ないのは寂しいこと」とこぼす。一方、三浦市の自営業の男性(61)は「県議は何をやっているか分かりにくい」と暗に批判した。

 「主張を競って、選挙を経てこそ、市民の代表だと思う」。鎌倉市に住む自営業の女性(70)はそう語り、力を込めて続けた。「無投票で当選した議員のこれからの活動をしっかりチェックすることが、私たち有権者の責任」


◆区割りや定数再考を 横浜市立大国際総合科学部・和田淳一郎教授(公共選択論)の話 都市部以外の1人区は保守系でまとまる力学が働き、2人区は中央の政界事情の影響を受け、自民と民主で分け合う傾向がある。議員と有権者の距離をどう縮めるか、という観点から、区割りや定数の在り方を再考すべき時期に来ている。県議選が無投票になることで、同時に実施されている他の選挙の投票率低下も懸念される。

◆議会制民主主義の危機 政治アナリスト・伊藤惇夫さんの話 無投票は議会制民主主義の崩壊につながりかねず、その弊害は大きい。県議を目指す若い人が出てこないのが問題。政治全体への無関心、政治不信を象徴している。地方創生が焦点となっているが、自分の地域から変えていこうという意識が重要。地方議員に対する不信感の強まりもあるが、だからこそ自分が変えるという人に出てきてほしい。


無投票当選が決まり、支援者らに頭を下げる田中氏(右)=3日午後5時15分ごろ、川崎市幸区の事務所
無投票当選が決まり、支援者らに頭を下げる田中氏(右)=3日午後5時15分ごろ、川崎市幸区の事務所

神奈川県議選の無投票当選の推移
神奈川県議選の無投票当選の推移

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