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追いつかぬ介護施設整備 在宅型転換に現場悲鳴

社会 神奈川新聞  2015年04月03日 10:07

小規模な介護施設の陽だまりで花を植え替える入居者(右)と介護者=小田原市内
小規模な介護施設の陽だまりで花を植え替える入居者(右)と介護者=小田原市内

 急激な高齢化に対応するため、介護の在り方が施設入所型から在宅型への転換が迫られている。入所施設の整備が追いつかず、コスト面でも自治体の負担が大きすぎるためだ。ただ、地域での受け皿となる在宅介護も課題が山積み。家族の負担軽減や地域のサポート体制などの面で不備が指摘され、現場からは懸念の声が上がる。

 県によると、県人口は5年後の2020年には減少に転じる。ただ、高齢者人口は当面増え続け、65歳以上の高齢者は40年に全体の35%を占めるようになる。

 県は、40年に特別養護老人ホームの床数を4万9千とする計画だ。10年の約1・8倍。だが、この間、入所者の大半を占める85歳以上の人口は19万8418人から73万1139人へ約3・7倍の急増をみせると推計される。現時点で入所待ちは2万2千人を超えており、増床しても需要を満たしきれない。

 特養は定員100人ほどの規模でも建設費だけで20億~30億円が必要。新設には自治体の補助金支出が伴う。とくに、地価も高く、空地の少ない都市部では事業者が用地を確保するのが困難になっている。

 そこで国や自治体が取り組もうとしているのが在宅介護へのシフトだ。

 ただ、小田原市の担当者は「地域で在宅介護を、というがそう簡単ではない」と話す。

 同市では1999年から人口が減り始め、高齢者比率の高まりは県平均より3年ほど先行している。

 在宅介護支援に力を入れる方針を掲げ、15年度からの3年間で介護の専門職を配置した地域包括支援センターを5カ所から12カ所に増やす計画だ。

 一方、在宅扱いとなる地域密着型の小規模事業所の新設は2カ所で事業者募集するにとどまっている。

 その理由について担当者は「地域密着型の小規模多機能型居宅介護施設の開設は市が事業者を募集するが、デイサービスやショートステイといった在宅介護支援の事業所は県の指定で開業できる。見込み以上の施設数が開業すれば、利用者の数に応じて市の予算が想定外に膨らんでしまう」と話す。縦割りによる連携の取りにくさが、抑制的な計画につながっているという。

 県の高齢社会課も「介護保険サービスの事業所は条件を満たせば開業を規制する条項はない。市場原理に従って事業者が経営することになる」という。

 疑問は現場からも持ち上がる。

 小田原市内で特養やデイサービス、小規模多機能などを手がける小田原福祉会の経営本部副本部長、佐野光子さん(64)は「在宅、在宅というが、誰のためのものでしょうか」と問いを投げ掛ける。「住み慣れた家で最期を迎えたいという人も多いだろう。でも介護を引き受けるのは家族。無条件で快諾できる人がどれだけいるだろうか」

 共働き、晩婚化といったライフスタイルの変化もあり、以前と比べて在宅介護が環境的に難しいケースもあると感じる。

 佐野さんは「入所か在宅かという単純な構図でない。複雑化しているからこそ、負担や不安をどう軽減するかを考える必要がある。まずは、いざというときに相談できる場所を地域にきめ細かく配置していくことが重要」と指摘している。



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