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地下鉄サリン事件20年 遺族ら「惨劇繰り返すな」

社会 神奈川新聞  2015年03月15日 10:37

地下鉄サリン事件の経験を語る元捜査員の稲冨さん(右端)ら関係者=東京都千代田区
地下鉄サリン事件の経験を語る元捜査員の稲冨さん(右端)ら関係者=東京都千代田区

 オウム真理教による地下鉄サリン事件から20日で20年を迎えるのを前に、事件の記憶を伝える集いが14日、東京都内で開かれた。被害者遺族のほか、教団と対峙(たいじ)した地域住民や捜査員らが集まり、戦後最悪とされる惨劇を振り返った。「忘れたら繰り返されてしまう」-。教団の凶悪化を防げなかったことを検証するとともに、事件を知らない若者にも語り継いでいくことを誓った。

 「声を上げても、警察や行政は動いてくれなかった。住民が直接、オウムに土地を売ったわけではないが、地下鉄サリン事件が起きたことは申し訳ない」

 事件当時の生々しい写真がスクリーンに映し出された会場。約330人の参加者を前に、山梨県上九一色村(現甲府市、富士河口湖町)で教団の撤退を求めて闘った住民代表の竹内精一さん(86)が、涙声で語った。

 1989年、村に拠点を設けた教団は宗教施設「サティアン」で数多くの事件を起こし、サリンも製造。95年の地下鉄サリン事件では、13人が死亡、6千人以上が重軽症となる大惨事を引き起こした。

 教団による被害者支援に取り組んできた弁護士の宇都宮健児さん(68)は、89年にオウムが横浜で起こした坂本堤弁護士一家殺害事件に言及。「当時から教団の関与が疑われていたのに、なぜ地下鉄サリン事件を防げなかったのか」と問題提起した。

 サリンを散布した元教団幹部の林郁夫受刑者(68)を取り調べた警視庁の元捜査員稲冨功さん(68)は「当時は宗教関係(の犯罪)に対し、警察内部でどの部署が対応するのか明確になっていなかった」と指摘、ほかの参加者からは各地の警察が連携していなかった点を悔やむ声も上がった。

 「警察や司法、行政、マスコミなどいろいろな組織に責任がある」と強調したのは、地下鉄サリンや坂本弁護士事件の実行犯に判決を言い渡した元東京高裁判事の山室恵さん(67)。「残念ながら社会は不完全で、人間は弱い。また同様の事件は起こり得る」と警鐘を鳴らし、「各組織が失敗した理由は何かということを検証することが大事で、まだ検証は不十分。足元を見つめ、少しずつでも前進していくべきだ」と呼びかけた。

 会場では、地下鉄サリン事件の被害者を対象に行ったアンケートで、回答した299人の3割に心的外傷後ストレス障害(PTSD)の症状があるとの調査結果も報告。被害者の会代表世話人の高橋シズヱさん(68)は、集会の意義をこう話した。「忘れたら繰り返されてしまう。経験した人が、若い人に伝えていくことが警告になる」

 ◆地下鉄サリン事件 1995年3月20日午前8時ごろ、警視庁や中央省庁が集まる営団地下鉄(現東京メトロ)の霞ケ関駅を通る3路線5車両で猛毒のサリンがまかれ、通勤客ら13人が死亡、6200人以上が重軽症(警察庁調べ)となった。オウム真理教教祖だった松本智津夫死刑囚の確定判決は「間近に迫った強制捜査を阻止しようと、阪神大震災に匹敵する大惨事を起こし、都心部を大混乱に陥れるために企て、実行した」と認定。事件の2日後、富士山麓にあった教団施設などへの強制捜査が始まった。一連の裁判では、事件後の入浴中に死亡した1人を除き、死者は12人としている。

【神奈川新聞】


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