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「水素元年」 神奈川県内企業もビジネス活発化

経済 神奈川新聞  2015年03月09日 17:56

開発した燃料電池について語るケミックスの佐藤取締役=相模原市
開発した燃料電池について語るケミックスの佐藤取締役=相模原市

 水しか出さない“究極のエコカー”とされるトヨタ自動車の燃料電池車(FCV)「MIRAI(ミライ)」が市場投入され、水素エネルギーが注目されている。「水素元年」と言われる中、県内でも大手、中小を問わず、水素関連ビジネスで企業の動きが活発になっている。

 「東日本大震災後に、環境性能があらためて見直されていたところに、ミライが登場した。乗り遅れまいと水素関連の研究熱が高まっている」。語るのは、研究開発用途向けの、水素を使った燃料電池開発に1990年代後半からいち早く取り組んできたケミックス(相模原市南区)の佐藤元彦取締役だ。

 社員数人の小さな企業だが、半導体関連の電子材料開発で培った樹脂加工技術を応用し、燃料電池の性能を高めてきた。社会人や大学生などが手作り電気自動車で走行距離を競う代表的レース「ワールド・エコノ・ムーブ」の燃料電池部門で、複数チームに採用された実績がある。サイズや出力など豊富な製品ラインアップがメーカーや研究機関からの支持を広げ、基礎研究に役立てられてきた。

 拡大するリチウムイオン電池市場の陰で、苦しい時代を長く経験したものの、今では燃料電池部門が売り上げの半分近くを占める。「時代のニーズが追いついてきた。縁の下の力持ちとして燃料電池技術の研究・開発を支えていけたら」と、世界最軽量など機能性、独自性を高める改良を進めている。

 自動車・建設機械部品大手のプレス工業(川崎市川崎区)も、FCV関連のビジネスに参入した。フレイン・エナジー(札幌市)と共同で、移動式の水素供給装置の開発を進めており、全国の水素ステーションへの導入を目指す。

 プレス工業の角堂博茂社長は「公害ゼロの次世代車は、価格さえ下がれば非常に大きなマーケットになる」と期待を込める。FCV普及の初期段階では、移動式の水素ステーションが中心になるとみて、コンパクトな水素供給装置の需要も高まると見込む。

 開発中の装置は、水素関連の研究開発で約15年の蓄積があるフレイン社が得意とする有機ハイドライドから水素を取り出す方式を採用し、長期保存や長距離輸送が可能になることが最大の強みだ。いやが上にも期待が高まる水素時代の到来。大手との連携に踏み切ったフレイン社技術部の永金雅浩プロジェクトリーダーは「今、水素の時代が来なければ100年後も来ない。今やるしかない」と意気込みを語る。

FCV普及へ課題も

 FCV普及へ課題は山積している。燃料電池の関連企業や団体でつくる協議会が、2025年度に200万台、ステーション千カ所程度の目標を掲げるが、実現は容易ではない。15年度中に計画されるステーション整備は100カ所程度にすぎず、大都市圏に集中している。

 道路からの距離や強度などの規制が厳しく、約1億円で設置可能なガソリンスタンドと比べて、設置コストは4億~5億円と高い。県内ですでに3カ所のステーションを開設したJX日鉱日石エネルギーの開発担当者は「グローバル基準と比べれば非常に厳しい安全基準に対応するため、過剰品質の素材を使っている。水素施設から公道まで8メートルという規制がもう少し緩和されれば、設置しやすくなる」と打ち明ける。黒字化への道筋も「ステーション単独の採算は、まだはじき出せない。トヨタさんに多くの車を売っていただかないと」というのが実情だ。

 ミライを発売したトヨタに続き、ホンダも15年度中のFCV投入を予定する。一方、日産自動車は現在は電気自動車(EV)の普及に力を入れていることもあり、「17年度中の販売を計画」と温度差がある。

 日産は01年からFCV開発に着手し、05年にはガソリン車並みの加速性能、航続距離を実現、国内外での実証走行は延べ140万キロを超える。しかし、開発担当者は「低コスト化が課題。開発段階では1台1億円のレベルだ」と明かす。「ミライが723万円で、後発ならさらに下げなければ勝負にならない。まだ車種も未定だが、現時点では顧客が満足する価格で出すのは厳しいだろう」

 浜銀総合研究所調査部の毛涯郷史研究員も「FCV開発は日本が先行しており、17~20年にかけて主要メーカーの車が出そろう。それまでにインフラ整備が進んだ上で、一般ユーザーが購入する価格帯に下がるかどうかが勝負になる」と指摘。普及には燃料電池システムや水素タンクの価格低減に加え、水素ステーション設備や建設用地への規制緩和が不可欠になるとし、「国内では、水素ステーションに国際基準の4倍程度の高い安全基準を課している。2倍程度の欧州基準並みには規制緩和すべきだ」と訴える。

【神奈川新聞】


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