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神奈川県知事選:検証 黒岩流〈4〉異次元外交 海外で覚書積み重ね

政治行政 神奈川新聞  2015年02月24日 12:11

ベトナムを訪れグエン・タン・ズン首相(右)と会談した黒岩知事。この訪問で県はベトナム計画投資省と「経済交流に関する覚書」を締結した =2014年7月(県提供)
ベトナムを訪れグエン・タン・ズン首相(右)と会談した黒岩知事。この訪問で県はベトナム計画投資省と「経済交流に関する覚書」を締結した =2014年7月(県提供)

「アフリカへの開発支援を行う仏政府機関『CVT-Sud』とのMOU(覚書)締結で、本県のライフサイエンス産業のアフリカへの展開も期待できる」

昨年10月21日の定例記者会見。知事の黒岩祐治は、3日前に帰国した欧州訪問の成果に胸を張った。

黒岩が、最先端の医療・健康産業の創出を目指す「ヘルスケア・ニューフロンティア」を進める上で重視してきた「知事外交」。県民に健康活動を促す「未病」は「ME-BYO」と変換。早くから「米国、アジアと来て、次は欧州だ」と言い、頭の中で世界戦略を描いてきた。

政府機関や州、大学のトップと会い、医療分野などで協力するMOUを重ねてきた。その数は、県が主導する一般社団法人「ライフイノベーション国際協働センター」分も含め、担当局関係で10に上る。

新産業創出に向けて県内発の最先端の薬・医療機器を諸外国に売り込むと同時に、「迅速で優れた海外の薬事承認制度を見せ、日本の制度的欠陥を浮き上がらせる」(知事周辺)との思惑もある。その意味で本丸は規制改革とも言える。

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昨秋の欧州訪問では、黒岩は携帯電話大手ノキアが成長を遂げたフィンランド・オウル市との覚書締結をアピールしようと、同市と県庁をインターネットで結び、市長との共同会見を設定した。

「新ビジネスが生まれることを期待したい」。県庁会見室のモニターには、北欧の情報関連産業都市との協力関係構築に満足げな黒岩の笑顔が映し出された。広報課担当者らが数日前から通信テストを繰り返し本番も支障なく終えたものの、翌日の新聞各紙の扱いはいずれも小さかった。

「異次元の県外交だ」。黒岩は息巻くものの、積み重ねるMOUは包括的な協力を確認し合うもので、具体の事業を明記しているわけではない。締結を土台に商談やプロジェクトが進むはずだが、そうした発表はまだ一つもない。庁内からも「MOUはシェークハンドにすぎない」(県幹部)との声が聞こえてくる。

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県議会も同様に冷めている。むしろ「大手企業のエボラ出血熱の薬をアフリカに売るとか、知事がやる仕事だろうか。県民の利益にどうつながるのか」(自民県議)と、疑問の声さえ上がっているのが実情だ。

県には「自治体外交」を全国に先駆けて切り開き、庁内に脈々と受け継がれてきた歴史がある。長洲一二知事(1975年から5期)が提唱し実践した「民際外交」である。

国家間の外交に対し、民衆同士の国境を越えた交流を意味する造語で、地方自治体の立場で平和構築に貢献しようとした取り組みだった。バトンを引き継いだ岡崎洋知事も韓国・中国・日本の3都市の友好関係の発展に努めた。

長洲県政を長年支えた元副知事の久保孝雄は、「黒岩外交」にこんな感想を持つ。「経済交流の環境をつくるのは良いが、県知事がセールスマンになってはよくない。日中関係が悪化する中で舛添要一都知事は就任直後に北京に行った。もう少し大神奈川県の知事として、中央に迎合しない、そうした発信があってもいい」

=敬称略

◆未病(ME-BYO) 健康と病気を明確に二分せず、連続的に変化するものと捉える概念。病気になる前段階の状態を示す。県は昨年1月に「未病を治すかながわ宣言」を発表し、食や運動、社会参加などで県民の健康をより良い状態にしていく方針を打ち出した。「未病」が英訳できないため、アルファベットで「ME-BYO」と表記。未病関連産業のブランド化を想定し、商標登録も取得した。

【神奈川新聞】


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