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南スーダン情勢を憂慮 国際的NGO代表「現地は紛争状態」

時代の正体 神奈川新聞  2016年12月14日 17:20

PKO施設へ向かう陸上自衛隊の車両=2016年12月12日、南スーダン・ジュバ(共同)
PKO施設へ向かう陸上自衛隊の車両=2016年12月12日、南スーダン・ジュバ(共同)

 混迷の南スーダン情勢を巡り国際的NGOの関係者や専門家が、自衛隊派遣継続の危険性を相次ぎ指摘している。安全保障関連法制に基づき新たな武器使用任務が付与された陸上自衛隊の南スーダンPKO派遣。現地は既に紛争状態とする見方もあり、自衛隊と憲法9条、日本の国際貢献のあり方が問われている。


 日も暮れた東京・永田町、衆議院議員会館前。国際的な人道支援に取り組む「日本国際ボランティアセンター(JVC)」の代表、谷山博史さんがマイクを握っていた。10月19日、南スーダンへの自衛隊派遣継続や新任務付与に抗議するため約6千人が集まっていた。


「日本国際ボランティアセンター(JVC)」の代表、谷山博史さん=2016年10月19日
「日本国際ボランティアセンター(JVC)」の代表、谷山博史さん=2016年10月19日

 「政府は戦闘を『発砲事案』とし、また、現地の武装勢力を決して『紛争当事者』と認めない。それなぜか。紛争当事者とすると、駆け付け警護や共同宿営地防衛として自衛隊が武器を使用した場合、憲法9条で禁止されている『武力の行使』に当たり、憲法違反になってしまうからだ」。断固たる口調で強調した。

 JVCは、8月1日に南スーダンの首都ジュバにスタッフを送り、避難民支援を始めていた。

 谷山さんによると、現地状況は7月8日にまず大統領官邸の近くで武力衝突が起き、瞬く間に市内各地に拡大したという。

 「紛争の状況はいま軍と軍との衝突を超え、殺りくへと事態は発展している。これはまさに『紛争』ではないのか」

 谷山さんは取材に、南スーダンを巡る問題は大きく分けて三つのポイントがあると説明する。
 一つ目は現地の状況だ。
 「紛争当事者は政府軍と反政府勢力。かつて和平合意が結ばれていた双方だが、この合意は既に瓦解(がかい)している。『政府軍』というが政府自体の瓦解しているという指摘もある。こうした状況の中へ自衛隊を派遣しているわけですから巻き込まれる可能性はある。日本が紛争当事者になりかねない」


「日本国際ボランティアセンター(JVC)」の代表、谷山博史さん
「日本国際ボランティアセンター(JVC)」の代表、谷山博史さん

 二つ目は安保法に基づき付与された新たな武器使用任務である「駆け付け警護」の問題だ。

 「紛争状況の中に入り込む。混乱を鎮圧することになる。だが、相手が(略奪などをしている)政府軍だった場合には大変なことになる。憲法が禁止する『交戦』になってしまうからだ。極めて危険な状況で、その後は自衛隊だけでなく、市民やNGOも標的にされていく可能性がある」

 散発的に武器が使用されている混乱の中で、PKO部隊に駆け付け警護の要請があった場合、相手が政府軍なのかどうか、自衛隊は的確に判断できるのだろうか。
 最後は、現実に起きている状況だ。
 「現場では、PKO部隊に対する反発も広がっている。政府軍はPKO部隊が反政府軍をかくまったり、肩入れしていると考えたりしている。市民も政府軍に対し『役に立たない』考えるなど、全くいい状況にない。そのPKO部隊の中に自衛隊が入っていけば、これまで積み重ねてきた『日本の自衛隊への信頼』が損なわれる可能性は高い」


南スーダン情勢について「既に紛争状態」と指摘する「日本国際ボランティアセンター(JVC)」代表の谷山博史さん=2016年10月19日
南スーダン情勢について「既に紛争状態」と指摘する「日本国際ボランティアセンター(JVC)」代表の谷山博史さん=2016年10月19日

 ではそうした状況下で日本はどう行動すべきか。

 「日本は欧米とは違ったスタイルで10年以上民生支援を続けてきた。現地では日本に対し一定の好意がある。気を配るべきは、『日本がどう見られるか』だ。日本のイメージは『非武装』。これをどう生かしていくかが、カギになる」

 かつては和平合意もあった南スーダン。谷山さんは、その状況へと戻す努力をすべきだと指摘する。

 一方、現地は一触即発、大規模な内戦へと突入しかねない状況だという。「そうした中で日本は目をつぶるのか。援助や外交的な働きかけのあり方について議論さえない。PKO参加5原則との整合性も検証されぬまま、南スーダンへのPKO派遣を継続し、しかも新任務を付与し続けるとすれば、それは既成事実を次々と拡大させることになる。自衛隊の海外派遣のハードルを下げさせてはいけない」

 たにやま・ひろし JVC代表理事。東京都出身。86年にJVCに参加。カオイダン難民キャンプで技術学校を担当。その後タイ、ラオス、カンボジアでの駐在を経て、94年JVC東京事務所事務局長。02年JVCアフガニスタン現地代表。06年から現職。著書に「NGOの選択」(05年、共著、めこん)、「NGOの時代」(2000年、共著、めこん、「『積極的平和主義』は、紛争地になにをもたらすか?!-NGOからの警鐘-」(2015年、編著、合同出版)など。


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