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どう防ぐ性犯罪 障害者支援の現場で(中)「対策甘さあった」

社会 神奈川新聞  2015年02月19日 11:19

事業所内で発生したわいせつ事件を受けて設置された防犯カメラ=横浜市内
事業所内で発生したわいせつ事件を受けて設置された防犯カメラ=横浜市内

普通の人-。

放課後の障害児を預かる横浜市内の「放課後等デイサービス」事業所を運営するNPO法人代表の男性(67)が、元職員の男(42)に抱いた第一印象だ。だが採用からわずか3カ月後、利用者の知的障害児にわいせつな行為を繰り返していたことが判明する。

男は2013年10月、「子どもの福祉の仕事がしたい」と語り、職員募集に応募してきた。履歴書には、2カ所の障害児施設での勤務歴が書かれていた。代表が1人で1時間にわたって面談。きちんと目を見て話すことができ、実際に福祉の知識もあった。すぐに採用が決まった。

しかし働き始めると間もなく、「問題行動」を見せるようになった。代表によると、男は利用者の障害児と接する際、女児ばかりを選んで近づいていた。周囲の職員の目にも留まるようになった。不適切な行為に至らないよう、採用から2カ月後、男を子どもと接することが少ない事務職に配置換えした。

「事務の仕事をやりに来たわけではない」。普段はおとなしい男だったが、配置換えに強く反発した。「女の子ばかりに近づくと、不審者に思われるよ」。そう諭してもなお、男は不満を残した様子だったという。

事件は、この配置転換から約1カ月後、女児の1人の訴えで発覚した。一審判決によると、男の犯行期間は、勤務期間とほぼ重なっていた。周囲が問題行動に気付いた時には既に女児が被害に遭っており、配置換え後も繰り返されていたことになる。

どうすれば、男のような職員を避けることができるのか。

代表によると、事業所は問題行動に気付き、男の解雇も検討した。だが相談した社会保険労務士は、当時の契約内容では「女児ばかりに近づくことだけを理由とした解雇は難しい」と回答。このため、配置転換で対応したという。

今回の事件を受け、事業所は契約書を修正。事業所側が不適切と判断した場合に解雇できるとの一文を加えた。

また、採用時の確認も強化。過去にわいせつなどを理由に退職したことがないか、宣誓欄を設けた。今回の事件発覚後、以前勤めていた施設でも、男が禁止されていたトイレでの異性介助を行うなど問題行動を起こし、退職していたことが分かったからだ。

さらに施設内に防犯カメラを設置。管理職を増やして情報を共有する仕組みもつくった。「一つの対策で完全に防ぐのは難しい。いくつもの対策を組み合わせることで、利用者の被害を防ぎたい」。代表は力を込める。

放課後等デイサービスは、12年4月に創設された新しいサービス。需要の高さもあって、このNPO法人は13年秋に新規参入した。職員には未経験者もおり、利用者増で職員不足にも直面していた。男が応募してきたのは、そんなころだった。障害児施設での勤務経験を信頼し、男の採用を決めたという。

代表自身、障害者の在宅介護やグループホームなどに35年携わってきた。障害児支援のノウハウはあるつもりだった。だが-。

「職員に問題行動を起こさせない対策に、甘さがあった。被害者の方は地獄と思う。責任を感じている」。代表は謝罪を繰り返し、こう続けた。

「人の良いところを見抜くのが福祉の仕事。しかし今回の事件で、(犯罪行為が起きる)かもしれないという目を持たなければいけないと、痛感している」

施設での虐待 声上げにくく 障害者虐待防止法に基づく県の集計によると、2013年度に県内で家族や福祉施設の職員らによる虐待が認められたのは153件に上る。このうち、施設職員による虐待は29件。だが障害者を支援する事業所の関係者は「公表された数字は氷山の一角だ」と指摘する。

類型別では、性的虐待は12件だった。ほかには身体的虐待が96件、暴言や差別的な言動など心理的な虐待は60件などとなっている。

障害の種類別(重複計上)では、知的障害が82人、精神障害が58人、身体障害が24人、発達障害が5人、その他の心身の機能障害が2人だった。担当者によると、知的障害者は周囲と十分なコミュニケーションを取るのが難しいことに加え、福祉サービスを利用する機会が多いことなどが背景にあるとみられる。

障害者への虐待は、事実確認が難しいのが実情だ。中でも、施設職員らが加害者とされる場合、実際に虐待と認定されたのは、通報・届け出数の1割未満にとどまっている。

県によると、通報には内容が具体的でなかったり、発生から時間がたっていたりするものもあり、担当者は「調査をしても、事実確認が難しいケースはある」と打ち明ける。通報者が施設内での立場を守るために、通報を取り下げることもあるという。

だが、県内で障害児の支援に当たる事業所の関係者は「『預かってもらっている』という負い目から、サービス利用者は声を上げにくい」と指摘。「公表されているのは氷山の一角だろう」と話し、利用者側が訴え出やすい環境整備の必要性を強調している。

◆県内の障害者施設で発覚した近年のわいせつ事件 厚木市内の福祉施設で2013年、利用者の知的障害のある少女が、生活の介助などを担当していた臨時職員からわいせつな行為を受けていたことが発覚。12年には横浜市旭区の入所施設で職員が入所女性に性的関係を迫ったと施設側が公表。綾瀬市内の知的障害者施設では09年、利用者の女性が非常勤職員2人から体を触られるなどの被害に遭っていたことが分かった。

【神奈川新聞】


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