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イージス艦追加配備 「特需」に沸く横須賀

社会 神奈川新聞  2015年02月14日 11:00

活況を呈す週末のどぶ板通り。往来にはパトロール中の米兵の姿も=横須賀市本町
活況を呈す週末のどぶ板通り。往来にはパトロール中の米兵の姿も=横須賀市本町

米海軍横須賀基地(横須賀市)に今夏、2隻の米イージス艦が新たに配備される。2017年夏までにさらに1隻追加され、計3隻の乗組員だけで約千人増える見込みだ。早くも住宅や新たな雇用創出などによる地元経済への波及を歓迎する声が上がる。基地依存への不安をもかき消す、さながら“特需”のような雰囲気だ。

■賃料2~4割高

「これから(米軍関係者向けの)賃貸物件は多くなると予想しています」。市内を中心に13カ所の営業店を持つ不動産会社ウスイホーム・ベース店の賃貸副統括、笹川千世さんは言う。

米軍基地内には赴任してきた兵士らを対象に、住居をあっせんする在日米海軍横須賀基地司令部住宅部検査課(ベース住宅課)がある。各部隊上司の許可を得て、土足厳禁やごみの出し方など日本のしきたりを学ぶ講習を受講すれば、基地外の賃貸物件(ベース契約)を探すことができる。笹川さんのような不動産業者が仲介し、同課の査定を経た物件が登録される。

マンションや一戸建てを貸し出す日本人オーナーにとって、メリットは賃料だ。急な解約を認めるなど米軍人向けは契約が特殊となるため、日本人向けと比べて2~4割高めに設定される。軍人に支給される賃料は最も低い階級でも独身で月18万円。大佐クラスなら家族連れで28万円となっている。これらは日本政府が拠出する、いわゆる思いやり予算で賄われている。

イージス艦の追加配備が決まって以降、オーナー希望者からウスイホームへの問い合わせは増え始めたという。ファミリー向けの新築一戸建てを整備して、貸し出したいと持ち掛ける人もいる。

さらに、米軍が居住者(米軍人)を保証する形で事実上の米軍住宅を民間業者に建設させる賃貸住宅提携プログラム(RPP)に基づき、昨年から今年にかけて、ベッドや冷蔵庫など家財道具を備えた中高層マンションが複数棟建設された。

笹川さんは「ベース契約を投資と考えるオーナーもいる。こちらとしては物件が増えれば、お客さんにいろんな選択肢を紹介できるので歓迎です」。

■雇用増の動きも

「1隻につき、100人くらい増えるのでは」

全駐留軍労働組合(全駐労)横須賀支部執行委員長の乙川寛喜さんは「船が増える分に問題はない。むしろ減る方が困る」と明言する。見込んだ数字は、基地の艦船修理部(SRF)の日本人従業員の雇用数。つまり、計3隻で約300人増えるとみている。

現在、SRFでは約2千人が艦船、船舶の修理、保守などに携わる。うち約1800人が日本人技術者だ。通常は年1回、技能訓練生を募集する。採用者は4年間の訓練を経て、板金工や溶接工など細かく定められた技能工になる。

募集の事務手続きなどを請け負う独立行政法人「駐留軍等労働者労務管理機構」(東京・港区)の横須賀支部は昨年は6月と12月にSRFの募集を実施。募集人数は6月の21人に対し、12月は62人に跳ね上がり、イージス艦配備を見越した対応とみられる。

増隻すれば、艦船の定期点検やメンテナンスの受注も増える。乙川さんは「SRFだけでなく、約5千人の日本人が働く基地内の雇用も少なからず増えるだろう」と推測する。さらに、艦船内で毎日消費される食料品は日本業者が供給しているため、そうした周辺業者への経済波及効果も当然あるという。

日米の艦船を遊覧船から見学するYOKOSUKA軍港めぐりやネイビーバーガー、スカジャン…。軍港都市で商いをする観光、飲食、小売業者らにとって、基地の存在は生活の糧でもある。

基地前にある「どぶ板通り」の本町商店会会長、越川昌光さんは「われわれの町は基地と切り離すことはできない」と言う。同商店会は3月に「ドブ板通り商店街振興組合」に名前を変えて法人化し、これまで以上にアメリカ文化が漂う「どぶ板」を市内外にアピールしていく。「新しい船が来るのでうまく利用したい。最近は米軍関係者の消費も停滞しているので、起爆剤になってほしい」と期待する。

ただ、安全面で懸念も抱く。「(米兵が)また問題を起こせば、こちらの営業も厳しくなる」。基地へ来る赴任者全員に実施されている日本文化などを学ぶ教育の徹底も求めている。

■苦言から理解へ

イージス艦追加配備が昨年10月と今年1月とさみだれ式に発表された際、吉田雄人市長は「明らかにおかしい。全体像を速やかに示してほしい」と苦言を呈した。その後、防衛省から追加配備で乗組員が約千人増となる見通しなどが示されると理解を表明。「工事などの発注は、できるだけ地元の企業が仕事を取れるようにしていきたい。米軍人や家族は消費者でもある」と、雇用や地場経済への広がりを口にした。

基地を抱える自治体にとって兵力増強は、経済的恩恵と依存が表裏一体だ。吉田市長は5日の会見で「依存という言葉を使うより、波及効果を期待したいし、(観光事業などを)しっかり地元に根付かせていく必要性を感じている」と述べた。

これを受け、市民団体「原子力空母の横須賀母港問題を考える市民の会」共同代表の呉東正彦弁護士は絶句した。「横須賀は平和産業都市。旧軍港市転換法(軍転法)で基地を縮小し、平和利用していくという原則がある。国に従属する発言で、自治体の長として決して言ってはならないことだ」

米海軍は昨年10月、2017年夏までにイージス艦2隻を追加配備すると発表した。さらに1月、もう1隻の追加を決めた。これにより、横須賀港を母港とする艦船は過去最多の14隻に増える。米海軍によると、弾道ミサイル防衛(BMD)能力を持つイージス艦2隻は8月と17年7月に、防空や対潜水戦などのシステム機能を持つイージス艦1隻は今夏までに配備する。米海軍は緊張感を増す東アジアの安全保障環境を踏まえ、「最新鋭で最も有能な部隊をアジア太平洋へ送る長期計画の一環」と説明している。

【神奈川新聞】


米海軍横須賀基地前の不動産会社では、米軍人向けのベース契約物件を扱っている
米海軍横須賀基地前の不動産会社では、米軍人向けのベース契約物件を扱っている

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