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【社説】PC遠隔操作判決 取り調べ全面可視化を

社会 神奈川新聞  2015年02月14日 10:07

他人のパソコン(PC)を遠隔操作してインターネット上で横浜市の小学校襲撃などを次々と予告した事件で、東京地裁は被告の男に懲役8年の有罪判決を言い渡した。

判決が「悪質なサイバー犯罪」と指摘した通り、国家権力への恨みから捜査機関を出し抜こうという動機や、襲撃を予告された小学校が授業参観を中止するなどの実害が出ていることを考慮すれば、悪質さは際立つ。懲役8年の量刑は妥当だろう。

だが事件は、個人の特異な犯行として被告に責任を負わせるだけでは済まされない大きな課題を、捜査・司法当局に突き付けた。県警が小学校襲撃予告事件で元少年=当時(19)=を誤って逮捕するなど、4人もの無実の人が誤認逮捕されたことだ。

元少年は当初、容疑を否認していたが、その後犯行を「自供」した。県警は誤認逮捕の原因として、不十分な裏付け捜査や捜査員の知識不足などを挙げた一方で、供述の誘導や自白の強要はなかったと結論付けた。ではなぜ、無実の元少年が犯行を認めたのか。県警の検証結果は不十分だと、あらためて指摘したい。

被告が最初に犯行に及んだのは、横浜の小学校襲撃予告事件だった。県警が適切に捜査していれば、その他の事件は起きず、誤認逮捕もなかったといえる。その意味でも県警の結果責任は重大だろう。

保護処分が取り消された元少年の父親は判決後、捜査・司法当局を厳しく批判しながらも、「早く忘れたい」と吐露した。元少年も家族も、負わされた深い傷が癒えていないことを物語っている。県警が事件を忘れることは許されない。いま一度、この事件に真摯(しんし)に向き合い、再発防止を期してほしい。

さらに、県警の疎明資料を安易に認め、元少年の逮捕状を発付した横浜地裁、県警の捜査をチェックせず元少年を家裁に送致した横浜地検、送致された非行内容に基づき保護観察処分とした家裁にも、それぞれ猛省を促したい。

IT機器の普及と高度化を背景に成り済ましの手口が巧妙化している中で、捜査能力の向上とともに求められるのが、取り調べの録音・録画(可視化)の拡大だ。

今国会に提出される見通しの関連法案では、遠隔操作事件は可視化の対象にならない。適正な捜査を行い冤罪(えんざい)を生まないためにも全面導入を進めるべきだろう。

【神奈川新聞】


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