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結成25周年を迎えたLUNA SEAのギタリスト〈6〉
SUGIZO「狂気」

カルチャー 神奈川新聞  2015年02月06日 10:05

LUNA SEAのギタリストでバイオリニストのSUGIZO(右)と、ボーカルのRYUICHI=愛知・名古屋センチュリーホール(2014年、8月)
LUNA SEAのギタリストでバイオリニストのSUGIZO(右)と、ボーカルのRYUICHI=愛知・名古屋センチュリーホール(2014年、8月)

 2014年5月29日に結成25年を迎えたLUNA SEAは現在、14年ぶりのホールツアーのため全国を横断中だ。12月23日には、地元・横浜アリーナ(横浜市港北区)で14年5カ月ぶりにコンサートを開き、1万5000人のファンとともに、年内最後の花火を打ち上げた。県内では2月7・8日に「神奈川県民ホール」(横浜市中区)でステージを行う。ツアーはインディーズ時代、初めて県外でライブをしたバンドにとっての第2の故郷・大阪にある大阪城ホール(大阪市中央区)で3月14日に締めくくられる。

 LUNA SEAは過去、台風で公演が遅延・延期をしたり、結成10周年のライブでは野外に設置していた機材などが突風で倒壊するなど“嵐を呼ぶバンド”と言われてきた。ツアー7カ所目、愛知・名古屋センチュリーホール(8月9・10日)も台風11号を伴い、約18年ぶりの再来だった。近隣の三重は県が初の大雨特別警報を発令するほどの豪雨。会場に向かう路上の隅には、風にあおられ壊れた傘がいくつも転がっていた。

 10日午前11時。メンバーの姿はまだない。窓をたたく雨が木や空の色をにじませる。止むことはないと思っていた雨が弱まった正午前、「おはよう」とスタッフに声を掛けながら、黒いアロハシャツ、黒い麦わら帽姿のSUGIZOが会場に入ってきた。“スーパー晴れ男”の登場に、台風も退散したのだろうか。

 SUGIZOは身体をいたわるため、酸素カプセルに入ってきたと言う。「第六感が磨かれた」と話し、手にしたバイオリン。そっと左ほほを寄せると、「さて、行きますか」という感じで音を奏で始めた。右手に持った弓を細かに揺らす。その音でほかの楽器を目覚めさせているようだ。確認を終えると、特製スムージーを手に打ち合わせへ。予定していた曲に4カ所、変更があった。午後1時過ぎ、5人がステージにそろう。

 全体の音合わせは「Glowing」から、「FALL OUT」への流れを確認するところから始まった。舞台のはじっこでスタッフと談笑していたベースのJ、じっとうずくまっていたギターのINORANが、それぞれのポジションに立ち、客席に目をやる。5人が集中を高め、曲に向かっていく。5方向に散っていた光が、ひとつの太い筋になる。そのまばゆさに戸惑った。

 SUGIZOがバイオリン、INORANがアコースティックギターを持ち即興で音を生み出す場面では、生まれた演奏音をその場で録音。そこにまた新たな演奏を重ねていく手法を取り、波紋のように音を広げていく。INORANはギターの音に、ギターのボディをたたく音を重ね、SUGIZOはきりきりと絞るような切ない音を響かせている。同じものは2度とない。緊張感ある舞台を前に、鼓動が速くなる。

 午後4時の開演に向け、楽屋に戻った5人は、メークや着替えなど準備を進めていく。開演10分前。手首、足首をテーピングでぐるぐる巻いたSUGIZOが、「お相撲さんみたいでしょう」と話しながら階段を上がってきた。痛そうに引きずる右のかかとに視線を向けると、鮮血がふき出していた。聞くと「昨夜、はさんだ……」と忌々しげにドアをにらみつけた。横ではドラムの真矢が「眠くなってきちゃった」とぽつり。高校2年生の夏、「オレたちだったらプロになれる」と息巻いていたふたりは、意気消沈した様子。真矢はまだ会場入りしたときのTシャツ姿のままだ。

 迫る開演時刻。INORANが「名古屋、最後だね」を誰に告げるでもなくつぶやいた。SUGIZOはパンツの裾が気になると縫ってもらっている。衣装に着替えた真矢が、差し入れをほおばりながら、「あ、ブラジャーし忘れた」とボケる。すかさず、RYUICHIが「さらしでしょう」と突っ込んだ。秒単位で進んでいた時間が、ほぐれた。笑顔の中、互いの肩を抱き円陣を組む。RYUICHIが「今日もみんなによろこんでもらえるように。気合いを入れて行くぞ!」と叫ぶ。SUGIZOを先頭に、歓声の中へ進む5人。見送るスタッフの背中が、一瞬だけ安堵したように見えた。

 「5つの矢はそれぞれの活動をすることで磨かれ、太くなって、再び時間が重なったときには、想像を超えるものになっている」。個々の活動をしていた2009年のRYUICHIの言葉だ。強烈な光を放つ個。瞬きをするのも惜しい迫力。火花が散るステージをより印象的にするのが、この道約36年の湯浅康正さんだ。「SUGIZOが頭の中に浮かべたイメージを再生するのが僕の仕事。ハイエース(トヨタのワゴン車)を運転して、全国を回っていた初期からSUGIZOの視覚効果に対するこだわりはすごくてね、こちらもそれを体現するんだと職人魂をかき立てられる。SUGIZOとの仕事は、僕の起点になっているんですよ」と誇らしそうに語る。

 赤、青、緑、紫。音によって生じた感情にぴたりと沿うように、色を印象付けたり、混ぜ合わせたり。ドラムのキック音に合わせ、ライトを点滅させる。色を奪った演出では、人影を際立たせ孤独感をあおった。SUGIZOは「曲を作っているときに見える、感じる色があるんです。湯浅さんの色を身体に受けているときは、(湯浅さんが)一緒に演奏しているように感じるんです」と、光のスペシャリストをたたえた。

第6回 -狂気-



 大秦野高校のINORANとJが1986年に友人らとともに結成したLUNACYに、伊勢原高校のSUGIZO、真矢、そして高校を辞めプロのミュージシャンを志していたRAYLA(後のRYUICHI)が加わり、1989年5月29日に現在のLUNA SEAが誕生した。SUGIZOと真矢が組んでいたPINOCCHIOにはなかった陰湿さが、SUGIZOの根にあった回路を刺激した。拠点としたライブハウス「町田プレイハウス」では、ZI:KILLやJOLLY PICKLESと肩を並べた。10代後半から、20代前半を過ごした同地は、「修行の場だった」と振り返る。

 RAYLAが加入する前は、暗中模索の時期もあった。しかしRAYLAの声が、SUGIZOが16歳のとき決めた覚悟に、輪郭を持たせた。原点に戻っていく中で生まれたのが、初期の代表曲「NIGHTMARE」だ。耽美な世界へ。身体にまとわりつくように沈む音が、攻撃的な見た目をさらに異質なものにした。

 小学時代から溜め込んでいたうっぷん。決めつけられ、自分を出せずにいた中学時代はみじめな時間だった。ギターを通し身に付けた自己表現。“狂気”の名を持つLUNACYの中で、SUGIZOは少しずつ呼吸を取り戻していく。自分が信じる音楽を追求しよう。できた枠の中にねじ込もうと決めつけたり、否定をする大人たちには牙をむいた。何にも染まらない、染められたくない。闇に身を隠すように、黒い衣装をまとった。表情がよりおどろしくなるようメークをし、声を遠ざけた。

 「話しをしていて、いま気が付いたことがありました。あのときの自分は、LUNACYの存在を隠れ蓑にして、『オレは強いんだぞ』と誇示したかったのだと思います。『馬鹿にされてたまるか』という気持ちが、威嚇するような態度に繋がったのでしょうね」。

 怒りは音を生む力になった。組み立てていく一方で、めちゃくちゃに破壊し続けた。研ぎ澄まされていく感性。「NIGHTMARE」を筆頭に、「MOON」など壮大な曲が次々に産声を上げていった。CD化されていない「NIGHTMARE」はまぼろしの作品でもある。2010年のクリスマス、5万人を無料招待した、黒服限定GIGで久々に解いた封印。曲と向き合いながら、もがいていた昔の自分と対話をした。「ここが曲が求めていた場所だったのかと感じたんです。そしておこがましいかもしれないけれど、時空をこえる曲を書いてきたなって」。

 20代のときと変わらない熱を持つことができていること。そして20代のときには持っていなかった経験値があるいま、必要だと思うものをよりとがらせることができることは幸せなこととかみしめる。ロックは時をこえると、全国で展開しているステージで体感している。

 東京・町田でわずか30人から始まった5人の旅。80年代終盤から90年前半にかけ起きたバンドブームの影響もあり、徐々に慌ただしくなっていく。深夜に放送されていたオーディション番組などの影響もあり、91年には500組を超えるバンドがプロの扉を開いたが、演奏技術が乏しくても、デビューできてしまう風潮に疑問を持っていた。自分たちはそうなるまいと、周囲を冷静に見つめ足場を固めていった。

 ライブ会場で配るチラシ、ロゴのデザインも自分たちで考案し、オリジナリティを高めていった。頑なな姿勢が話題を集め、若手バンドを探していたX(現X JAPAN)のHIDEが、目黒鹿鳴館(東京都目黒区)のライブを訪問。その夜は、目黒で飲み明かしたのだと言う。HIDEとの出会いは活動の幅を広げる推進力となった。

 91年にYOSHIKIが主催していたExtasy Recordsから発売した唯一のインディーズアルバム「LUNA SEA」は予約だけで1万枚が完売した。噂を聞きつけたレコード会社、事務所がメジャーへと声をかけるが、SUGIZOたちは首を横に振り続けた--。


LUNA SEAのギタリストでバイオリニストのSUGIZO=愛知・名古屋センチュリーホール(2014年、8月)
LUNA SEAのギタリストでバイオリニストのSUGIZO=愛知・名古屋センチュリーホール(2014年、8月)

LUNA SEAのギタリストでバイオリニストのSUGIZO(右)、ドラマーの真矢=愛知・名古屋センチュリーホール(2014年、8月)
LUNA SEAのギタリストでバイオリニストのSUGIZO(右)、ドラマーの真矢=愛知・名古屋センチュリーホール(2014年、8月)

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