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【社説】県立近美鎌倉館 保存へ知恵を絞りたい

カルチャー 神奈川新聞  2015年02月01日 12:00

来年閉館する県立近代美術館鎌倉館(鎌倉市雪ノ下)の建物の存続をめぐり、県教育委員会が今後の扱いを検討するために実施した建物の調査結果を公表した。耐震補強の可否が焦点だったが、文化財保護法で国の史跡に指定されている鶴岡八幡宮境内の地下遺構を損なわずに「工事実施が可能」という結果が出た。

建物の保存・活用に向け、ハードルを一つ乗り越えたことになる。保存を望んでいる人たちにとっては朗報に違いない。

県と鶴岡八幡宮との借地契約では2016年3月末に更地にして返還することになっている。県は調査結果を踏まえ、建物を補強して鶴岡八幡宮に引き継げないか、保存・活用の可能性を協議していく。両者の話し合いを期待して見守りたい。

60年以上前に完成した鎌倉館の保存・活用には耐震補強が欠かせない。調査を受託した業者の提案によれば、壁や天井の補強材の追加・交換などを行えば、深く掘削する必要がなく、境内に埋まる中世の遺構を傷つけることもないという。

工事の概算費用は「約2億1千万円」とした。契約通り建物を解体し更地にする際に掛かる費用を考えれば、決して巨額とは言えず、保存に向けた好材料と言える。

ただ、工事費用を誰が負担できるかは次の焦点だ。県も鶴岡八幡宮も実際に負担するとなれば、相応の理由付けが必要となる。自治体が宗教法人に公金を支出する行為は憲法で禁じられ、宗教法人も自らの宗教活動以外に使う施設に浄財を充てるのは難しい面もあるからだ。

同館は、世界的な建築家ル・コルビュジエに師事した故坂倉準三が設計し、1951年に日本初の公立近代美術館として開館した。国際機関DOCOMOMO(ドコモモ)日本支部の日本近代建築20選に選ばれ、日本建築学会、日本建築家協会やドコモモ、鎌倉市民などが保存活用を県に要望してきた。

県と鶴岡八幡宮はこれまで、こうした保存を求める声に応えてきた。更地にするなら必要ない今回の建物調査費約1322万円(執行額)を折半したのもその表れだろう。

だが今後の協議が物別れに終われば、契約通り更地にして返還する決着もあり得る。建物を後世に残すために知恵を絞り、一致点を見いだしてほしい。保存を求める県民の声の広がりもさらに重要となりそうだ。

【神奈川新聞】


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