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木造校舎撮り続け千校 自分だけの旅へ 横須賀・角皆さん

カルチャー 神奈川新聞  2015年02月01日 12:00

小学6年から始め、千校の木造校舎を写真に収めた角皆さん
小学6年から始め、千校の木造校舎を写真に収めた角皆さん

木造校舎の魅力に取りつかれ、撮影で全国各地を巡る木造校舎写真家の角皆(つのがい)尚宏さん(24)=横須賀市馬堀海岸=の撮りためた写真が、10年余りを経て千校に達した。その直前、不登校に苦しんだ小学生時代に趣味を始めるきっかけをくれた父の慶次さん(享年65)が、喜びを分かち合うことなく他界した。「これからは自分だけの旅が始まる」。角皆さんは父の思いも胸に歩きだしている。

神社や寺院、古民家なども木材を使っているが、何しろ「校舎」でなければ角皆さんにとっては意味を成さない。

5歳のころ、ビデオで映画「学校の怪談」を見て、舞台となった木造校舎に心を奪われた。「ギシギシ鳴る階段やガタガタと鳴る木枠の窓だとか、古い木造校舎の醸す世界観に引き込まれた」と振り返る。

夏休みの自由研究で木造校舎を題材に選んだ小学6年のとき、慶次さんに連れられ群馬県内の木造校舎を訪れた。以来、現在に至るまで全国を父と一緒に駆け巡り、カメラに収めていった。各都道府県の教育委員会に問い合わせ、校舎の所在を確認。写真に撮るたびに「木造校舎46都道府県大調査帳」に記録していった。

角皆さんは小学4年のとき、いじめをきっかけに不登校となり、中学校では引きこもりも経験。父は何とか外へ連れ出そうと息子の趣味にとことん付き合い、二人三脚の旅が始まった。

「木造校舎がなければ、今の自分はいない」。角皆さんの趣味はいつしかライフワークに変わった。「自分は働いてもいないし、学校も行っていないけれど『日本の貴重な文化を調べて追い掛けているんだ』ということを身上に、毎日生きてきた」

千校の中には、東日本大震災で被害を受ける前の木造校舎もある。2012年3月には、それらを集めた「失われた情景」と題した写真展を開催。地元横須賀や横浜市、都内でも写真展を開くなど活動の幅を広げている。

現存する木造校舎は年々、姿を消している。明治時代初期の校舎は和と洋の建築様式が混在したアンバランスさが魅力で、大正時代はデザインが洗練されているのが特徴という。ただ、その歴史的、文化的価値があまり注目されず、次々と壊されていく。「耐震性や時代の流れで壊されていくのは分かる。でも、言葉で言い表せない、かけがえのないものだってある」と訴える。

千校まであと1校に迫った1月5日、慶次さんはなんの前触れもなく大動脈解離で65年の生涯を終えた。九州の一部地域は訪れておらず、父と約束した全国制覇の夢はまだ完結していない。

「父には、一生をかけても感謝しきれないほどの恩を感じている。千校目からは自分の旅。そこから本当の自信が出てくると思う」。

【神奈川新聞】


家族で訪れた北海道の木造校舎。中央が慶次さん=2006年
家族で訪れた北海道の木造校舎。中央が慶次さん=2006年

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