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障害者の春を泣かすな 特別支援学校で卒業前のアセス実施 横浜の関係者に懸念強く

社会 神奈川新聞  2015年01月29日 11:23

特別支援学校高等部卒業生の春を泣かすことにならないか…。関係者から不安の声も上がる。写真は横浜市内の特別支援学校
特別支援学校高等部卒業生の春を泣かすことにならないか…。関係者から不安の声も上がる。写真は横浜市内の特別支援学校

特別支援学校卒業生の春を泣かすことになるのではないか…。横浜市内の福祉関係者から不安の声が上がっている。厚生労働省は2015年度から、特別支援学校高等部3年生が卒業後に就労継続支援B型事業所を利用する場合、在校中に就労移行支援事業所でアセスメントを受ける必要があるとした。生徒数が多い同市では生徒の障害特性に合った事業所が見つかるのか懸念が強い。関係者はアセスへの疑問、不安を抱きながら準備を急いでいる。

障害者の福祉的就労の中心を担っている非雇用型の就労継続支援B型事業所は、一般企業や雇用型のA型事業所で就労を継続できなかった人、就労移行支援事業所でB型が適当と判断された人らが利用する。特別支援学校高等部卒業生の場合は、在校中に就労移行支援事業所でアセスを受けることが厚労省から求められていた。アセスは最低3日間、2カ月以内の範囲で作業実習などを行うとしている。

ただ、アセスには就労移行支援事業所の整備や学校、事業所、市町村の連携が欠かせない。厚労省も実施を猶予する経過措置を続け、自治体からも「特別支援学校在学中の進路指導や実習の過程などでB型の利用が適当と判断できる場合も多くあり、一律に就労移行支援の利用を義務付けることは本人や保護者にとって大きな負担になる」(東京都)といった強い異論も出ていた。

しかし、厚労省は13年4月に経過措置を14年度末で終了するとの通知を行い、現在のところ、通知に変更はないとしている。

■不安視 厚労省が経過措置を再延長する可能性も考えられたことや情報不足などもあり、対応が遅れた自治体も出た。関係者の不安が表面化したのが横浜市だ。

県内の特別支援学校高等部(46校)の15年度の3年生(現2年生)は約1440人だが、半数の約720人が横浜市内在住。13年度の3年生を見ると、同市内在住約670人のうち約80人がB型事業所の利用者になった。

市内の県立特別支援学校の進路指導担当教諭は「B型利用希望者のほか、一般企業への就労、A型利用を希望する生徒も、希望がかなわなかった場合にB型を利用する可能性があり、アセスメントが必要。かなりの数の生徒がアセスメントを受けなければならない」と話す。

一方、市内の就労移行支援事業所は35事業所。事業所で作業内容が異なるほか、南、旭区には事業所がないなど所在地の偏りもある。支給決定など実務担当は区になる。

ある事業所の職員は「精神障害者へのパソコン指導が中心で、知的障害への対応は難しいという事業所もある。また、定員をオーバーして受け入れるとペナルティーがあるので、空きがないと受け入れられない」と語る。空きができるかは利用者の状況次第のため、予測は難しいという。

このため、知的、肢体、視覚など生徒の障害特性を基に、定員の空きに合わせて事業所とスケジュールを組むのは難航も考えられる。市内の特別支援学校高等部は県立8校、市立11校、国立1校、私立2校の計22校。県立の分教室も入れると30校にもなる。市外の学校に通学している生徒もおり、学校間の調整も複雑だ。

進路担当教諭は「調整のための明確な仕組みも決まっておらず、情報も入ってこない。きちんとスケジュールを作れるのか不安だ。本当にできるのか、保護者からも不安の声が出ている」と現状を語る。

■未知数 今後の対応について市障害支援課は「区ごとに学校との連携を図り、生徒一人一人の受け入れ先を探し、対応を決めていくことになる。卒業と同時にスムーズに進路が決まるようしたい」と述べ、関係機関の連携、体制づくりを急ぐとしている。市教委特別支援教育課も「一番の課題はスケジュール。関係機関と連携して情報共有を進め、先生、保護者が混乱しないようにしたい」と厳しい表情だ。

市は26日、市内の就労移行支援事業所に対する説明会を行った。出席した事業所の担当者は「マッチングがうまくいくのか疑問がある。全く未知数だ」と述べ、アセスの必要性への疑問や、市の準備態勢への不安を語った。

施設多く準備進む 藤沢市「情報交換密に」 一定の人口規模、生徒数、事業所数、これまでの福祉施策などを背景に、準備が順調に進んでいる自治体もある。

人口約42万人の藤沢市では、市内在住で2015年度の特別支援学校高等部3年生は約60人。市内の県立、市立の2校のほか、横浜、鎌倉、茅ケ崎市など近隣の学校に通っている。毎年数人が卒業後にB型施設を利用しており、今春の卒業生では3人という。藤沢市は交通の要衝ということで福祉施設が多く、就労移行支援事業所も9カ所ある。

市では毎月1回、市内在住の生徒が通う特別支援学校の進路担当教諭と市ケースワーカーの会議を開いており、実習の調整などを行っていた。市障がい福祉課は13年4月の通知を受け、会議を通じて「できるだけ就労移行支援事業所のアセスメントを受けてからB型を利用するようお願いしてきた」という。このため、すでに13年度から、B型事業所利用を希望する3年生数人が在校中の3月、または卒業後すぐの4月に就労移行支援事業所でアセスを受ける体制になっているという。

同課は「関係者の情報交換を密に行ってきたことと就労移行支援事業所が多くあり、定員に余裕もあることに助けられている。就労移行支援事業所のない市町村もあり、そこでは大変だと思う」と話した。

◆特別支援学校高等部3年生向けのアセスメント 特別支援学校高等部3年生に求められたアセスメントは、進路の一つである就労継続支援B型事業所の利用を厳格化する狙い。生徒の一般就労の可能性を見極め、それが困難と判断された場合にのみB型への進路を認める。障害者への訓練を行う就労移行支援事業所で、最低3日間から基本1カ月、最長2カ月までの実習を行い、作業能力、作業態度、社会性などを観察し評価する。就労継続支援事業所は一般企業などで働くことが困難な障害者に働く場を提供し、必要な訓練を行う施設で、A型(雇用型)は働くことを中心に最低賃金が適用される。B型(非雇用型)は、一般企業やA型での就労が困難だった人の日中の居場所を兼ね合わせた施設で、最低賃金は適用されない。

【神奈川新聞】


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