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横浜・下町の本屋さん閉店 張り紙につづられた感謝の言葉

社会 神奈川新聞  2015年01月27日 06:00

張り紙にメッセージを書き込む子ども=横浜市神奈川区白楽
張り紙にメッセージを書き込む子ども=横浜市神奈川区白楽

「おじさん、ありがとう」-。

横浜市神奈川区白楽の東急東横線の白楽駅前にある書店が16日、営業を終えた。シャッターには男性店主(享年62)の訃報を知らせる張り紙が。そこには、店主の人柄を知る常連客の感謝の言葉が多数つづられていた。「白楽のシンボル」だったという下町の本屋さん。閉店を惜しむ客の足は、店の最後の後片付けが行われた23日も、途絶えることはなかった。

「生まれて初めてここで本を買いました」「家族みんな、お世話になりました」。

白楽駅西口の改札目の前にある「ブックス玉手箱」。訃報の張り紙に驚いた子どもや会社員、お年寄りがペンを取り、思いの丈を書き連ねていく。

「一緒に世間話するのが楽しかった。あまりに寂しくて…」。店の常連だった女性(53)は、多数のメッセージに目を通し、涙ぐんだ。

「玉手箱のように、夢も、本も飛び出す」。そんな明るい意味を込めて店主が1990年に開いた家族経営の店は、25年間近隣住民に親しまれた。

午前9時半に開店。店を閉めるのは午後11時ごろ。開店当初、駅前に深夜営業の店はなかった。女性は「夜遅く帰っても店の明かりだけがついて、ご主人が立っている。その姿を見て、いつもほっとした」。

私立小6年の女子児童(12)も常連の1人。ある日、本を買う際、店主から「よく買いに来てくれてるよね」と声をかけられた。「覚えてくれて嬉しかった。見た目は怖そうだったけど、本当は話しやすかった」。

書店の大型化やネット販売の普及で、経営難になる個人書店が続出。いつしか白楽駅周辺で唯一の書店となった。

店主の妻(61)によると、店の売り上げは年々減っていたが、連日深夜まで店に立ち、客の相談にも気さくに応じていたという店主。しかし今月10日、インフルエンザを発症。肺炎を併発するなどして翌11日、急死した。

葬儀があった16日に妻が店に張り紙を掲示。すると、メッセージを書いた客がSNSで発信、一気に広まり、お悔やみで店を訪れる人が相次いだ。一枚の張り紙では足りないからと、ペンと紙を用意した人もいたという。

書店内の整理が終わった23日、シャッターが下ろされ、張り紙も取り外された。妻は「家では厳格だった夫が、まさかこんなに皆様に思われているとは知らなかった。張り紙は宝物です」。

【神奈川新聞】


張り紙にびっしり添えられた客のメッセージ=横浜市神奈川区白楽
張り紙にびっしり添えられた客のメッセージ=横浜市神奈川区白楽

東横線白楽駅西口の駅前で営業していた「ブックス玉手箱」=横浜市神奈川区白楽
東横線白楽駅西口の駅前で営業していた「ブックス玉手箱」=横浜市神奈川区白楽

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