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【社説】表現者と受け手 風刺の価値を見失うな

カルチャー 神奈川新聞  2015年01月16日 09:59

風刺や揶揄、辛口の冗談といった表現は、生活に潤いや活力を与え、豊かにしている。ある種の毒を含んだ表現を楽しみ、際どいメッセージを寛容に受け入れられるのは懐の深い成熟した社会と言えよう。

しかし今、表現者に有形無形の圧力を加え、窮屈さを感じさせる事案が散見される。それだけに本質を射貫く表現者の責務と、風刺の価値をいま一度、確認したい。

風刺とは、「社会や人物の欠点・罪悪を遠回しに批判すること。また、その批判を嘲笑的に表現すること」と辞書にある。古今東西、あらゆる表現者が統治者らの欺瞞や思い上がりを巧妙に暴き、権威の衣を剥がしてきた。庶民の知恵でもあり、武器でもある。

フランスの週刊紙銃撃事件の首謀者は、社会風刺の担い手に対し、殺人という最悪の形で報いた。同紙には過激で挑発的な表現があった。犯行グループは自ら信じる宗教への冒涜と感じたからこそ、テロ行為に及んだのだろう。

同紙の資質、表現の妥当性は冷静に問われなければならない。だが、暴力や脅迫といった手法で対抗してしまえば、その先に待つのは報復の連鎖や社会の分断であり、問題は解決しない。あくまで文化的な表現で戦い、多くの民衆の理解や共感を勝ち取っていくべきであろう。

フランスの現状はわが国には無縁だろうか。直近で気にかかる事例が相次いだ。年末のNHK紅白歌合戦で、サザンオールスターズのボーカル桑田佳祐さんが歌った「ピースとハイライト」が、インターネット上などで物議を醸した。〈都合のいい大義名分(で争いを仕掛けて〉〈裸の王様〉といった歌詞が、解釈改憲で集団的自衛権の行使容認を決めた安倍政権への批判と映り、一部の人たちが強い不快や嫌悪を表明した。

歌詞自体は抽象化されているが、日本と中国、韓国との関係悪化を改善し、互いの幸せを願おうという力強いメッセージが込められている。部分的な表現に目くじらを立てるのは、やや偏狭ではないだろうか。

一方、同じNHKの番組でお笑いコンビの爆笑問題が、用意した政治家に関するネタを却下されたという。放送局が批判を恐れ、際どい表現を封じるような萎縮があったとすれば残念だ。表現する側も受け止める側も、風刺の本来の価値を見失わず、守っていきたい。

【神奈川新聞】


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