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ショコラボの挑戦:障害者雇用の現場から〈上〉 厳しい現実に直面

経済 神奈川新聞  2015年01月08日 12:00

チョコレートの製造風景を見守る伊藤さん(右から2人目)=横浜市都筑区のショコラボ
チョコレートの製造風景を見守る伊藤さん(右から2人目)=横浜市都筑区のショコラボ

「ショコラボ、エイ、エイ、オー!」

午前9時半、障害者の就労支援を目的としたチョコレート工房「ショコラボ」(横浜市都筑区)。輪になり、手を合わせたスタッフたちの大きなかけ声が響きわたる。毎日恒例の始業の合図だ。

工房の名称には、障害者と健常者のコラボレーションといった意味も込められているが、ここではあくまでも約20人の障害者が「メーンプレーヤー」だ。健常者のスタッフは、アシスタント役と位置づけている。

ある人はチョコレートを溶かし、ある人は製品の箱詰めに専念する…。「一人一人がワンストップで作業をこなすのは難しいが、仕事を切り出し、特性に応じできること、得意とすることをやってもらっています」。運営する一般社団法人「AOH」会長の伊藤紀幸(49)は作業の様子に目を細め、そう話した。

■ □ ■

ショコラボの開設の経緯を語る上で、欠かせないのが、伊藤の長男(19)の存在だ。

長男は三井信託銀行(当時)に勤務していた1995年に誕生した。体重わずか1500グラム。生まれたときは仮死状態で、後に、知的障害があることが判明した。が、仕事は忙しく、育児は妻に任せきり。出勤時も帰宅時も、息子は寝ている日々が続いた。

3歳にもなると自分の意思を言葉で表現しようとするが、伊藤にはその意味するところがほとんど理解できなかった。分かったふりをして適当に相づちを打つも息子には見透かされ、どこか悲しい表情を浮かべた。

一方で、いつも息子のそばにいる妻祥子は100パーセント理解している-。その事実にショックを受けた。「人生にとって、本当に大切なことって何だろう」

それまで会社には息子の障害を隠してきたが、初めて打ち明けるとともに、転居を伴わない異動の希望を出した。銀行員にとってそれは、出世を諦めることを意味していた。

会社側はしかし、伊藤を東京の本店に異動させた。その頃、住んでいた藤沢市の自宅からは十分、通勤可能な距離。本店の営業といえば、栄転だった。

伊藤は会社を「意気に感じ」、ますます仕事に励んだが、子どもとの時間はさらになくなった。当時、34歳。思い切って銀行を辞め、日本格付研究所へ転職した。

■ □ ■

夜8時には帰宅し、週末はどっぷり息子と過ごす幸せな日々に、再び転機が訪れる。

養護学校へ入学後、初の父親参観。伊藤は教員の言葉を一生、忘れない。「お子さんたちは高校卒業後、まず就職はできないでしょう。できたとしても、月給は3千円くらい…」

耳を疑った。障害者は1カ月、頑張って働いても、自分のわずか1時間の残業代ほどしか手にすることができないのか。

話を聞く父親たちも一様に、悲しそうに遠くを見つめているのを伊藤は見逃さなかった。「本来、子どもは未来に向かって可能性が広がっていて、親もさまざまな期待を膨らませるはず。なのに、わが子は逆なんだと、がくぜんとした」

■ □ ■

「スイーツで夢と笑顔を!」をコンセプトに、障害者らがチョコレートの製造・販売を手掛ける「ショコラボ」。現場での取材を通じ、障害者雇用の現状や課題を探った。 =敬称略

【神奈川新聞】


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