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男児の白骨化した遺体が見つかったアパートの玄関前には菓子やジュースが供えられた=6月19日、厚木市下荻野
男児の白骨化した遺体が見つかったアパートの玄関前には菓子やジュースが供えられた=6月19日、厚木市下荻野

■地方行政の課題

-セクハラ発言、政務活動費の乱用などにより地方議員の質が問われた。自治体は人口減少社会を見据え対策を迫られているのに加え、安倍政権が打ち出した地方創生にどう対応すべきかという課題も抱える。

P 地方議会不要論が叫ばれて久しい。根底には「何をしているか分からない」という不信感がある。議会活動をもっと目に見える形で発信すべきだ。

O 相互に活発な論戦が行われる委員会の傍聴を進めるべきだ。有権者が議論を直接に聞ける場をもっと増やさないと地方政治は市民から離れる。

-地方行政はことし、着実な動きを見せたと言えるのだろうか。

H 自治体は小児医療費の無償化年齢で競っているが、モラルハザードの指摘もある。効果的な制度設計を考える時期に来ている。

M 法改正で政令指定都市の制度が約60年ぶりに本格的に見直された。大都市では特に市民が地方行政を身近なものとして捉え、住民自治を強化していけるかが課題だ。

A 来年4月の知事選には黒岩祐治知事の再選出馬が確実視され、1期目の実績が厳しく問われよう。県政運営の手法自体に課題がないかも、しっかり点検する必要はある。

H 横須賀市は原子力災害が起きた場合の避難基準統一を国に要請しているが事実上のゼロ回答。市長はもっと強い姿勢で臨むべきだと言いたい。

P 基地訴訟で全国初の航空機飛行差し止めを勝ち取った判決は画期的だが、自衛隊機の夜間早朝の飛行は既に自粛されており追認にすぎない。政府の不作為に対し厳しい判断をするなど、司法はもっと存在感を示してほしい。

-歴史認識や北朝鮮問題などを背景に教育問題が論議された。

N 教育への国の関与を強める教育委員会制度改革は極めて大きな問題だ。時の国家権力が教育を左右しないよう、一層の監視が必要だろう。

K 全国学力テストの学校別成績を公表するか、しないかという判断が議論を呼んだ。県内では見送られたが、市町村全体の平均正答率の公表は増えた。賛否の意見があり引き続き議論が必要だ。

■児童虐待 薬物汚染

-子どもが犠牲になる事件が後を絶たなかった。ベビーシッター事件や厚木の男児遺棄致死は、救えたはずの命だったのではないかという思いを拭えない。危険ドラッグに関わる事件・事故も社会問題化した。

P ベビーシッター事件は公的保育の偏りを浮き彫りにした。平日の昼間を中心とした公的保育を利用できない保護者のよりどころが、公的資格が必要なく監督官庁もないベビーシッターだった。厚木の事件では、児童相談所の過度な負担が明らかになった。児童福祉司の増員など量だけでなく、小さな危険信号に気付き適切に介入していく質の向上に力を入れるべきだろう。

O 夜間保育などサービスを必要とする人に情報が届いていない。

P 深刻なストーカー事件が後を絶たない。事件を繰り返させない取り組みとして、もっと加害者対策に目を向ける必要がある。その意味でも、被害者遺族が11月に発足させた対策研究会議に期待したい。

■メディアの役割

-朝日新聞が従軍慰安婦報道を取り消し、「吉田調書」に基づく「東電撤退」報道を撤回した。新聞が権力のチェック機能を発揮し、国民の「知る権利」に応え続けるためには何が必要か。

N 朝日の従軍慰安婦報道問題は、政府の歴史修正的な思惑も絡み言論弾圧のようだった。誤報は正すべきだが、メディアの朝日たたきは言論弾圧への加担で自殺行為だった。

E 報道に誤りがあればおわびし訂正するのは当然だが、あまりにも遅すぎたし謝り方が良くなかった。新聞が自分たちの正義を振りかざすのは今の時代、万人には受け入れられないのではないか。

O 芸術家のろくでなし子さんらがわいせつ物陳列の疑いで逮捕されたが、あの事件はもっとメディアは敏感に反応していい。2人はネットや雑誌で警察批判、政権批判を展開していた。政権批判などの言論を萎縮させる狙いを感じる。

E 新聞はよく「国民の」知る権利とか「国民に」代わって権力や体制に対してチェック機能を果たすとかいうが、多様なメディアが生まれる中、紙のメディアだけの使命ってあるのだろうか。

■感染症 ビキニ事件

Q 西アフリカで猛威を振るうエボラ出血熱は米国内でも感染者が発生した。日本でも対岸の火事ではない。万が一の事態に備え、政府、自治体、医療関係者は即応できる医療体制を十分に整えることが肝要だ。

N ヘイトスピーチを放置する社会は人権に関心を持つべき先進国の立場として問題があると思う。差別であると明確にし、法規制すべき。

M 三崎のマグロ漁船も被ばくしたビキニ事件から60年の節目だった。国はことし、これまで「ない」としてきた当時の被害実態の調査記録を公開した。来年は戦後70年。あらためて国は不都合な事実は隠すという視点を踏まえ、戦争を知る世代の声を掘り起こしていかなくはならない。

H 自衛隊で不祥事が止まらない理由について、身内の警務隊が捜査する制度にあるという指摘が、警察権を持つ警察や海保からも出ている。

■スポーツ

-サッカーW杯ブラジル大会は世界との差を痛感させられたが、錦織圭選手の全米テニス準優勝などの快進撃は、競技力をいかに伸ばすかについての示唆に富んでいる。

F サッカー日本代表は自らの実力に対する謙虚で客観的な目がなかった。協会も指導陣も選手も同じ。瞬間的なスピードはそこそこあったが、ボールタッチの精度、球際や1対1の強さ、終盤まで走りきる体力、シュートで終わる意識、何もかも足りなかった。

J 錦織選手は近いうちに世界ナンバーワンになることも現実味を帯びてきた。大事なのは第2、第3の錦織選手を生み出す環境の整備。学校の部活動が中心の日本のスポーツ界では、錦織選手のように世界基準に達する“異端児”は生まれにくい。

I 中畑ベイスターズは指揮官の力量から判断すれば続投はあり得ない。人気を考慮しての判断だろうが、過去10年でAクラス入り1度、最下位6度という異常事態が続いていることを忘れてほしくない。

【神奈川新聞】


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