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神奈川新聞論説委員、2014年を振り返る(上)座談会 ▼国内政治

政治行政 神奈川新聞  2014年12月29日 09:45

意表を突いた師走の解散・総選挙は自民、公明両党で衆院定数の3分の2を超える議席を獲得し、第3次安倍晋三内閣が発足した。政権基盤が強化される一方、新政権には財政再建、社会保障改革、集団的自衛権行使容認を踏まえた安全保障法制の整備、原発再稼働、1票の格差是正など痛みを伴い、あるいは国論を二分する課題が待ち構える。来年の「戦後70年」という節目を捉え、巨大与党は憲法改正も見据える。時代の分岐点の中で、平和や豊かさを次世代にどのように継承していくべきか。社説を担当する論説委員会のメンバーがことしを振り返り、2015年を展望する。

■対抗軸示せぬ野党 衆院選で与党圧勝

-安倍首相は消費税率10%への引き上げを先送りし衆院を解散、アベノミクスの評価・継続の是非が争点となった。与党の勝因をどうみる。

A 与党圧勝の理由は野党のふがいなさもある。集団的自衛権や原発再稼働など重いテーマで安倍政権の対抗軸を示せず、選挙態勢も構築していなかった。この2年間、民主党などには振り子が戻れば議席が回復できるという甘えがうかがえた。

B 女性閣僚辞任もあり与党を取り巻く政治的な環境は追い風ではなかったが、下野という失敗から十分に学んだ結果では。安倍政権には計算し尽くされた抜かりなさを感じる。ただ、政権が描くシナリオが思惑通りいくかどうかは経済状況次第だろう。

A 戦後最低の投票率になった理由は与野党ともにある。解散には大義がなく、かといって野党も受け皿としての魅力がなかった。争点とされたアベノミクスも、不毛な批判合戦に終始した。結局、有権者は冷め、組織力で勝敗が決まった形だ。

D 自民党は前回に大量当選した1回生の多くが今回、再選を決めている。谷垣禎一幹事長は「結果におごらず、謙虚に」と引き締めを図っているが、選挙戦を多く経験した人材の割合が減り、党の体質がぜい弱になっている傾向は否めない。

■どうなる野党再編 勢力を築く努力を

-民主党が公示前より議席を増やしたとはいえ、海江田万里代表の落選に象徴されるように野党全体に敗北感が漂っている。野党は存在感を取り戻せるのか。

A 野党は政権の受け皿を本気でつくれなければ万年野党の55年体制に逆戻りだ。小選挙区では“小異を捨てずに大同につく”ことが肝要。その点、自民、公明両党の連携ぶりに学ぶべきだ。

D 民主党は年明けに新しい代表を選ぶ。全国の党員・サポーターを交えた代表選にするという。細野豪志元幹事長や岡田克也代表代行らが名乗りを上げた。3、4人ぐらいが出馬しなければ盛り上がらず、人材の多様性も示せない。維新の党も公示前議席には届かず、野党再編の機運が盛り上がるかは見通せない。

C 野党は風頼みでは衰退の一方で、受け皿となる政策が必要だ。批判票という意味では民主より共産という流れが当面続くのではないか。

D 「1強多弱」の構図が続く国会では緊張感が欠ける。与党との対立軸を明快に示し、人材をきちんと育てて政権交代に対応し得る勢力を築く努力が、野党にとっては待ったなしだ。

■転換する安保政策 国民に説明尽くせ

D 米第7艦隊司令官は神奈川新聞社の取材に対して、集団的自衛権に関連し「朝鮮半島周囲に機雷が敷設された場合、日本の支援を望む」と答えている。日本周辺の安全保障情勢によっては、米軍が自衛隊に支援を求める可能性はあるだろう。現実味のある状況を予測し、国民に説明を尽くすべきだ。

I 集団的自衛権の行使が実際に想定されるのは朝鮮半島有事の際だ。韓国のために米国の支援をすることになる。ところが韓国との関係改善に前向きではない。ちぐはぐなねじれは安倍首相が歴史認識を改めない限り暗い影としてつきまとうだろう。

C 沖縄では在日米軍基地への反発がかつてなく高まっている。背景には集団的自衛権行使容認があり、戦争に巻き込まれる恐れが現実味を増しているからだろう。

D 自衛隊の海外派遣では、集団的自衛権の行使を求められる状況の実像はほとんど国民に見えていない。同盟国の米軍とは共同演習などを通じて自衛隊は深い関係を保ってきているが、それ以外の国の部隊とはそれほど関係が強くない。PKO活動などで行動をともにする際、自衛隊員たちが現場で何を求められるのかは不透明のままだ。

■特定秘密・憲法改正 最大の目的は9条

I 特定秘密保護法や集団的自衛権の行使容認は世論調査で反対が根強い。安倍政権は総選挙で信任を得たと強弁するのだろうが、法の運用や関連法づくりでは丁寧な説明が欠かせない。政治と民意の乖離(かいり)をこれ以上拡大させるべきではない。

H 自公では圧勝したが自民は議席を減らした。改憲志向の次世代の党が激減したので、解散前より改憲しにくい政治環境になった。

B 実際に憲法を改正する場合、第9条から入るのではなく国民の合意を形成しやすいテーマから改正の必要性を提起していくだろう。ただ、国防軍の保持をうたった自民党の憲法改正草案を見ても最大の目的は前文と9条であることは明らかだ。

■アベノミクス、家庭に恩恵届かず

E 安倍政権の経済政策は消費増税の影響を過小に見積もりすぎたのが失敗。だが、総需要拡大、デフレからの脱却と富の拡大を進めるアベノミクス自体は、恩恵の偏りは是正していかねばならないものの及第点だと思う。

B 実体経済が上向くかは第3の矢・成長戦略にかかっているが、医療など新規分野で短期に成果を挙げるのは難しい。規制改革の行方も不透明。アベノミクスは正念場を迎えている。

F アベノミクスには富の再分配への手当てがまったくない。株価だけに頼るのは経済政策とはいえない。格差を放置せず中小企業、家計、地方へ目配りした政策が急務だ。消費が冷え込み、設備投資が低調なのは将来への不安に他ならない。

G スーパーで買い物をしていても食品をはじめ物価自体が上がっており、増税も相まって負担感は強い。GDPが下方修正されるなど消費税増税後の景気減速も明らかで、一般家庭には恩恵が届いていない。

H 人口減と成熟した消費社会という前提でないために遠からず破綻すると思う。日本で持続可能な社会を築くには里山資本主義しかない。

【神奈川新聞】


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