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14神奈川衆院選:多様性喪失の危うさ-論説主幹・中嶌弘孝

政治行政 神奈川新聞  2014年12月15日 12:17

多くの民意が眠り、懸念された低投票率が現実のものとなった。棄権の理由として、政治への諦めや「お任せ」気分のまん延が挙げられる。民主主義の危機と言わざるを得ない。

相撲に「注文を付ける」という言葉がある。有利な体勢に持ち込むために、立ち合いで策を用いることを指す。今回の衆院選は安倍晋三首相が仕掛けた「注文相撲」だった。

野党の準備が整わないタイミングで衆院を解散し、消費税の再増税先延ばしを選挙で信任を得て乗り切ろうともくろんだ。大義がなく風も吹かない選挙は盛り上がりを欠く。投票率が低下すれば、組織票を持つ自民に有利になるとの冷静な読みもあったろう。

案の定、野党は立ち上がりで後手に回り、守りの選挙戦を強いられる格好になった。「政権交代」の文言は影を潜め、選択の振り子は、自民に振れたままで止まった。安倍首相の注文相撲が決まったと言える。

共同通信社による終盤の世論調査では、最大の争点となった経済政策「アベノミクス」に関し、「評価しない」が「評価する」を上回った。恩恵の実感が希薄な地方ほど厳しい見方が目立っていた。

そうした国民の意見が結果に反映されなかった要因として、低投票率に加え、野党が政権批判票の受け皿になり得なかった状況が大きい。対抗勢力の脆弱さにも助けられての圧勝と言えるだろう。

「1強」時代の長期化によって政治の多様性が失われ、民意との隔たりが広がる状況がもたらす危うさは極めて深刻だ。野党のチェックが満足に機能しない中で、国論を二分する集団的自衛権の行使容認に関わる法整備、米軍普天間飛行場移設、原発再稼働などが進められ、その先に憲法改正も控える。

政治の多様性喪失の問題は自民党内にもある。内閣支持率が政党支持率を上回っている限り、安倍首相の政権運営に対する内部批判やポスト安倍論議は出にくいとの見方が強い。「一枚岩」の組織は半面で硬直化や停滞を招きかねない。

安倍首相には、政治的手続きを踏み、お墨付きを得た上は何でもできるといった誤った考えを捨ててもらいたい。強権的でなく、謙虚で寛容な政治姿勢が求められている。野党が頼りにならないなら、私たち国民がこれまで以上に政権をチェックする意識を強く持つ必要がある。

【神奈川新聞】


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