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静かな空かなわず 力込め「闘い続ける」 厚木爆音・最高裁判決 

社会 神奈川新聞  2016年12月09日 02:00

判決後の集会で厳しい表情を見せる金子豊貴男原告団長(左)と、中野新弁護団長(手前) =8日午後、東京都千代田区
判決後の集会で厳しい表情を見せる金子豊貴男原告団長(左)と、中野新弁護団長(手前) =8日午後、東京都千代田区

 2007年の提訴から丸9年。厚木基地第4次爆音訴訟は8日、住民側の「逆転敗訴」で決着した。「司法は死んだ」。国防を優先し、健康被害の受忍を強いる結論に、訴訟団の絶望と怒りが渦巻く。それでも「次こそは最高裁でひっくり返す」。第5次提訴を見据え、静かな空を勝ち取るまで闘い続けると力を込めた。


 「不当判決」。法廷から駆けてきた弁護士が、最高裁正門で言い渡しを待った100人近い原告らに全面敗訴を伝える旗を広げると、ため息が漏れた。「なんで」「ふざけるな」

 司法への失望は、判決直後の報告集会で頂点に達した。「最高裁の理屈は非常識」。中野新・弁護団長(73)は切り捨てた。裁判官5人全員一致で請求を退けた。1次訴訟から被害救済を訴えてきたが、「裁判官は変わっても体質は昔のまんまだ」。

 睡眠妨害を重視した騒音による健康被害について、最高裁は二審判決を維持し、軍用機の騒音は「生活の質を損なう」と認めた。

 一方で、自衛隊機を運航する安全保障上の「高度な公益性」が、住民被害を凌駕(りょうが)すると結論付けた。健康被害の立証に努めた北海道大学大学院の松井利仁教授(55)=環境衛生学=は「自衛隊が住民を殺しても構わないという判決だ」と憤った。

 最高裁の裁判官は一、二審と異なり、現地に足を運んで騒音の深刻さを確かめなかった。福田護・弁護団副団長(66)は「その感覚をなんとかしないといけない」と批判。「住民の悲願が踏みにじられた」と感情をあらわにした。

 金子豊貴男・厚木原告団長(66)は「もっと闘えというサイン」と受け止めた。全国の7訴訟団で原告は3万6千人を超えており、「一体となって次の闘いを前進させていく」と前を向く。

 5次訴訟は来年2月ごろから原告を募り、数千人規模の集団を目指す。「静かな空の実現を求め、さらなる闘いに歩みを進めなければいけない」。訴訟団は声明文を読み上げ、団結を誓った。


関係自治体首長の声


 

国は騒音 抜本解決を



 黒岩祐治知事 判決では、原告の主張が認められなかったが、一連の訴訟を通じて、厚木基地周辺の騒音被害の深刻さが改めて示されたと受け止めている。

 国は4度にわたり司法の場で騒音被害の違法性が認められたことを重く受け止め、騒音問題の抜本的な解決に向け、最大限努力するよう強く求める。

 県としては、一日も早く空母艦載機移駐を実現させるなど、騒音問題が抜本的に解決するよう引き続き、関係市と連携して、粘り強く国、米側に働き掛ける。

 林文子横浜市長 基地周辺の騒音被害の実態は深刻で、今回の判決にかかわらず国は重く受け止める必要がある。市としては日米間で合意されている空母艦載機の厚木基地からの着実な移駐など、早期に騒音被害が解消されるよう国や米軍に働き掛けていく。

 加山俊夫相模原市長 これまでの判決内容が一部見直されたが、騒音被害の違法性については、一審・二審と同様、変わりないものと理解している。国は、改めて住民の苦しみを重く受け止め、人口密集地を激しい騒音を伴い飛行する異常な事態を、一日も早く解決すべきだ。

 鈴木恒夫藤沢市長 最高裁判決は残念ながら、従来の司法判断を超えるものではなかった。藤沢市としては今後も一日も早い航空機騒音問題の抜本的解決を求めるとともに、騒音被害の軽減に向けて、県や基地周辺市とともに粘り強く要請を行っていきたい。

 服部信明茅ケ崎市長 国は基地周辺住民の訴えを厳粛に受け止め、一日も早い騒音被害の解消に向けて取り組みを強化することを望む。茅ケ崎市としては、引き続き、県や厚木基地周辺市と連携して国や米軍に働き掛けていきたい。

 大木哲大和市長 関係者の労苦と努力に深く敬意を表する。4次にわたる訴訟で司法判断はいずれも被害の深刻さを示した。国は、基地周辺住民の負担の上に安全保障が成り立っていることを踏まえ、一日も早い空母艦載機の移駐など、騒音被害解消に全力で取り組んでいただきたい。

 内野優海老名市長 長年の騒音被害で市民生活に大きな影響を及ぼしていることを国は重く受け止めるべきである。今後も市民が安心・安全に暮らせるように岩国移駐の確実な実施など、騒音被害の抜本的解決に取り組むことを国および米国に強く望む。

 遠藤三紀夫座間市長 長年にわたる厚木基地第4次騒音訴訟の判決が最高裁判所で下された。この結果について真摯(しんし)に受け止めていきたい。

 古塩政由綾瀬市長 改めて長年の原告団の労苦と努力に敬意を表する。過去の騒音被害については判決が確定しており、司法がその違法性を認めている事実に変わりはない。騒音問題の抜本的解決に向け国が努力することを求め、市では国や米側に引き続き働き掛けていく。

 石阪丈一町田市長 町田市上空を飛行する航空機の騒音により、多くの市民が耐え難い苦痛を強いられている。この問題を国は重く受け止め、騒音軽減に向けた取り組みを積極的に行ってほしい。市では夜間・早朝の飛行訓練禁止ほかについて国、米軍に今後も粘り強く要請を続ける。

「理解得られた」菅官房長官




 
 菅義偉官房長官は8日の記者会見で、厚木基地騒音訴訟で、最高裁が夜間・早朝の自衛隊機飛行差し止め請求を棄却したことに関し「国の主張について裁判所の理解が得られた」と述べた。

 基地周辺の住民の騒音被害については、米軍艦載機の厚木基地から岩国基地(山口県)への移駐や、住宅の防音工事などの対策を挙げた上で「住民の負担軽減を図るよう政府として努力していきたい」と強調した。


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