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14神奈川衆院選:問う(5)個人の発言圧迫

政治行政 神奈川新聞  2014年12月10日 03:00

特定秘密保護法の問題点を訴える大野さん=首相官邸前
特定秘密保護法の問題点を訴える大野さん=首相官邸前

政治家たちの姿が消えた師走の国会周辺、首相官邸前の寒空にラップ調のコールを響かせた。

「トクテイヒミツホゴホウ、ハンタイ」

明治学院大国際学部4年、大野至さん(22)=横浜市港北区=がマイクを握った。「国家が個人を徹底的に管理する時代がやってきた」。9日夜、特定秘密保護法の施行が数時間後に迫っていた。

特定秘密保護法に反対する学生有志の会「SASPL」の中心メンバーの一人。防衛、外交などに関わる国家機密を漏らした場合に厳罰を科す同法は昨年12月、成立した。「当初は『秘密の範囲が広すぎる』『知る権利が侵される』と言われ、ピンとこなかった。でも勉強したら、国に情報を隠されるという単純な話ではなく、学生の自分にも無関係ではないと分かった」

10月には若者の街、東京・渋谷で2千人を集めたデモを開催し、法律に反対する署名集めにも走り回った。就職活動を前にした友人の言葉が忘れられない。

「趣旨には賛同。でも、自分の名前が知られ、将来が左右されるかもしれないから署名はできない」

何が秘密にされているのかさえ知らされないという、情報統制を主眼とするこの法律が内包する「萎縮効果」。自身も来春、関西の大学へ移り、勉強を続けることにしているが、「デモでこんなこと言って平気かな、と考えてしまうことがある」。知れば知るほど、国家権力が人の内心に手を突っ込んでくる息苦しさを感じずにはいられない。

最たる例がこれから実施される「適性評価」。特定秘密を扱える人物か判断するため、学歴、薬物の使用歴、精神疾患、飲酒の程度、経済状況などを調べる。「公務員だけじゃない。大手メーカーに就職する友人がいる。自衛隊に装備を搬入する仕事に関わる社員は評価対象になり得る。その家族も調査される可能性がある」。運用基準案には家族の国籍についての質問もあり、「これって人権侵害じゃないのか」。

以前は、国の上に立つ少数の人が情報を管理していた方が安全で安心だと感じていた。「管理する人が完璧ならば。でも、完璧ではあり得ないと歴史を勉強して分かった」。東京電力福島第1原発の事故がまさにそうだった。「ならば自分たちで考え、監視し、責任を持ちたいと思うようになった」

投票という行為こそは、まさに自分たちで考え、監視し、責任を持つ第一歩であるはずだ。安倍晋三首相は「アベノミクスの信を問う」として解散総選挙を決めた。「自分が都合のいいときにだけ民意や民主主義を口にするのは欺瞞(ぎまん)だと思う」

この夜、デモに集まったのは約千人。「予想より少ない」。大野さんにしかし、悲壮感はない。「僕らの世代は生まれてこのかた『輝かしい日本』を知らない。その意味では日本に過大な期待などしていない」。希望は期待して待つものではなく、つくりだしていくものだと思っている。

デモ参加者のスピーチが続く。マイクを持った仲間の一人が言った。「この法律ができ、民主主義は終わったという人がいる。でも、私たちが声を上げ続ける限り、何度でも始まっていく」。大野さんはその始まりを投票で記すつもりだ。

【神奈川新聞】


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