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【照明灯】斎藤隆夫の反軍演説

政治行政 神奈川新聞  2014年12月08日 11:50

「唯徒(ただいたずら)に聖戦の美名に隠れ国民的犠牲を閑却し…」。その舌鋒(ぜっぽう)は鋭い。1940年2月。衆院議員、斎藤隆夫の反軍演説だ。時の政権に対し、日中戦争の処理方針に真っ向異議を唱え、「新秩序建設」といった麗句に隠れる欺瞞(ぎまん)を暴いた▼練習のために、鎌倉の海岸に連日出掛けた逸話が残る。のどを心配した妻が持たせたのが手製のキャラメル。1時間半に及ぶ演説を丸暗記し、原稿に目を落とすことなく訴え切った。しかし▼「聴かんと欲しても聴くことが出来ぬ」国民に成り代わった斎藤の執念むなしく、軍部の圧力に屈した議会は速記録から後半を削除し、斎藤の除名処分を議決。憂国の士は当然、徹底的に抵抗する。「憲法の保障する言論自由の議会での演説ではないか」と▼粛軍演説(36年)では、議会を軽視して独断専行する軍部を批判するだけでなく、それにすり寄る政治家たちをもやり玉に挙げた。国家総動員法案に関する演説(38年)では、議会の審議なしで国民を統制する危険性を指摘した。だが、破滅へと進む時流は止まらなかった▼8日は日米開戦から73年。10日には特定秘密保護法が施行される。反戦、表現の自由、国民主権。火の玉のように吐き出した斎藤の言葉は70年余をへても古びることがない。

【神奈川新聞】


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