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私が投票する理由〈1〉識者に聞く/映画作家・想田和弘さん 全体主義に抗すため

政治行政 神奈川新聞  2014年12月08日 11:46

想田和弘さん
想田和弘さん

報道各社の衆院選の情勢分析によると自民党が議席を伸ばし、圧勝する雲行きだ。定数の3分の2以上となる320議席に達するとの見立てもある。識者にその受け止めと、意味するところを聞く。

情勢分析を前提にするなら、私ほどの危機感を持っていない人が大多数なのだと思わざるを得ない。

安倍政権を全体主義的な傾向の強い政権だと考えてきた。公約になかった特定秘密保護法を強行採決し、憲法で禁じられてきた集団的自衛権の行使容認を解釈改憲で行った。環太平洋連携協定(TPP)交渉参加もそう。民主的とはいえない手法で、民主的ではない政策を実行してきた。

私は昨夏の参院選について拙著でこう書いた。

〈ファシズムという語にはある種の「熱狂」が伴うイメージがある。ヒトラーやムッソリーニや昭和天皇のように、カリスマとして祭り上げられた指導者と彼らを熱狂的に支持する国民がいる。しかし、安倍氏を熱狂的に支持する人はあまりいないし、投票率も戦後最低レベルだった〉

自民圧勝の予測も、主権者の無関心をよそに全体主義的な政策や体制が強化されてゆく「熱狂なきファシズム」の進行を示してはいないか。

政策が多少強引でも、経済がうまくいっているから容認してきた層も多かったはずだ。そのアベノミクスは頓挫(とんざ)しつつある。それでも支持を続けるというのは私には不条理に映る。

自民は戦後の政権の大半を担ってきたという無意識的で無条件な信頼感が背景にあるのだろう。1度任せてみた民主党も駄目だった。ほかに選択肢はない。つまり消去法との声も聞く。

世論調査では、自民は無党派層にも食い込んでおり、浮動層も含めて「やっぱりまだ自民でいいんじゃないか」という雰囲気が支配的なのかもしれない。

安倍政権のマーケティング的戦略が成功しているのかもしれない。選挙期間中の日本外国特派員協会の会見に出ない選択をしたのが象徴的。集団的自衛権の行使容認を閣議決定で済ませたのと同じ。正面から説明するのではなく一番抵抗が少ない方法を考えている。

政治家は政策という商品を与える存在で、有権者は消費者であり、対価として投票と納税で応えるという「消費者民主主義」の風潮がある。消費者化し、受け身になりがちな主権者にそうした戦略が効いても不思議ではない。

自民には何の恨みもないし、きちんと政権運営するなら構わない。でもこの2年間を見る限り、安倍政権には歯止めをかける必要があると考える。そのためにもっとも有効な選択は何かを判断基準に投票したい。

政治は暮らしに大きな影響を及ぼす。勝手に戦争を始められてしまうという話だけじゃない。福島第1原発の事故まで、自分は原発とは無関係と思ってきた人が大半だったが、事故になったらほとんどの国民が影響を受けた。国民がさして注意を払ってこなかったから、政府は50基以上の原発を全国に造れたということを忘れてはならない。

民主主義は参加者が減れば減るほど成り立たなくなる。課題はあるものの君主制などよりはましで、継続させるには一人一人の参加が欠かせない。投票に参加するということは、そういう大きな意味もあるのだ。

【神奈川新聞】


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