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JKビジネスに潜む闇 普通の少女が食い物に 警鐘鳴らす仁藤夢乃さん

社会 神奈川新聞  2014年11月27日 12:00

仁藤夢乃さん
仁藤夢乃さん

制服姿で夜の街に立ち、客を引く細い肩にかつての自分を重ね見る。裏社会に取り込まれた少女たちに手を差し伸べようと仁藤夢乃さん(24)が一般社団法人「女子高校生サポートセンターColabo」を立ち上げたのは3年前のことだ。「JK(女子高生)ビジネス」なる言葉が生まれるなど、少女を食い物にする大人たちが後を絶たない。仁藤さんはいま、警鐘を鳴らす。「訳ありじゃない、普通の女の子たちが取り込まれている」

歓楽街のさんざめきの中、目線を同じ高さに合わせて「何かあったら連絡して」と声を掛けて回る。ブログやツイッターを通じて相談を寄せてきた少女たちに会う。

「援助交際がやめられない」「一日一食しか食べていない」

訴えは切実で現実的だ。一緒に食事をしたり、支援組織など頼れる相手につないだり、入り込んでしまった裏社会から彼女たちが抜け出せるよう後押しする。「常に50人ぐらいは心配な子がいてメールや電話で連絡している」。これまで関わった少女は千人超になる。

■関係性の貧困

近著「女子高生の裏社会」のサブタイトルは「『関係性の貧困』に生きる少女たち」。

個室で客にマッサージなどをする「JKリフレ」、屋外でデートする「JKお散歩」といった「ビジネス」に取り込まれた女子高生を取材し、その身に何が起きているのかを追った。

夜の街を漂う少女たちに目を向けるようになったのは大学在学中だった。

かつては自分も「渋谷ギャル」の一人だった。

父は単身赴任で家にいなかった。母と妹との3人暮らし。うつ病を患った母は突然怒りだしては手を上げた。

「でも誰もそんな家だと思っていない。マンションに住んで、私立の女子校に通っていて」

高校では担任とそりが合わず、足が遠のいた。家庭にも学校にも居場所がなくなり、友人たちと夜の街へ繰り出した。高校は2年の夏で中退した。

高卒認定試験を受け、大学に進んだ仁藤さんだが、友人たちは路上をさまよう生活から抜け出せずにいた。そのまま風俗産業で働きだした友だちもいた。

支援団体を立ち上げたのは2011年。家庭や学校に居場所や社会的なつながりを失った途端、夜の街をさまよい始めたかつての自分を振り返り、「難民高校生」というタイトルで著書も出した。危うさを抱えた子どもたちはかつての自分ではないのか。そう思えば、放ってはおけなかった。

■ハードル低く

そしていま、JKビジネスで働く少女は三つの層に分けられるという。

家族に渡すお金や学費を必要とする「貧困層」、経済的には困窮していないが、家族や学校での関係性に不安や特別な事情を抱えている「不安定層」、そして家庭にも学校生活にも問題のない「生活安定層」。

JKビジネスが生活安定層まで浸食していることに衝撃を覚えたという。自身も10代のころにメードカフェで働いたことがあったが、「あくまで当時は訳ありの子が働いていた場所だった」。

広がりの背景にインターネットの普及をみる。「女子高生/バイト」というキーワードで検索すれば、全国のJK産業の求人情報が掲載されたホームページ(HP)やツイッターが引っかかる。JKお散歩なら「観光案内」などの名目とともに「時給3千円」「読者モデルも在籍」「タレントデビューのチャンスも!」といった惹句(じゃっく)が踊る。

「何をする『バイト』なのかを知らぬまま入り込んでしまう。それに、いまの子どもたちは物心ついたころから当たり前にネットがあり、ネットで知り合った人と会うことへのハードルが以前より格段に下がっている」

■表社会の関心

裏社会に取り込まれる少女たちと接し、感じていることがある。

「JKビジネスで働く三つの層に共通するのが、親や学校の先生以外に頼りにできる大人がいないということ。困ったな、危ないかな、と子どもが不安に思ったときに助言してくれる大人が必要だ」

だが、街中で少女に声を掛けてくるのは女の子を商品と思い、利用しようという目的がある大人たちばかり。

「困っている女の子たちが街にいるときに、手を差し伸べたり声を掛けたりする大人があまりにも少ない。学校や家庭以外に頼れるところがなく、そこから漏れた子どもをJKビジネスが“保護”しているという側面さえある」

スカウトは街で少女に優しく声を掛け、店に入った後もフォローを続ける。店では店長が少女の話を聞き、褒めたり、しかったりしながら信頼関係を得てゆく。時々現れるオーナーは少女たちの自尊心をくすぐるような声を掛ける。家出した少女には、住居の提供などの生活支援もしている。「店によっては女の子のまとめ役として若いお姉さんを入れたり、勉強のフォローをしたりするところもある」

裏社会でできて表社会でなぜできないのか、と仁藤さんは歯がゆい。

「JKビジネスのスカウトや援助交際をたくらむ男性は断られても無視されても、めげずに声を掛け続ける。表社会でも、子どもたちに『何かあったらいつでも相談して』と何回も言っておく必要がある。そういう大人が100人いたら、その中に1人ぐらいはこの人なら話してもいいかも、と思える人がいるはず」

最近、衣類に事欠く少女のために服の寄付をツイッターで呼び掛けたところ、100人を超える女性が協力してくれた。「『自分も昔、いろいろあったから』という人もいた。そういう『元少女』が、今の少女を支えるということができたらいい」。哀しい過去も希望に変えて-。

そして近著をこんな問いで締めくくった。

〈多くの少女たちが、家庭や学校以外に信頼できる大人とのつながりを持っていないのと同じように、家庭以外の子どもと関わる機会のない大人は多いのではないだろうか〉

関係性が断たれているのは、大人たちも同じなのだ、と。

にとう・ゆめの 1989年東京都生まれ。明治学院大卒。少女たちの自立を支援するため、2011年に「Colabo」(http://www.colabo-official.net/)を立ち上げ、情報発信や若者と社会をつなぐ場づくりに取り組む。著書に「難民高校生」(英治出版)、「女子高生の裏社会」(光文社新書)。

【神奈川新聞】


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