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【逗子ストーカー事件から2年】被害防止へ研究会 「次の妹」救うために

社会 神奈川新聞  2014年11月12日 10:58

 被害者遺族や専門家らがストーカー事件の深刻化を防ぐための対策を考える研究会が15日、発足する。呼び掛けたのは、逗子市で2012年、元交際相手の男に刺殺された助成=当時(33)=の兄(43)。事件から2年、どうしたら被害を防げたのか。臨床心理学の研究者や精神科医ら約30人が残された教訓から、被害者支援や加害者治療のあり方などを幅広く議論する。

 研究会の名称は「ストーカー対策研究会議」。逗子事件の遺族であり、大学教員として「地域防犯」を研究する兄が代表を務める。研究会では逗子事件を題材に、どうしたら被害を防げたかという視点を出発点に、加害者のカウンセリングや治療、被害者支援のあり方などを取り上げる。加害者家族が相談できる専門窓口の設置や、警察と各機関の連携のあり方も探る。

 初会合は15日に東京で開催。来年10月までに計6回の会合を開く。各回ごとにそれぞれのテーマを設け、16年度をめどに公開シンポジウムや書籍出版などで成果を公表する計画だ。11日、東京都内で会見した被害女性の兄は、「警察だけでは被害者を救えないという思いが強い。研究会では結論をまとめることなく、さまざまな可能性を社会に発信していきたい」と話した。


 「遺族としても、研究者としても、自分がやらなきゃいけない、という気持ちが強い」。分厚い資料からゆっくり顔を上げた兄は、真っすぐに前を見据えた。2012年11月6日-。あの日の記憶はあいまいだ。女性の悲報は、都内に住む弟から携帯電話に入った。両親に何と説明すればいいのか。弟と会話を重ねたはずなのに、その会話の内容や電話を受けた場所が思い出せない。

 兄は大学教員として「地域防犯」を専門に研究している。それだけに、ストーカー犯罪から妹を救えなかった自分を責めた。男は犯行後に自殺し、怒りや憎しみをぶつける先もなく悶々(もんもん)とする日々を過ごした。精神的に不安定になり、見てもいない殺害現場の光景が何度も目に浮かんだ。女性につきまとう男に気付いたのは11年4月。兄の研究室にピザやすしが大量に注文された。「あまり深刻に受け止めていなかった。嫌がらせとの違いが分からず、警察が警告すれば止まると思っていた」

 同年9月、男はメールでの脅迫罪で保護観察付き執行猶予判決を受けたが、12年3月以降、千通を超えるメールを送り付けた。だが当時はストーカー規制法の「つきまとい」に該当せず、事件をきっかけに連続メールが規制対象に加えられた。どうすれば妹を救えたのか。13年9月以降、専門書を読みあさり、専門家に会うために全国に足を運んだ。逗子事件では有罪判決が出た後、男のストーカー行為がエスカレートした。「加害者の強い執着がなくならない限り、いずれ同じ結果になった。警察の取り締まりと厳罰化だけでは限界がある」。苦悩の末にたどり着いた結論だった。

 事件前、女性はストーカー被害を受けながらも、男から自殺をほのめかすメールが届くと、心配して男の家族に伝えていた。「妹は加害者が立ち直ることで自分の生活を取り戻そうとしていた」。研究会では、加害者のカウンセリングや治療の可能性も探る予定だ。事件から2年余り。研究会発足にこぎ着け、ようやくスタートラインに立った。「時間はかかったけど、やれることがたくさんあると確信できた。“次の被害者”を一人でも多く救いたい」

 ◆逗子ストーカー殺人事件 2012年11月6日、逗子市のアパートでセミナーコーディネーターの女性=当時(33)=が元交際相手の男=当時(40)=に刺殺され、男も自殺した。事件前、男は女性に大量のメールを送っていたが、当時のストーカー規制法ではメールの連続送信が規制対象に明記されておらず、事件を機に同法が改正された。13年には、男から女性の個人情報の聞き出しを依頼されたとみられる調査会社経営の男が、逗子市役所に電話をかけて住所を聞き出したとして偽計業務妨害容疑などで愛知県警に逮捕、起訴された。


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