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【照明灯】フランケンシュタイン

カルチャー 神奈川新聞  2014年11月09日 12:00

科学者を志す大学生、ビクター・フランケンシュタイン。生命を自在に操りたい狂気にとりつかれた彼は理想の人間の設計図を完成させた後、人間の死体をつなぎ合わせ、怪物を創造した-▼近年、フランケンフードなる言葉が使われるようになった。遺伝子組み換え作物に反対する人々が、健康や環境への影響を懸念して漠然とした不安感を込めた俗称だ。2倍速で成長するサケ、物流の過程で傷まないトマトなどさまざま▼「ゴールデンライス論争」もかまびすしい。開発途上国での死因の一つであるビタミンA不足解消の期待を担って登場した。「多くの子どもの命を救う」と主張する推進派に対し、「必要な栄養分は補えない」と疑問視する懐疑派。決着はついていない▼ビクターの作り出した怪物は、頭脳、体力に優れていながら、容貌の醜悪さから忌み嫌われた。“創造主”への憎悪を募らせた揚げ句、ビクターの友人らの命を次々に奪い、人間の手に負えなくなる。行方知れずになったままだから、いまだにどこかで息をひそめているかもしれない▼人の欲望の行き着く先に生み落とされたものが、時に人の行く末に立ちはだかる。求められる想像力、そして謙虚さ。200年前に記された物語は、多くの示唆に富んでいる。

【神奈川新聞】


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