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【社説】国民医療費 抑制と水準維持両立を

社会 神奈川新聞  2014年10月28日 10:00

1年間に全国の医療機関に支払われた国民医療費の総額が2012年度、約39兆2千万円に達し、6年連続で過去最高を更新した。

医療費の適正化は、国民皆保険制度を維持していくためにも不可避な課題といえよう。団塊の世代が75歳以上になる「2025年問題」を見据え、受益と負担のあり方について国民的な議論が求められる。

現行の保険医療体制が前提としていた人口構成の変化を考慮するのであれば、新たな制度設計の必要性には大きな異論はないだろう。財源捻出という観点からは、個人負担ばかりでなく国家財政全体の問題として捉え、政府は一層の行財政改革にも取り組むべきである。

厚生労働省が社会保障審議会の部会で示した医療保険制度の改革案は世代間、世代内の公平性に配慮するとともに、各年代にあまねく負担増を求める内容といえる。焦点の一つは、後期高齢者医療制度に加入している低所得者らを対象にした保険料軽減特例の廃止であろう。

特例廃止により、大幅な負担増が一気に生じて受療行動抑制をもたらすようなことがあってはならない。制度改革の結果、重症者の増加を招いては本末転倒ではないか。

医療費の増加ばかりに焦点を当てる傾向になっているが、新たな制度構築に当たり、最も肝心なのは地域医療の質と量の維持といえよう。

限られた予算の中で、医療の公平性を確保しながら、超高齢社会の課題やニーズにいかに応えていくか。特に自治体は地域の実情を踏まえたきめ細かな体制づくりに力を注ぐべきである。

厚労省は大病院偏重から在宅医療重視へ本年度の診療報酬改定で大きくかじを切り、地域医療充実のため都道府県単位に基金を創設した。

併せて、地域レベルで支出目標などを定めた医療ビジョンや医療費適正化計画が策定されることになる。神奈川県をはじめ都市部では今後、高齢化のテンポが速まり、医療費の支出が増えていく見通しだ。目標達成が命題となり、患者利益に優先することがあってはならない。

高齢者が住み慣れた地域で切れ目のない医療、介護の提供を受けるためには、かかりつけ医、診療所の役割が重要となろう。目標策定に当たっては、国民皆保険制度の趣旨を踏まえ、医療現場、医療従事者の声を十分に反映させてもらいたい。

【神奈川新聞】


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