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羽田周辺インフラ強化 政治判断で同時前進へ 連絡道整備、国道357号延伸

社会 神奈川新聞  2014年10月27日 03:00

連絡道路予定エリアの図
連絡道路予定エリアの図

羽田空港を核とする周辺のインフラ強化構想が大きく動き始めた。政府は羽田と多摩川対岸の川崎市を直結する連絡道整備と、国道357号(東京湾岸道路)の多摩川トンネル以南の延伸を同時に進める方針を決定、国際ビジネス拠点の早期形成を見据える。東京五輪の開催決定、国家戦略特区の指定、政治環境の変化-。優先度をめぐる地元の思惑のずれから足踏みが続いていた構想は、複数の“起爆剤”が重なったのを機に歯車が回り始めた。

■青写真に隔たり

「多摩川の対岸は川崎市で、新しい産業が集まっている。こちら側の東京・大田区には優れた製造業が多い」。9月下旬の土曜、空港を望む大鳥居の下で外国人向けの地元ツアー参加者が、説明に耳を傾けた。空港の旧整備場地区跡地で開かれたイベントの一環だ。

羽田の沖合滑走路や国際線ターミナルの新設に伴って発生した跡地に、地元の大田区は産業集積や国際文化交流の拠点をつくる計画を描く。対岸の川崎・殿町地区では、ライフサイエンス(生命科学)分野の研究機関や企業の集積が進む。

川崎市や神奈川県などは10年ほど前に「神奈川口構想」を打ち出し、空港機能の一部整備と羽田に直結する連絡道の新設を求めてきた。羽田国際化に伴う人やモノの流れを県内に取り込もうと、国へ要望してきたプロジェクトだ。

だが大田区側は、東京湾岸で物流や観光を支える広域ネットワークを仕上げた先に、地元の活性化を見据えてきた。連絡道の想定場所は、終戦直後に羽田を接収した連合国軍総司令部(GHQ)が住民を48時間で強制退去させた歴史を抱える土地。さまざまな背景が交錯し、空港南端部で途切れている357号の延伸を優先すべきとの姿勢を維持、合意形成は難航していた。

■視界開く方針転換

国際ビジネス拠点を東京だけでなく、神奈川にもつくる。橋もつくる。初めて言ったことだ-。

5月24日、菅義偉官房長官がインタビュー取材に連絡道整備を表明したとの情報が官邸から県や川崎市の幹部らにもたらされ、その日のうちに「ビッグニュース」(県幹部)として駆け巡った。

「これはすごい話だ」「ついに悲願が実現した」

副知事らが興奮を隠さずに口をそろえるその行間には、これまで「一番の難関」とされてきた菅氏が方針転換したことへの驚きがにじんでいた。

二つのインフラ整備構想が一気に動きだす契機となったのは、羽田の国際化、東京五輪の開催決定、神奈川全域と東京都9区などの国家戦略特区指定。そして、構想実現に向けた政治判断の鍵を握る菅氏が政権内で要職に就いたことだ。

国土交通政務官を務めた菅氏は、かつては首都圏の基盤整備予算の中では357号整備による県内への経済波及効果が大きいとの見方から、連絡道構想には慎重だった。だが、2020年の五輪開催に向けた首都圏空港の機能強化が最重要課題に位置付けられ、特区間連携によるインフラ強化を進める姿勢に転じた。

■ウィン・ウィン

足元の政治を動かすキーパーソンの交代も推進力を得る一因となった。

神奈川の知事は民主党出身の松沢成文氏から、菅氏も擁立に関わった黒岩祐治氏に交代。黒岩知事は就任以降、特区を柱とする健康・医療分野の規制緩和実現に力を注ぐ。川崎市の福田紀彦市長は昨年11月の就任直後、最初のあいさつ先に大田区の松原忠義区長を選択。「首都圏の発展に川崎と大田の連携は不可欠」との思いの表れだった。

松原区長は今月10日の会見で、「基幹道路の357号整備は最重要課題。それが動くなら、と(政府からの)話に乗った」と説明。「川崎の医療研究開発と大田区の産業交流施設がリンクすれば、強いものができる。川崎とは仲良くしていきたい」と、連携深化に意欲をみせた。

京浜臨海部の連携を進めるため政府が設けた委員会の座長を務める和泉洋人首相補佐官は、今の流れについて「過去に川崎と東京でボタンの掛け違いがあったが、ウィン・ウィンの関係で前進させる時期と判断した」と解説した。

【神奈川新聞】


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