
横浜中華街には約230店舗もの中華料理店が連なるが、そのほとんどが家族経営だ。一家総出で店を切り盛りし、休憩時間にはコックがありあわせの食材でまかない料理を振る舞う。
このまかない料理が近年、人気メニューに昇格するケースが増えてきた。代表が「中華街カレー」だが、ほかにも店員や常連客にだけ出してきた料理が“裏メニュー”としてSNSなどの口コミで広がり、注目を集めているようだ。
北京料理「東園」のダールーメンもその一つ。同メニューには諸説あるが、同店では卵をベースにしたピリ辛のあんかけが特徴だ。

調理場をのぞくと、コックが中華鍋に卵3個とごま油などを注ぎ、激しくかき混ぜてあんかけを作っていた。これに残り野菜とチャーシューの千切りをトウバンジャンで炒めたものや麺をあえる。食べてみると、油と混ぜてマヨネーズのようになった卵が麺によくからまる。味はさっぱりした担々麺のようだ。
昨年3月にテレビ番組で取り上げられた直後は客が殺到し、1日に100杯以上売り上げたことも。買い置きの卵を使い果たしたこともあるという。
かつてはこのようにテレビで紹介されても、ブームは1~2カ月しか続かなかったが、ダールーメンは1年半たった今も人気が続いている。「テレビを見て食べた人がブログやSNSで報告して、それを見た人がまた来店しているようだ」と代表取締役の揚井忠明さん(51)。
同店ではダールーメンはショーケースでも店内メニューでも紹介していないが、注文すれば税込み1050円で食べられる。そんなちょっとした“裏技感”も、横浜中華街らしい魅力の一つだ。
同店では、SNSで知ったという若者がダールーメン目当てに訪れるようになり、新規顧客開拓に結び付いたという。
「あの店でしか食べられないというメニューは、実はまかない料理なのかもしれないですね」と揚井さんは話している。