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危険ドラッグ11人死亡、健康被害は161人 県内1~9月 深刻さ浮き彫りに

社会 神奈川新聞  2014年10月13日 03:00

危険ドラッグの吸引が原因で、今年1~9月に県内で11人が死亡、1人が脳死状態になったとみられることが、12日までの県警のまとめで分かった。死亡・脳死状態は計12人に上り、すでに昨年1年間の計9人を上回っている。自傷行為に及ぶ場合もあり、周囲に危害を加える事件や事故が全国で相次ぐ中、危険ドラッグによる被害の深刻さがあらためて浮き彫りとなっている。

県警薬物銃器対策課によると、昨年1年間で180人だった所持や使用など危険ドラッグに関連する取扱人数は、今年1~9月で253人。同じく昨年1年間で118人だった健康被害を訴えた人数は、同161人となっている。

取扱人数を年代別でみると、最も多いのは20代の110人で、30代の93人、40代の27人と続く。職業別では無職が最多の83人で、会社員76人、建設業36人となっている。「特に若者が多いわけではなく、職業もばらつきがある」と県警幹部。幅広い年代や階層に広がっているのが実情だ。一方、性別で見ると、男性が234人と9割を占めた。

危険ドラッグは摂取すると幻覚や興奮などの作用があり、意識がもうろうとする場合が多い。病院搬送後すぐに回復し、入院しても1~2日で退院する場合がほとんどだが、「より深刻な健康被害に陥ることも少なくない」(県警幹部)。9月だけでも4人が死亡、1人が脳死状態になっており、命に関わるケースは増加傾向にある。

横浜市内の漫画喫茶で9月14日、客の男性(42)が個室の床に倒れて死亡しているのが発見された。嘔吐(おうと)した形跡があり、傍らには「ハートレッド」「ゾンビハート」「トリップ」と書かれたポリ袋入りの危険ドラッグと、吸引用とみられる筒状に丸めたアルミホイルが見つかった。関係者によると、この男性は昨年3月、危険ドラッグを使用後に乗用車でひき逃げ事件を起こしていた。

自傷行為に走ることもある。8月1日には横浜市内のマンションで、男性(52)が施錠された部屋で首を切って死亡しているのが発見され、室内からは包丁のほか、植物の葉が見つかっている。

このほか、薬事法などの薬物法令違反や、住居侵入や暴行事件などでの摘発、車で暴走するなどの事故も後を絶たない。

県警は「危険ドラッグは含有成分が分からず、死に至ることもあり得る。規制条例の制定に向けた動きもあり、県などの関係機関と連携しながら取り締まりを強化していく」としている。

◆県、対策や独自条例も

危険ドラッグの使用が原因とみられる事件や事故が相次いでいることを受け、県は県警や関東信越厚生局麻薬取締部と連携して対策を強化している。さらに撲滅を目指し、新たな独自の規制条例の制定も準備しており、取り締まりや流通実態の把握を強化していく構えだ。

県薬務課によると、県内には現在、8店舗のほか、インターネット販売業者が4店舗ある。県は店への指導強化のため、県警などと合同で店舗への立ち入り検査を推進。今年4~8月までに31回実施し、このうち20回以上は県警や麻薬取締局と合同で行った。

店頭商品の買い上げ検査のスピード化も図る方針だ。4800万円をかけ県衛生研究所(茅ケ崎市)の検査機器2台を更新し、検体数も年間30検体から60検体に倍増させる。

増加傾向にある危険ドラッグの依存症患者への対応にも力を入れている。アルコール・薬物依存症の治療を専門で行う県立精神医療センターせりがや病院(横浜市港南区)が治療に当たっている。

県県立病院課によると、危険ドラッグを原因とする外来患者は今年4~8月の5カ月ですでに75人に上り、昨年度1年間の112人を上回るペース。医師や看護師の多職種チームで依存症から回復するためのリハビリ治療を行い、本人への治療の動機付けのほか、家族にも患者対応の仕方などを指導している。

こうした中、県は危険ドラッグの撲滅を目指し、条例による規制を準備。開会中の県議会に示した「県薬物濫用(らんよう)防止に関する条例」の素案では、国が未指定の薬物について、知事が独自に指定して販売や所持を禁止するほか、県警への販売店舗立ち入り調査権の付与、緊急時の店への販売中止勧告などを盛り込む。県薬務課は「条例が施行された場合は、店への販売中止勧告などを適切に実施し、危険ドラッグ撲滅へさらに力を入れたい」としている。

【神奈川新聞】


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