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統一地方選まであと半年 選挙の課題どうする

政治行政 神奈川新聞  2014年10月12日 11:00

写真右は浅利圭一郎さん、左は佐藤淳さん
写真右は浅利圭一郎さん、左は佐藤淳さん

2015年4月に実施される統一地方選まであと半年となった。現職や新人候補予定者が駅前に立ち始めたり、ツイッターやフェイスブックで発信を始めたりと選挙ムードは高まりつつある。選挙をめぐる二つの大きな問題、1票の格差と投票率の低迷について、詳しい2人に聞いた。

■1票の格差 フリージャーナリスト・浅利圭一郎さん

1票の格差の不条理を語るうち、口調は熱を帯びてゆく。

「憲法で保障された民主主義の根本がおかしいまま放置され続けている。現実に行われているのは“少数決”だ」

フリージャーナリストの浅利圭一郎さんは10月、著書「1人1票からはじめる民主主義 決めごとのきまりゴト」(旬報社)を発刊した。問い掛けたいのは「正当な多数決が行われていない名ばかりの民主主義がまかり通る日本の現実」だ。

1票の格差を問う訴訟が全国で行われ、「違憲状態」とする判決が出されているが、「過去の判決では2倍以内ならいい、5倍を超えたら駄目だとされているが、なぜそういう話になるのか。1人1票の価値を実現しなければ、民主主義の入り口にすら立てない。例えば『あなたの1票は0・2票の価値しかないんですよ』と言われれば、この不条理に気付くはずだ」。

「田舎の意見を届けるために一定の格差は仕方ない」「是正すれば都市の声ばかりが重視される」といった反論もある。「だが、実態をまったく反映していない」。例に挙げるのは2013年参院選挙。鳥取県選挙区を「1票」とした場合、北海道は「0・21票」の価値しかなかった。東京は「0・22票」、神奈川は「0・26票」だった。

「都市部対地方という話ではないことは一目瞭然。こんな状態を放置しているのは怠慢でしかない」

だが、それは国会議員の責任だとも思わない。「僕らが国民的運動にしてこなかったからだ」

格差はどうすれば是正できるか。是正したら社会はどう変わるのか。

「人口比例で選挙区割りにすれば解決する。結果的に3県で2人の国会議員を選出したり、A県B町だけが隣の県の選挙区に入るということになる可能性はある」。一方でメリットを強調する。「是正されれば政治に緊張感が生まれるだろう。議員一人一人が国民一人一人に対し極めて真剣に向き合う必要が出てくる」

さらに「1票の格差と投票率の問題は基本的に別の問題だが、格差が是正されれば投票率を引き上げる要因になる」とみる。「自分一人が選挙に行っても意味はない」という思いに変化が出てくるからだ。つまるところ、と浅利さんは指摘する。「政治家は国民の鏡。民主主義の入り口にさえ立っていないことにまず気付きたい」

◇あさり・けいいちろう 法政大文学部卒業後、神戸新聞社入社、販売局で勤務。同社退社後、コミュニティーFMでパーソナリティを担当。その後、出版社で雑誌編集・記者などを経て2007年にフリー。39歳。

◆1票の格差 住んでいる場所によって1票の価値が異なるという問題。2013年参院選の場合、鳥取県選挙区を1票とした場合、相対的に最も価値が低くなったのは北海道の0・21票。神奈川県は0・26票だった。国政選挙翌日には各地で「議員定数不均衡訴訟」が提起され、高裁では「違憲・違法」「違憲・無効」とする判決も出ている。だが、最高裁は「違憲状態」としつつ、実施された選挙を「有効」と結論付ける判決を出している。

■投票率低下 青森中央学院大講師・佐藤淳さん

投票率の低落傾向に一石を投じようと取り組み始めて7年になる。「放っておけば下がり続け、あるところで横ばいになるだろう。だが人口減と同じで勝手に上昇はしない」。青森中央学院大講師、佐藤淳さんの危機感は強い。

昨年10月、地元の青森県八戸市の市長選は投票率28・48%で過去最低を記録した。選挙へ行かない世代が親となり、その子どもである若者も投票所から遠ざかる負の連鎖にある。

投票率を決する要素は大きく四つあると分析する。

一つ目は選挙戦が競っているかどうか。二つ目は候補者の政策・主張が対立しているか。対立構造や分かりやすい争点があることで、有権者は1票について重みを感じ、投票へ行こうという動機になるという。

三つ目は投票行動の負担だ。期日前投票所の数や場所など利便性が高まることで投票率が上がる。最後は長期的利益。暮らしと政治が密接に関係しているという有権者意識だという。

特に有権者や自治体側で取り組むことができ、効果的なのが投票の負担と長期的利益の二つだという。

「松山市の選挙管理委員会が13年参院選で地元大学のキャンパスに期日前投票所を設けたところ、20代前半の投票率が3ポイント近く上がった。負担を軽減することで効果があった事例だ」

投票率が上がると、社会はどう変化するだろうか。

「まず多様な主張が政治に反映されるようになるだろう。逆に投票率低迷が続けば、少数の意見だけが過剰に政策に反映され加速度的に、一部の主張による政治が行われるようになる。これは政治へのチェック機能が働かなくなる危険性をはらんでいる」

それ以上に注目すべきは地域の力になりうるという点だと強調する。

「地元の選挙で高い投票率を維持できるということは、市民が地元の政治に高い関心を抱いているということ。今後の人口減を踏まえると、地域の底力は競争力になる。自治体はもっと危機感をもって投票率向上に取り組むべきだろう」

26日投開票の青森市議選の立候補予定者を動画撮影し、インターネットで公開する試みを展開する。「私の支持者はネットを見ない」と協力を断った立候補予定者がいた。「動画を見れば人となりや考えがすぐに分かる。誰のために市議をやっているのか。投票率が上がればこうした市議が当選し続ける状況は変わっていく」

◇さとう・あつし 早稲田大商学部卒業後、さくら銀行入行。日本社会事業大学専門職大学院福祉マネジメント、早稲田大大学院公共経営研究科修了。同大マニフェスト研究所招聘(しょうへい)研究員ほか。46歳。

◆投票率の低迷 有権者数に占める投票者数の割合(投票率)は満20歳以上の男女に選挙権が認められた1945年以来低落傾向が続く。衆院選は96年の59・62%(比例代表)が最低。統一地方選はここ10年間、知事選、県議選、市町村長・議選の全国平均が40%台後半から50%台となっている。知事選のワーストは11年の埼玉県知事選で24・89%。前回の神奈川県知事選は45・24%(11年4月)、横浜市長選は29・05%(13年8月)だった。

【神奈川新聞】


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