1. ホーム
  2. 社会
  3. 神奈川県内発「9条に平和賞を」 受賞逃すも共感の輪

神奈川県内発「9条に平和賞を」 受賞逃すも共感の輪

社会 神奈川新聞  2014年10月11日 03:00

ノーベル平和賞受賞を逃しコメントを読み上げる石垣さん(左)と鷹巣さん=ユニコムプラザさがみはら
ノーベル平和賞受賞を逃しコメントを読み上げる石垣さん(左)と鷹巣さん=ユニコムプラザさがみはら

座間市の主婦が「憲法9条にノーベル平和賞を」と呼び掛けたのをきっかけにノーベル賞委員会に候補として受理され、世界から注目を集めた9条。受賞こそ逃したものの、運動の広がりに実行委員会メンバーは「注目を集めたことを励みに、世界の人々に広がっていく運動を続けていきたい」と力を込めた。

「マララさんに拍手と応援の声を贈りたい」。平和賞発表を受けて相模原市内で開いた記者会見、座間市の主婦鷹巣直美さん(37)は母親の優しい表情をしていた。受賞はならなかったが、落胆の色はなかった。

「どこの国の子どもも泣かなくていいように」。9条を世界に広めようとインターネットで署名集めを始めた。賛同者が一人また一人と増え、全国に広まっていった。

平和賞を目指す意義について「日本だけが戦争放棄で怖いという意見があるなら、他の国々も戦争で人を殺してまで決着をつけるのをやめようという最低限のルールを広げたい」と語った。

運動をする中で非難や中傷も多く受けた。「それは人それぞれに平和を望み、考えているからこそなのだと分かってきた。ならば、現状から一歩でも二歩でも皆で平和に近づくようになりたい」。運動は継続していく考えだ。

共同代表の石垣義昭さん(73)も「率直に言って、1年で実を結ぶとは思っていなかった。受賞には至らなかったが、9条は世界の注目を集めた」と話す。

もう一人の共同代表、落合正行さん(81)は「署名運動の輪も想像以上に広がり、民主主義を広げる運動になっているという実感を持つようになった」。集まった署名は44万を超えた。安倍内閣による集団的自衛権の行使容認を踏まえ、「国民が9条を守りきったときに平和賞に値すると思う」と強調した。

◆「戦争の記憶刻んでこそ」崔錫允さん

「かつては戦争の罪を忘れまいとする日本人が多くいた。今はどうか。選ばれなかった理由はそこにあるのではないか」。相模原市南区の宣教師、崔錫允(チョエソクユン)さん(63)は静かな語り口で言った。「9条に平和賞を」と呼び掛ける署名サイトの韓国語版の翻訳を手掛け、受賞を望む一人であることに違いはなかった。

朝鮮戦争のさなかに生まれた。栄養失調で小学5年生の時、視力を失った。25歳で来日し、盲学校に通った後、教師を志して進んだ町田市の大学で9条を知った。「戦争の“犠牲者”として9条がうたう戦争放棄の価値を強く感じた」

崔さんは今、首をかしげる。7月1日、安倍内閣は集団的自衛権の行使容認を閣議決定した。

「北朝鮮と望まない対立が続く韓国人の一人として、戦争も軍隊も縁遠い世界で生きられる日本国民がどんなに恵まれているかと思ってきた。なのに、政治は戦争のできる国へと進んでいる」

運動の発端となった鷹巣直美さんとは教会で知り合った。翻訳を引き受けたのは「外側の反応を知れば、日本の人々が9条の重みを知ることができると思ったから」。

やはり一歩外側の視点に立つからこそ見えてくるものがある。「神奈川には在日米軍基地も多く、日本がいかに軍隊に守られているかもよく知っている。被爆国なのに横須賀に原子力空母さえ出入りしている。今の日本の実態は真の平和国家ではない。それを脱した時、世界から喜んで平和賞を贈られるはずだ」

【神奈川新聞】


シェアする