1. ホーム
  2. 時代の正体
  3. 時代の正体〈34〉慰安婦問題

日韓学生アンケート(下)「強制関与」が多数
時代の正体〈34〉慰安婦問題

時代の正体 神奈川新聞  2014年10月07日 12:49

◇「正しい情報を学びたい」

従軍慰安婦の調査研究に取り組む市民団体「『戦争と女性への暴力』リサーチ・アクションセンター」が日韓の大学生約4千人を対象に行った意識調査。慰安婦が集められた状況についての認識を日本の学生に聞いたところ、「日本軍が拉致・誘拐した」との回答が67.5%に上った。自由記述欄には「もっと詳しく知りたい」という記載が多く、学ぶ機会が求められている実態も明らかになった。

「慰安婦の女性たちはどのように集められたと思うか」という質問に対し、日本の学生で最も多かった回答は「日本軍が拉致・誘拐した」で67・5%。「日本軍の命令で民間業者たちが人身売買や詐欺などの手段で集めた」が53・7%で次いで多かった。慰安婦は日本軍が関与し、強制的に集められたと考える学生が多数を占めた。

「借金の肩代わりとして、親に売られた」が43・6%、「公(こう)娼(しょう)であり、自ら募集に応じた」は36・5%、「民間業者が日本軍とは関係なく、女性たちを集めた」は21・5%だった。

韓国での調査では、「日本軍の命令で民間業者が人身売買や詐欺などの手段で集めた」が73・0%、「日本軍が拉致・誘拐した」は49・8%だった。

慰安所での境遇については、「1日何十人もの相手をさせられることがあった」という回答が日韓ともに最も多く、日本は72・7%、韓国は90・9%。「日本軍の管理下で自由は厳しく制限されていた」(日本63・3%、韓国88・5%)「監禁され、逃亡することができなかった」(日本61・2%、韓国88・9%)と答えた学生も多かった。

一方で、「ほとんどの慰安婦はお金をもらい、かなりもうけた」(日本18・2%、韓国0・9%)「自由に外出したり、やめたりできた」(日本9・8%、韓国3・3%)という回答は、日韓ともに少なかった。

慰安婦問題の情報源として、日本の回答で最も多かったのはテレビで59・6%。韓国では、インターネットが最も多く67・1%だった。日本の大学生の自由記述欄には「知る機会がなく、何が事実か分からない」「正しい情報を学びたい」という記載も多く見られた。

◇学生の思いに応えよ

調査を実施した「戦争と女性への暴力」リサーチ・アクションセンター共同代表の西野瑠美子さんは、慰安婦問題を学ぶ機会の重要性を指摘する。

『回答から、日本の多くの学生が拉致や誘拐という手段で被害者が集められたと考えていることが分かった。「慰安婦は売春婦だ」「公娼だった」「性奴隷ではない」という言説がインターネット上にあふれ、女性たちが集められた際の強制性が否定されている。国会でも強制性を否定する政治家の発言が相次ぐ社会状況でも、こうした言説に同調していない。

自由記述欄には、さまざまな意見が書かれ、学生の本音をうかがい知ることができる。印象的だったのは、「もっと詳しく知りたい」という回答が多かったことだ。

学生の多くが高校生のときに使った日本史や世界史の教科書には、慰安婦問題が丁寧に記述されていた。それでも、学ぶ機会を求めている。

こうした学生の姿勢とは異なり、安倍政権は女性の人権を侵害した慰安婦問題に向き合おうとしていない。2007年の第1次政権では強制連行を否定する閣議決定を行っている。

慰安婦を強制連行したとした「吉田証言」を朝日新聞が虚偽と判断したことで、強制連行自体が虚偽だったかのような言説が一部メディアで繰り返されているが、もともと吉田証言は河野談話でも歴史研究でも根拠として採用されてきたわけではない。

それなのに、慰安婦の記述がある高校の日本史教科書への攻撃が始まっており、教育現場の萎縮も懸念される。授業で取り上げられなくなれば、若い世代が学ぶ機会を狭めることになる。事実をもっと知りたいという学生の思いに応えることは日本社会の責務だ』

◇強制性認識が多数

慰安婦を集める際に強制性があったと認識している学生が多数派だったことに立教大の小野沢あかね教授は市民や研究者の成果を強調する。

『当事者の訴えを含めた発掘活動で明らかになってきた被害の実態についての情報が広がり、それが学生の認識に定着しつつあるといえる。

一方で「公娼であり、自ら募集に応じた」「ほとんどはお金をもらい、かなりもうけた」と回答する学生が相当数いた。これは、被害者に謝罪や補償をしなくてよいという認識を形成する有力な要素になっている。

慰安所は日本軍が設置し、意志に反して女性を集め、継続して性暴力を振るった。これは、当時でもやってはいけないことで、さまざまな法規に違反する。被害者がお金をもらっていたとしても、法に反することは変わらない。このことは、しっかり伝えていかなければならない』

◆調査の方法

日本の大学生3007人と韓国の大学生1126人が対象。市民団体「戦争と女性への暴力」リサーチ・アクションセンターが日韓の大学教員らを通じて、調査用紙を配布し、回収する方法で行われた。日本国内は2013年7月から12月まで延べ122大学で実施。韓国では2013年3、4月に14大学で実施した。

【神奈川新聞】


シェアする