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歴史の反省国境超え 靖国参拝を批判した海老名・中垣さんの作品が独の美術展へ

社会 神奈川新聞  2014年08月29日 03:00

ドイツにあるムラタさん(左)のギャラリーに出品予定の作品を説明する中垣さん =海老名市のアトリエ
ドイツにあるムラタさん(左)のギャラリーに出品予定の作品を説明する中垣さん =海老名市のアトリエ

安倍晋三首相らの靖国神社参拝を批判し、会場の東京都美術館(台東区)から撤去を求められた造形作品「時代(とき)の肖像」が今秋、ドイツに渡る。歴史の反省を訴える作者・中垣克久さん(70)=海老名市=の作品に共感したベルリン在住の日系人が加害の歴史と向き合い続ける同国で個展開催を提案した。

2月の展示会で問題視されたのは「戦争で他国も自国も傷つけた国」「靖国神社参拝の愚を認め、現政権の右傾化を阻止」と書かれた紙。古墳を模したドーム型の作品に貼られていたもので、「特定の政党・宗教を支持、反対する場合は使用させないことができる」という同美術館の規定に触れるとして、中垣さんは撤去を求められた。

個展開催を持ち掛けたのはベルリンでギャラリーを経営するムラタ・マナビさん(42)。インターネットで騒動を知り、「政治的でない、主張がないアートなどあり得ない。撤去を求めるなど、ドイツでは考えられない」と話す。

第2次世界大戦後、東西分裂下の旧東ドイツで育った。経済も豊かとはいえなかった。日本人の父親がいるムラタさんは外国人排外を掲げる集団に脅迫を受けた経験もあった。「戦争のみでなく、戦後の苦しみも身近にあり続けた」

ユダヤ人迫害を起こしたナチス・ドイツへの深い反省もある。個展を持ちかけたのは「戦争の反省や贖罪(しょくざい)の思いが込められた中垣さんの作品はドイツでも見てもらう意義が大きいと考えたから」という。

個展会場に予定する自身のギャラリー「ムラタ&フレンズギャラリー」が入る建物は戦時中、ブラシ工場に使われ、そこには複数のユダヤ人家族をかくまっていた部屋もあったという。「そうしたユダヤの人々の歴史を伝える展示も残されており、平和の価値を伝えるのに中垣さんの作品はふさわしい展示になる」

一方で、ムラタさんは今、集団的自衛権の行使容認や在日コリアンへのヘイトスピーチ(憎悪表現)に「平和で豊かな憧れの国」だった日本の「平和の後退」を見る。「ベルリンにはさまざまな世界の人々が暮らし、留学や観光でも多く訪れる。作品への世界の反応を通じ、日本の人々が日本社会のありようを見つめ直す契機になればいい」と話している。

10月15日から来年1月31日までの個展「IDIOT JAPONICA」では撤去騒動のあった作品のほか、中垣さんの最新作も複数展示される。

【神奈川新聞】


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