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原発ゼロ1年へ  ネット上でメッセージ掲げる市民たち

社会 神奈川新聞  2014年08月17日 10:03

カウントダウン運動を始めたケント・ダムさん
カウントダウン運動を始めたケント・ダムさん

国内で稼働する原発がゼロとなって間もなく丸1年を迎える。その「祝うべき日」に向け、インターネット上で「原発ゼロ○○日目」というメッセージボードを掲げ、カウントダウンをしている人たちが県内にいる。「原発なしで1年もやってこられたということを知ってもらい、もう一度、原発の是非についてみんなで考えたい」。県内発のムーブメントはじわり広がりを見せている。

〈原発ゼロ331日目 健康な命を繋(つな)いでいきたい〉

大和市の主婦(44)は7歳の息子をひざに抱き、ボードにそう書き込んだ。ネットの交流サイト、フェイスブックに写真を投稿したのは11日のことだ。

「原発をめぐってはいろんな立場の人がいて、いろんな考え方がある。でもこの1年、原発ゼロでやってこられた。それはすごいこと」

口ぶりに実感がこもるのは、迷い続けた日々があったから。2011年3月の東京電力福島第1原発の事故後、放射能に関するさまざまな情報に触れ、1児の母として不安を抱いてきた。県内でも上昇した放射線量の体への影響は。食べ物は安全か。周囲に相談できる相手はいなかった。

市民主催の勉強会に足を運び、知識を得ていった。あるとき、福島県から講演に来ていた女性の話を聞く機会があった。

「その女性は『放射性物質濃度を測っても、作物によってはまったく数値が出ないものもある。すべて福島県産だからと避けられるのは悲しい』と打ち明けた。原発の関連企業で働いている人たちだっている。難しい問題だと思った」

原発はいらないと考えるようになっていたが、知るほどに気持ちは複雑になっていった。

それでも、原発について考えが及ばなかった以前の自分に戻ろうとは思わない。「知るということは別の視点で考えられるようになるということ」。ネットに投稿することに「私たち一人一人は本当に小さな力。でもたくさん集まって一つになれば、原発のない未来を子どもたちに残せるかもしれない」との願いを込める。

原発事故後、唯一再稼働していた関西電力大飯原発が昨年9月15日に定期検査に入り、その後、再び動きだした原発はない。初めて迎えた原発ゼロの夏。それでも電力は滞りなく供給され続けている。各電力会社は火力発電を増やしてカバーしているが、市民や企業の節電意識の浸透も見逃せない。

〈原発ゼロ326日目 ありがとうがんばろう〉

町田市在住で整体師の男性(41)は、そう記したカウントダウン写真を投稿した。

「自分自身、原発をテーマにした映画を見て初めて関心を持った。それから数々の事実を知ったが、それは決して隠されていたわけではなく、普通に報道されていた」

知るか知らないか。それが人々の行動を左右する。いま、その起点の一つになりたいという思いがある。

カウントダウン運動を1人で始めたデンマーク国籍のケント・ダムさん(42)の思いはまさに問い掛けにあった。

「要は電力は余っているということ。安くて安全と言われていた原発だが、使用済み燃料の管理や処理の費用も含めてコスト計算すれば、決して安くなんかない。原発ゼロ1年という節目で、原発が必要なのかどうかもう一度みんなで考えたいと思った」

藤沢市でサーフショップを経営する。原発事故後、海が放射性物質で汚染されていないか不安になり、地元自治体に水質検査を求めたことがきっかけで関心を深めていった。

「当時は廃業覚悟で水質検査を求めた。同業者から『もし検出されたら、どうするんだ』と暗にくぎを刺されたが」

今月1日に思い立ち、フェイスブックを毎日更新し始めた。

〈原発ゼロ335日目 原発ゼロ1年まであと30日!〉

15日には「1か月切ったゼ!」「このままずっとゼロで行こう!」とコメントを添えた。

思い思いに自分のフェイスブックやツイッターで写真を投稿するメンバーは当初数人だったが、残すところ1カ月となり、参加者は増えつつある。投稿をフェイスブックで紹介(シェア)する動きも広がってきた。

「拡散」に一役買ったのが藤沢市の飲食店「へっころ谷」を経営する古屋賢悟さん(44)。食材にこだわったほうとうが自慢の店で、3・11後はデモやお祭りを催し、原発問題について発信を続けてきた。店の常連客や脱原発運動でつながった人たちに投稿への参加を呼び掛ける。

各種世論調査で上回る脱原発の声をよそに安倍政権は原発再稼働に向け、着々と動きを進める。鹿児島にある九州電力川内原発はこの冬にも再稼働する可能性がある。

「原発なしでは生活が成り立たないと思っている人はまだ数多い」。震災から3年半がたち風化も感じる古屋さんだが、一方でこの1年を振り返り、「市民が何もしなければとっくに再稼働していただろう。デモなどを通じ、声を上げ活動してきたことの結果。脱原発を諦めていた人も、声を上げることの意味をもう一度感じてもらいたい」とネットを通じたムーブメントの広がりに期待を込める。

原発ゼロ1年を迎える9月14日には、藤沢駅周辺でデモを企画している。

「さまざまな努力があって丸1年を迎えられた。デモではそのことをお祝いしたい。そして2周年、3周年につなげていこう。そう呼び掛けたい」

◆原発ゼロ1年 2013年9月15日に関西電力大飯原発4号機(福井県おおい町)が定期検査に入り、国内で稼働している原発はゼロに。現在、再稼働に最も近いのは鹿児島県薩摩川内市の九州電力川内原発1、2号機。今年7月16日に原子力規制委員会の定例会合で、再稼働の前提となる審査の合格証の原案となる審査書案を了承、事実上の審査合格となった。13年7月に施行された規制基準に初めて適合した原発となる。今後審査を終了し、地元自治体の同意を得た上で早ければ今冬にも再稼働する見通しとされる。規制委は現在、12原発19基を再稼働に向け審査している。新しい規制基準では、炉心溶融や放射性物質の大量放出といった過酷事故への対策のほか地震・津波対策が盛り込まれている。

【神奈川新聞】


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