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【社説】酷暑対策 郊外の「ゆとり」活用を

社会 神奈川新聞  2014年08月12日 12:18

酷暑である。百十数年に及ぶ日本の統計史上、最も暑い夏は2010年だったが、体感としては今夏も匹敵しよう。

関東甲信には、連日のように高温注意情報が発表されている。横浜が35度以上の猛暑日となった日はまだ少なく、内陸の前橋や熊谷、甲府などと比べればしのぎやすいとはいえ、最低気温が25度以上の熱帯夜が8月に入り相次ぐ。日々の熱中症対策はもちろん欠かせないが、なぜここまで暑いのかに思いを致し、生活や住まい方を見直す一歩としたい。

10年夏の猛暑について気象庁は、偏西風が平年より北側を吹いたことで日本付近が太平洋高気圧に覆われた上、春まで続いたエルニーニョ現象や温暖化の影響などが重なったためと分析。とりわけ建物の密度が高く緑や水辺の少ない都市部では、郊外よりも気温が高くなるヒートアイランド現象も顕著だった。

近年目立つ同現象の要因にこそ、暮らし再考のヒントがある。草地や森林、水辺が減少した代わりに地表がアスファルトやコンクリートで覆われるようになり、大気を加熱する力が大きくなった。高層化したビルは太陽光を吸収するとともに風速を弱める作用があり、エアコンや車などからの人工的な排熱も都市の高温化の一因となっている。

技術の進歩と土地利用の拡大で私たちの生活空間は広がったものの、夏場の生活環境は必ずしも改善していない。東京の長期的な気温変化に関する分析では、熱帯夜は10年当たりで3・9日増え、最高気温が35度以上の猛暑日も0・8日多くなっている。厳しい夏は人為的な側面が大きいと受け止めざるを得ない。

その対策として、壁面や屋上の緑化、打ち水、保水性のある道路舗装などが提唱されているが、いずれも効果は限定的だ。将来を見据え、地域や居住のありようを根本的に見直す議論も始めるべきだろう。

例えば郊外の団地は、敷地に豊富な緑が気温の上昇を和らげ、夏場も過ごしやすいとの研究成果がある。そうした利点も含め、ゆとりのある生活の場として魅力を高める工夫を重ねれば、都心の過密を防ぎ、人口減や高齢化が進む郊外に活力をもたらす効果も期待できよう。

熱中症による死者は毎年千人前後に上る。まちづくりの視点で対策を考えなければならないほど、夏は危険になっているのである。

【神奈川新聞】


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