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こだわりの和総菜を作り続ける佃浅商店の本社工場=東京都大田区
こだわりの和総菜を作り続ける佃浅商店の本社工場=東京都大田区

神奈川とともに国家戦略特区に指定された東京都大田区。羽田空港を絡めた国際ビジネス拠点としての将来が注目される多摩川の向こう側の企業群を訪ね歩くと、どの業界も想像以上にパワーにあふれていた。神奈川への視線も熱く、川を挟んだ連携に期待が高まっている。

■神奈川の市場で

大田区は、町工場が集積する日本のものづくりの中心地だ。近年は、羽田空港の国際化や、国家戦略特区ばかりが注目されるが、昔から神奈川の市場で活躍してきた中小企業は数多い。

「ここいらにもつくだ煮屋は多かったが、全部なくなってしまった」。創業130年の和総菜「佃浅(つくあさ)商店」(大田区大森東)の6代目、杉原春雄社長(66)は、埋め立て前は海に面していたという大森の本社工場で毎日製造する総菜に、こだわってきた。

今秋、リニューアルされる横浜駅西口地下街に「おかず本舗 佃浅」を出店する。都内の百貨店などに約20店を展開する老舗にとって、横浜は過去、何度か挑戦しながら撤退したマーケットだが、「横浜駅の集客力は全然違う」と新たな旗艦店舗に育てる考えだ。

住宅建材卸売りの「三浦屋」(同区大森西)は社員71人のうち66人が神奈川県民で、年商28億円の大半を県内で稼ぐ。小売店や工務店と組み、雑居ビルの窓の改修など大手では採算が合わない事業に特化しているのが強みだ。

戦後に「246作戦」と称し、県内全域に販売網を広げてきた。県を東西に走る国道246号にちなんだのは言うまでもない。5代目の内川義雄社長(43)は「大田区を愛しているが、社員は神奈川県民で」と、今後も県内市場で戦う決意を示す。

音楽、映像、ゲームソフトなどのパッケージ印刷で業界トップの「金羊社」(同区鵜の木)。浅野健社長(65)の口から何度も出た言葉は「ポストものづくり」だった。

近年は印刷業にとどまらず、小田原のFM局での音楽番組制作や、展示会プロデュース、商品プロモーションなど新事業に打って出ている。横浜市の「待機児童ゼロ」も新たなビジネスチャンスととらえ、出産後の女性の社会復帰支援にも乗り出すという。

■羽田から世界へ

羽田エリアは3年前、グローバル企業を誘致する「アジアヘッドクォーター特区」に指定され、大田区は海外企業と中小企業のマッチングなどで、ものづくり産業の再生を進めている。国家戦略特区にも選ばれたことで、こうした動きはさらに加速し、県内との結びつきが強い企業にもチャンスが広がるはずだ。

電源装置製造販売の「YAMABISHI」(同区大森北)は東日本大震災後に需要が急伸する避難所向け太陽光パネル用の蓄電システムを開発。普及に伴う急成長が期待され、設立60年を前に株式上場も現実味を帯びてきた。

海老名市に開発製造拠点があり、技術を支えるのは県内の豊富な理系人材だ。蓮池一憲CEO(46)は「俗に言うガラパゴス。非効率かもしれない」と笑いながら、独自開発にこだわったコア技術に胸を張る。

蓮池CEOは「いずれは太陽光も頭打ち。エネルギーの地産地消時代が来る」と、下水道網を利用した小水力発電向けの装置開発も進める。アジア諸国でも環境意識が高まって機が熟せば、「ハイエンド製品(最高級品)も売れるようになる。さあ海外というころに、特区や羽田が準備できていれば」と構想を温める。

「10年前から『羽田に滑走路が1本増えたら、地元がこうなる』とか言われたことが、ことごとく期待外れだった。今度こそ、という気持ちがある」

JR大森駅前に本社を構え、横浜港にも倉庫群を持つ物流会社「ダイワコーポレーション」(品川区南大井)の曽根和光社長(46)。全国組織の倉庫業青年経営者協議会会長も務める立場で、羽田エリアの各プロジェクトに「早く物流系も参画し、絡んでいかなければ」と危機感を抱く。

アマゾン、楽天に代表されるネット通販の進化で、物流のあり方が大きく変わった。圏央道周辺に巨大施設の集積が進む県央、県西部への進出も視野に入る。

ただ、空港や港湾関連の開発は、大企業に独占されてきた苦い思いがある。羽田では、大田区-川崎市間の連絡道路をめぐる綱引きも長く続いた。国家戦略特区や東京五輪が開催される2020年を見据え、空港でも港湾でも、物流業界のエリアを越えた協力を切望する。

「(東京や神奈川が)こんな近い距離で、互いの利権を言うことが、海外から見たらナンセンス。戦うべきは世界で、中国や韓国の空港、港に勝つために垣根をなくしたい」

◇観光で川崎に注目 -東京商工会議所大田支部・浅野健会長

東京商工会議所大田支部の浅野健会長(金羊社社長)に、大田区と川崎市の連携のあり方を聞いた。

-大田区と川崎市との関係が変化してきた。

「子どものころは行っちゃいけない場所と言われ、互いに川の向こうだと思っていた。われわれの世代は都心を見て、気取って日比谷に行ったが、今の若い人は映画を見るなら川崎。昨年から始まった蒲田映画祭こそ、川崎のシネコンと一緒にやるべきだ」

-国家戦略特区が動きだそうとしている。

「大チャンスだ。川崎の研究開発と、大田区のものづくり企業の医工連携も始まり、互いに意識が高まっている。川崎市長が最初に表敬したのが大田区長だったことが象徴している」

-連携のイメージは。

「海外観光客という切り口。羽田に降りるリピーターは銀座や新宿に行きたいわけじゃない。大田区に滞留してほしいが、町工場と銭湯、池上本門寺の散策だけでは弱い。そこに、川崎大師や工場夜景をセットにしたら魅力が増す。屋形船で工場夜景を見て、銭湯に入って、蒲田のB級グルメで宴会をやったら楽しいだろう。川崎には朝鮮半島の方々のエリアもあり、安くておいしい焼き肉だってある」

-羽田をどう生かすか。

「特区のコンベンション施設でクールジャパンを見せるなら、アジアの富裕層向けに日本の安全な食物を売り込みたい。野菜プラントごと各国に売る拠点にすれば、ものづくりの大田区を示せる。海外で日本に対する興味を勝ち得ることで、インバウンド(訪日外国人旅行)が戻ってくる」

【神奈川新聞】


【1】和総菜「佃浅商店」【2】住宅建材卸売り「三浦屋」【3】パッケージ印刷「金羊社」【4】電源装置製造販売「YAMABISHI」【5】物流会社「ダイワコーポレーション」
【1】和総菜「佃浅商店」【2】住宅建材卸売り「三浦屋」【3】パッケージ印刷「金羊社」【4】電源装置製造販売「YAMABISHI」【5】物流会社「ダイワコーポレーション」

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