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手探り総合教育会議 県内自治体教委アンケート 首長との優先順位、未決6割超

社会 神奈川新聞  2014年08月04日 12:00

2015年4月に施行される改正地方教育行政法をめぐっては、教育委員会の政治的中立性が維持できるかにかかわるとして、全自治体に設置される総合教育会議の在り方が議論の焦点となった。首長と教育委員会が大綱などを協議するが、神奈川新聞社が県内各自治体に実施したアンケートでは首長、教育長のどちらの意見を優先させるかについて双方とも6割超が対応を決めかねていた。首長の政治介入の余地を残したまま、手探りの運用となりそうだ。

新制度では、首長は教育行政の目標や方針となる大綱を策定する。策定のため首長は総合教育会議を主宰し、教委と協議を行う。その際、教育事務の執行権限を持つ教育委員会と、予算を編成する首長のどちらの意見が最終的に優越するのかに注目が集まった。

文部科学省は「総合教育会議での協議を経ても教委と調整がついていない事項を首長が大綱に記載した場合、教委側にその事項を尊重する義務はない。事項を執行するかは教委が判断する」と説明。教委が同意しなくても首長は大綱に施策を反映できるが、教委に従う義務はないというあいまいな形になっている。

県と33市町村の首長、教育長、教育委員長を対象(湯河原町教育長は不在のため除く)に行ったアンケートでは「総合教育会議での協議の際、首長と教育長の間で調整がつかない場合は、教育長の立場では首長、首長の立場では教育長の意見を尊重するべきだ」の質問に、首長、教育長とも約6割にあたる22人が「どちらとも言えない」と回答した。

教育長の立場から、首長に従う義務はないとして「そう思わない」と答えたのは6人、首長として、首長の意見を尊重するべきとの回答も5人にとどまる。調整がつかない事態への判断は据え置く自治体が多数を占める。

文科省は「教科書採択や個別の教職員人事といった、特に政治的中立性が必要な事項は総合教育会議の議題に取り上げるべきではない」と自治体に通知しているが、首長の権限拡大に対する懸念は根強い。

「制度改正後も政治的中立性と教育行政の継続性は維持できる」の質問に「どちらとも言えない」と回答したのは、全体の48%の48人。「そう思う」は41人、「そう思わない」は12人だった。

「どちらとも言えない」とした理由は「首長の日常的な介入を防止する規定はあるが、実効性に懸念が残る」(加藤修平南足柄市長)、「市長と教委の信頼関係が厚く構築できていれば維持できるが、全国のいくつかの地域ではそうはいかない。大変危惧している」(赤坂雅裕茅ケ崎市教育委員長)などの声が上がる。

戸惑いは、教育長の任期を4年から3年に短縮することへの回答にも表れている。「教育長の任期を3年とすることは評価できる」の質問には首長、教育長、教育委員長ともに「どちらとも言えない」が最多の61人で、「そう思わない」21人、「そう思う」の19人と続いた。

一方、自治体として教育施策の方向性を明確にすることや、首長と教委の連携強化に対しては賛成が多数となった。

「教育行政の大綱には首長として重視する教育課題の施策を盛り込むべきだ」の質問に対しては、首長、教育長、教育委員長ともに「そう思う」が最多。特に首長では62%の21人が「そう思う」と回答した。

改正法で努力義務とされる総合教育会議の議事録作成、公開については、「作成、公開するべきだ」の質問に対して首長、教育長、教育委員長ともに8割以上が「そう思う」と回答。「首長と教委の連携強化は望ましい」には、首長の97%、教育長の85%、教育委員長の71%が「そう思う」と答えた。

「首長が新・教育長の任命・罷免を行うことは教育行政の責任明確化につながる」に対しては、「そう思う」が42人で「どちらとも言えない」の44人とほぼ同数。「そう思わない」が15人だった。

◆記者の視点 プロの力 今こそ発揮を=報道部・佐本真理

「国に、うまくやられた」。横浜市内のベテラン高校教諭は今春、地方教育行政法改正案の審議入りを苦々しげに、そう評した。

大津市中2いじめ自殺で露呈した教育委員会の閉鎖性、審議の形骸化を理由に国は教委制度改革を一気に進めた。かねて指摘されてきた制度の問題点を解決できずにいた失策を突かれ、政治や国が介入する根拠を与える結果となったことに、この教諭は悔しさをにじませたのだ。

教育委員会といえば、いじめが起きた際に会見で謝罪する姿をニュースで目にするくらいという多くの人が、大津の件を機に不信感を持つのも理解できる。しかし、アンケートで、国の介入がいじめ防止に効果があるとの回答が1割に満たないことからもうかがえるように、教育現場が抱える問題の根は、文部科学相が権限を持つか否かの次元にはない。

改革により今後は首長や議会、外部有識者などさまざまな立場からの意見が教育行政に取り入れられるようになる。アンケートの回答からは「連携は歓迎だが介入は困る」との思いが見える。ならば教委や学校は先手を打ち、「教育のプロ」としての力量をこれまで以上に広く地域に示してはどうか。

保護者や地域住民が「普段から子どもと接している学校が一番頼りになる」と日頃から実感していれば、自然と地域全体が政治的意図を持った介入に違和感を持つようになる。教委への不信が制度改革の呼び水となったのとは逆に、だ。

「子どものことは教育のプロに任せるべき」という民意が醸成されるよう、今こそ外部に学校や教委を開き、持てる力を明示してほしい。法改正はそのチャンスとして生かすべきだ。

■新教育委員会制度の骨子

(1)教育委員長と教育長を一本化し、新たな責任者として教育長が教育委員会を代表する。

(2)首長が直接教育長の任命、罷免を行う。

(3)教育長の任期は現行の4年から3年とする。

(4)首長は、首長と教育委員会で構成する総合教育会議を設け、招集する。

(5)首長は総合教育会議で、教育委員会と協議の上で教育振興施策の大綱を策定。重点施策や緊急事態への措置も協議する。

(6)いじめ自殺の再発防止など、緊急の必要があれば文部科学相が教育委員会に対応を指示できる。

【神奈川新聞】


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