1. ホーム
  2. 社会
  3. 「死に至る病」 人口減で非常事態宣言
若い女性の減少率が高い自治体
若い女性の減少率が高い自治体

全国知事会議が15日、佐賀県唐津市で2日間の日程で開幕、人口減少問題を「国家の基盤を危うくする重大な岐路」とした少子化非常事態宣言をまとめた。知事会議で宣言を取りまとめるのは異例。山田啓二会長(京都府知事)は「国の対策が大幅に講じられたことはなかった。日本は死に至る病にかかっている」と危機感を強調した。人口減少問題克服のため「地方創生本部」を立ち上げる国に、2015年度予算で十分な財源を確保するよう促す狙いがあるとみられる。

宣言は、人口流出が続けば近い将来に地方の多くが消滅、その流れが都市部にも波及すると指摘。若い世代の子育て環境を整備するため、国と地方が総力を挙げて思い切った政策を展開すべきだとした。

宣言と併せて、若い世代の長時間労働解消や非正規雇用の待遇改善、保育・教育費の負担軽減などの促進を国に求める提言もまとめた。

会議には42都道府県の知事が参加。人口減が自治体に及ぼす影響を試算した「日本創成会議」座長の増田寛也元総務相とも意見交換。増田氏は「少子化と東京一極集中の対策を同時に行う必要がある」と指摘。

横内正明山梨県知事は「政府が交付金を出して自治体の創意工夫に任せ、目標を達成したところにボーナスを与えてはどうか」と提案した。

このほか分権改革に関する国への提言もまとめた。農地を工場や宅地に転用する際、国と都道府県が協議する現行の仕組みは時間がかかると指摘。許可権限を市町村へ移譲すべきだとした。

また知事会内に2020年東京五輪・パラリンピックの推進本部を設置することで一致した。五輪成功に向け、都道府県間の連携を強化する。

◇都市への流出+少子化 自治体消滅の強い懸念

全国知事会が「少子化非常事態宣言」を打ち出した。背景には、このまま地方の人口が減り続ければ、多くの自治体が消滅しかねないとの強い懸念がある。これまでも企業誘致や市町村合併による財政基盤強化などの対策を講じてきたが、都市への流出と子どもの減少が止まる兆しは見えない。小さな市町村の自助努力は限界に近く、国の支援が必要と訴えている。

▽全国ワースト

標高千メートル程の山々に囲まれた群馬県南牧村。基幹産業の農業や林業は衰退気味で、後継者も十分ではない。1955年に約1万人いた村民は約2300人まで減少した。

日本創成会議の試算では、若年女性(20~30代)の減少率が89・9%と全国ワーストだった。2010年に99人いた若年女性が40年には10人になり、住民全部で約600人に落ち込むと計算された。

保育園や小中学校給食の無料化、移住希望者への空き家紹介…。村は子育て世代を呼び込むためさまざまな手を打ったが、過疎と少子高齢化は進む一方。働く場や産業が十分なかったからだ。

企業誘致に取り組んだものの、大型工場を建てられる平地が少ないことがネックとなり、実を結ばなかった。長谷川最定村長は「雇用を生み出すため、国の後押しを切に望んでいる」と話す。

▽60年で「半減」

約27万人の北海道函館市は、1980年の約32万人をピークに減少が続き、2040年には16万人になると推計された。観光地でホテルなどのサービス業が盛んだが、従業員の採用が景気に左右されやすいこともあり、「大学卒業を機に首都圏に行く若者が多い。政府は産業基盤を地方に広げてほしい」(市職員)。

人口約1600人の奈良県川上村は、村内に二つのダムが建造された影響もあり、1950年代から住民の転出が進んだ。高校が村内になく、以前は近隣の高校に通学していた生徒が多かったが、近年は母親と一緒に引っ越すケースが増えてきた。

日本創成会議の試算では、若年女性の減少率は89・0%で全国2位、40年にわずか8人となる。阪口和久総務課長は「そうならないための目標ができたと考えたい。村民と知恵を絞る」と力を込める。

▽国との連携を

非常事態宣言の当初案には「日本破滅に向けた壮大なシナリオができつつある」との表現で、人口減少が地方から全国に波及すると強調した部分があった。舛添要一東京都知事の「言い過ぎではないか」との指摘で削除されたが、強い文言で政府に対応を迫ろうとする意気込みは感じられた。

会合では「法人税を東京よりも低くして、企業を地方に誘導していくべきだ」(福井)、「県外の大学に行く高校生が多い。地元の大学の立て直しが急務だ」(香川)といったアイデアが示され、意見交換は3時間近くに及んだ。

政府は、人口減少を克服するために「地方創生本部」を立ち上げる。各省の地域活性化事業を統合する司令塔として期待する声が多い一方、鈴木英敬三重県知事は「政府の地方対策は一過性に終わるものもあった。真正面から取り組んでほしい」と注文を付けた。

創成会議座長の増田寛也元総務相は「地域の特色を対策にどうつなげるか。地方と話し合うルートがないと、創生本部はうまくいかない」と、国と地方の連携が重要だと強調した。

【共同通信】


シェアする