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市制90年 川崎今昔記〈6〉医薬品開発、水素供給…臨海部から世界へ発信

社会 神奈川新聞  2014年07月08日 03:00

羽田空港(手前)から多摩川を挟み広がる川崎市の臨海部(川崎市提供)
羽田空港(手前)から多摩川を挟み広がる川崎市の臨海部(川崎市提供)

「羽田空港を中心にした一体的なまちづくりが進む。川崎だけでなく東京圏として、大切なインフラで非常に意義深い。川崎市も主体的に汗をかきたい」

5月下旬、川崎市の福田紀彦市長が手放しで喜ぶニュースが飛び込んできた。川崎市や県などが長年要望してきた、多摩川を挟んだ羽田空港側と川崎側を結ぶ「羽田連絡道路」の整備方針を政府が示したのだ。国家戦略特区に区域指定されている京浜臨海部の国際戦略拠点の形成促進へ、追い風が吹いている。

■戦略特区に指定

京浜工業地帯の中核として日本の産業を支えてきた川崎も、産業構造の転換や経済活動のグローバル化による生産機能の移転などで既存産業の空洞化を招いた。連絡道路が掛かる予定の羽田空港対岸の川崎区殿町3丁目地区(通称キングスカイフロント)も、もともとは自動車と石油の工場が軒を連ねていた。

市は2008年にこの約40ヘクタールの広大な空き地を、高度な技術を持つ中小企業の集積と羽田空港至近の地理的条件を生かしたライフイノベーション分野の新産業創出拠点として位置付けた。11年には国際戦略総合特区に指定。今では土地の約7割の利用が決まり、「順調に進んでいる。進出機関が連携して高付加価値なものを生み出していく環境をこれからも整えたい」と市臨海部国際戦略室。複数の大学、企業が協力し、ナノ技術を使ったがん治療の革新的な医薬品や医療機器の開発・製造を目指している。

世界標準の実験動物を提供し、医薬品開発などに貢献している実験動物中央研究所(実中研)は11年にいち早く開所。野村龍太理事長(60)は「基礎研究だけでなく、出口(製品開発)がないといけない。世界標準のシステムをここ(殿町)からつくりたい。ここに来る人間はそういう気概を持っている」と力を込める。

■水素供給の拠点

川崎の京浜臨海部ではもう一つ、世界を大きく変える可能性を秘めたプロジェクトが進む。燃やしても二酸化炭素を排出しないクリーンエネルギー・水素の供給拠点を構築する計画だ。

13年9月、水素を常温・常圧の液体で輸送・貯蔵する技術を開発した千代田化工建設と川崎市が共同で国家戦略特区に提案。海外から運び込まれた水素を臨海部の工場などへ供給する仕組みを整える。世界初の商用水素発電所も建設する。

「水素エネルギーは温暖化に向かう将来の地球の安全を保障する」。その可能性を高く評価するのは、横浜国立大グリーン水素研究センターの太田健一郎センター長(69)。川崎の計画にも「水素の一大消費地としてニーズがあり、基地ができればそこを中心に広がる。仕組みが確立すれば『川崎発』として世界に発信できる」と期待を寄せる。

「川崎を世界に発信するショールームにする」。市関係者はこうしたせりふをよく口にする。これからの日本をけん引する新産業を産み育てられるか。産業都市・川崎市が背負う役割は、変わらず大きい。

【神奈川新聞】


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