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市制90年 川崎今昔記〈3〉多摩丘陵が高級住宅街に

社会 神奈川新聞  2014年07月03日 13:00

東急田園都市線の開通を目前に控え開発が進む鷺沼駅近く =1966年3月
東急田園都市線の開通を目前に控え開発が進む鷺沼駅近く =1966年3月

多摩丘陵を切り開くブルドーザーが、ごう音を立てて行き交う。住宅造成中の“はげ山”が連なる一方で、まだ多くの田畑や竹林が残っていた。

「ずいぶん新しい町に来たな」

東浦亮典さんは1971年、鷺沼駅から徒歩5分ほどの場所に引っ越してきた。父親が購入した木造平屋の一戸建て住宅。近所には同じタイプの家が並んでいた。東急田園都市線の溝の口-長津田間開通から5年後だった。

■緑と都市の調和

市の人口は65年に85万人を突破し、その8年後には100万人にまで膨れ上がった。急激な人口増加は当時の高津、多摩両区の新興住宅地に集中。82年に宮前、麻生へと分区し、新2区でも増加は続いた。

川崎、横浜、大和、町田の4市にまたがる「多摩田園都市」。戦後東京の人口過密が予期された50年代、東急電鉄が自然と都市機能が調和した住宅地の供給を目指した。手本としたのはロンドン郊外。道路や公園、町並みが計画的に整備され、緑豊かで美しい景観が誕生していった。

79年には新玉川線と営団地下鉄(現・東京メトロ)半蔵門線が相互直通運転を開始。渋谷や日本橋など都内へのアクセスは飛躍的に向上した。「どんどん給料が増え、自宅は2度建て替えた。周囲もあっという間に瀟洒な家になった」と東浦さんは振り返る。

ブームに拍車をかけたのは、83~85年に放映されたテレビドラマ「金曜日の妻たちへ」シリーズ。たまプラーザ駅(横浜市青葉区)周辺を舞台に洗練されたライフスタイルが描かれ、高級志向の“神奈川都民”化が高まっていった。

87年10月に発表された基準地地価上昇率は、たまプラーザ近くの美しが丘が189%で全国1位、鷺沼は186%で2位。3~5位も市内の田園都市沿線が占めた。

「もはや一般サラリーマンが、こうした地域で庭付き一戸建てのマイホームを手に入れるのは絶望的」(当時の本紙)な高級住宅街だった。

■成熟し次世代へ

鉄道敷設から半世紀近く。おしゃれで憧れの的だった町も、今の喫緊の課題は住民の高齢化だ。

「息子や娘の家族と同居する人は少ない。山坂が多く街路樹の傷みも出てきている。高齢者が安心して住み続けるにはどうしたらいいか」。鷺沼町会の持田和夫会長は、これまで以上に近隣同士のつながりや助け合いが必要になると話す。

東浦さんは今、東急電鉄企画開発部統括部長として、たまプラーザエリアで次世代の町づくりに取り組んでいる。医療や介護、情報化システムなどさまざまなテーマがワークショップで話し合われ、民間事業者と住民、行政が共に関わる新しい仕組みづくりに向けた模索が続く。「地域の活動が活発化すれば、行政任せではない成熟した町になる。鷺沼にもいずれ波及させたい」

【神奈川新聞】


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