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自活、苦学…進学に壁 養護施設の若者支えて NPO法人が奨学金

社会 神奈川新聞  2014年06月29日 11:00

スピーチコンテストのチラシを手に、将来の夢を話す狩野さん=川崎市内
スピーチコンテストのチラシを手に、将来の夢を話す狩野さん=川崎市内

日々の生活に追われ、将来への希望が見いだせない。夢を持っても進学できず、かなえられない-。そんな“希望格差”に苦しむ児童養護施設の若者をサポートしようと、奨学金支援プログラム「カナエール」のスピーチコンテストが7月6日、初めて横浜で開かれる。チケット代は奨学金などに充てられ、夢の実現を後押しする。

児童養護施設では、親の疾患や貧困、虐待などで親を頼ることができない2歳以上の子どもたちが生活。18歳で高校を卒業すると退所して自活しなければならず、厳しい現実を前に進学を諦めざるを得ないケースが多いという。

同プログラムを運営するNPO法人ブリッジフォースマイル(東京都)によると、大学などへの進学率は20%にとどまり、全国平均の75%との差は歴然。進学できても学業とアルバイトの両立に疲弊するなどで中退率は30%に上り、全国平均の3倍にもなる。

こうした苦境にある奨学生を支援する同プログラムは、一時金30万円と卒業まで毎月3万円を給付。他の奨学生や支援者と会う機会を定期的に設けるなど卒業まで見守る仕組みも整えており、「資金」と「意欲」の両面でサポートする。これまでに29人が奨学生となっている。

対象は、16~21歳の大学や専門学校への進学を希望する施設入所者や出身者、里親制度の利用者で、面接や書類審査で選ばれる。毎年夏に開かれるスピーチコンテストへの参加が求められ、奨学生は120日間、ボランティアらのサポートを受けながら準備。夢や進学への思いをテーマに原稿を作成する過程で自分を見詰め直し、進学や夢への意欲を高める。

スピーチコンテストは横浜市中区の市開港記念会館で7月6日午後1時半から。市内の施設出身者ら計10人が参加する。チケット代5千円。申し込み・問い合わせは、ブリッジフォースマイル事務局電話03(6842)6766、またはホームページcanayell.jp/contest

◆「次世代に恩返しを」 川崎の奨学生 大学2年・狩野さん

川崎市内に住む私立大学2年の狩野健太さん(19)はカナエールの奨学生となり、進学の夢をかなえた。

幼少時代、両親が離婚して困窮し、妹とともに里子に出された。早朝から学校に遅刻するのも顧みず掃除をさせられるなど、厳しい環境だった。里親の元を離れ、同市内の児童養護施設に入所。中学1年から高校卒業までを過ごし、今は20歳までの特例として同施設のグループホームで暮らす。

高校で世界史を学び「もっと世界のことを知りたいと思った」。だが、進路希望を出す2年生になり、がくぜんとした。大学進学には数百万円の学費が必要で、さらに生活費も欠かせない。「自分は通えないんじゃないか」と打ちのめされた。

転機はブリッジフォースマイルの活動への参加だ。退所後の生活に向けて金銭感覚など幅広く学ぶ中、奨学金プログラムを知り、高校3年の2月に応募した。進学に希望が湧き、受験勉強に打ち込んで志望大学に合格。自身の将来を切り開き、施設関係者など周囲の人々の気持ちに応えたいと努力を重ねた結果だった。

今は毎月3万円のアルバイト代と3万円のカナエールの奨学金を生活費と退所後用の貯蓄に充てる。この奨学金がなければもっとアルバイトをしなければならず、学業に打ち込める環境の土台となっている。さらに授業料に充てている他団体の奨学金と異なり、返済の必要がないことが、将来の安心感を与えてくれている。

奨学生はスピーチコンテストへの出場が求められ、自身は大学1年だった昨年夏に登壇した。ボランティア3人のアドバイスを受けながら原稿を執筆し、「自分をサポートしてくれる人がいると感じ心強かった」。同時に「自分の過去を見詰め、将来も深く考えたことで、次のステップを見つけることができた」と振り返る。

「世界を知りたい」という思いを実現させ、大学では国際経済学を学ぶ。卒業後は食品メーカーへの就職を志望する。自身が暮らした施設にはメーカーが品物を寄付することもあった。自分もおいしい物を作り、子どもたちに配りたい。金銭面でも力になりたい。「自分の受けた恩を次世代にバトンタッチする。それが将来の目標です」

【神奈川新聞】


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