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「パパ、パパ」… 厚木・男児放置死:暗闇、孤独、衰弱、わずか5年の命

社会 神奈川新聞  2014年06月21日 03:09

男児の遺体が見つかったアパートの玄関前には、花束やお菓子、ジュースなどが供えられていた=19日、厚木市下荻野
男児の遺体が見つかったアパートの玄関前には、花束やお菓子、ジュースなどが供えられていた=19日、厚木市下荻野

わずか5年の命だった。親の愛情を知らぬまま放置され、衰弱してやせ細った男児は真っ暗な部屋で独り、最期の時を迎えた。父親(36)の県警に対する供述などから、男児が死亡するまでの経緯が明らかになってきた。

「この春、中学生になる男の子の所在が分からない」。県厚木児童相談所(児相)からの通報を受け、厚木署員が父親に同行を求めて2DKのアパートを訪れたのは5月30日。雨戸が閉ざされた6畳の和室で、身長1メートルほどの白骨化した遺体が布団の上に横たわっていた。衣類はぼろぼろで、ひどく変色していた。周囲には弁当の空き箱やおにぎりの空き袋、ビニール袋に入ったおむつなどが膝上の高さまで積み上がっていた。生きていれば、男児の13歳の誕生日だった。

2001年5月、父親は妻とアパートで暮らし始め、直後に男児が生まれた。夫婦は消費者金融からの多額の借金を抱え、生活苦からけんかが絶えなかった。04年10月、妻は父親からの暴力を理由に家を出た。間もなく、料金未納で電気が止まった。

当時、夜勤のトラック運転手だった父親。コンビニのおにぎりやパン、ペットボトル入りの飲料水を買い与え、「パパ、パパ」と服を引っ張る男児を真っ暗な部屋に残したまま、出勤した。保育園にも通えず、男児は言葉の発達が遅れた。話せるのは「パパ」「ママ」「ごはん」程度。トイレも使えず、いつも紙おむつをはいていた。

「仕事と育児の生活に疲れた」「借金取りが来る」。05年ごろからは女性と交際を始めた。当初は週5日ほどだった帰宅は徐々に減り、男児が死亡する2カ月ほど前には週1、2日になった。男児はあばら骨が浮き出るほどやせ細ったが、父親は育児放棄(ネグレクト)の発覚を恐れ、病院に連れて行かなかった。

この間、父親は和室の掃き出し窓や引き戸のふすまを粘着テープで目張りをしていた。出勤中に男児が1人でアパートの外に出たことがあり、自由に出られないようにするためだった。

「このままでは死んでしまう」。父親が男児の生きている姿を最後に見た時には、自分で立ち上がったり、おにぎりやパンの袋を開けたりすることができないほど衰弱していた。か細い声で「パパ、パパ」と呼び続けていたが、「怖くなり、1時間もたたないうちに家を出た」。

約1週間後に帰宅した時にはすでに冷たくなっていた。その後は一度も、アパートに戻らなかった。男児は06年10月から翌07年1月ごろに死亡したとみられ、遺体が発見されるまでには7年以上がかかった。

県警の調べに対し、父親は「子どものことは一日たりとも忘れたことがありません」と話す。両親とは疎遠で頼れず、男児を託児所に預ける発想もなかった。男児の母親(32)は事件を報道で知り、「(自分に)経済力がなく、男児を連れて行かなかった。母親として未熟だった。悔やんでも悔やみきれない」と話したという。

アパートの家宅捜索では1冊のアルバムが見つかった。残されていたのは、生まれたばかりの男児が両親に囲まれた家族写真。だが、その後の成長の姿はなかった。

■家族手当詐取で再逮捕

遺棄致死容疑は処分保留

厚木市下荻野のアパートの一室で、男児=当時(5)=の遺体が見つかった事件で、男児の死亡後に勤務先から家族手当をだまし取ったとして、県警捜査1課と厚木署は20日、詐欺の疑いで、同市愛甲3丁目、父親(36)を再逮捕した。また横浜地検は同日、保護責任者遺棄致死容疑について処分保留とした。地検は理由を明らかにしていない。

再逮捕容疑は、男児が死亡した後も、勤務していた食品配送会社(本社・東京都稲城市)に届け出ず、2007年8月31日から今年5月30日までの間、男児の家族手当計41万円をだまし取った、としている。同課によると、同容疑者は「男児が亡くなったことを言えず、会社にうそをついていた」と供述、容疑を認めている。

同課によると、同容疑者は当時、厚木市内の営業所にトラック運転手として勤務。男児が01年5月に誕生後、家族手当として月5千円を受け取っていた。男児は06年10月ごろから翌07年1月ごろの間に衰弱死したとみられる。

■厚木の所在不明女児

南米在住と確認

児童生徒の所在不明問題で厚木市教育委員会は20日、昨年4月に市立小学校に入学していたはずの女児(7)が外国籍の母親と一緒に南米で暮らしていることを確認した、と発表した。

市教委によると、女児が2009年11月に母親と出国した記録が、東京入国管理局で照会できた。担当者が今月19日、国際電話で本人や家族と話して安否確認した。

女児は住民票に記載されたアパートに不在で連絡も取れないため、昨年7月に学齢簿から削除されていたが、市内で発覚した男児の遺棄事件を受けて再調査していた。

【神奈川新聞】


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