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「五輪前に新市庁舎」前のめりの横浜市 「なぜ急ぐ」と疑問の声

政治行政 神奈川新聞  2014年06月17日 03:00

写真中央部のドーム型施設がある一角が、横浜市の新市庁舎建設予定地の北仲通南地区。現市庁舎は、写真奥の横浜スタジアム付近にある
写真中央部のドーム型施設がある一角が、横浜市の新市庁舎建設予定地の北仲通南地区。現市庁舎は、写真奥の横浜スタジアム付近にある

2020年の東京五輪を控え、建築資材や人件費の高騰により公共施設の建設を凍結したり、先延ばししたりする自治体が増えている。五輪の会場自体も、東京都の舛添要一知事が費用を圧縮するため招致時の計画見直しを打ち出した。専門家からは「歳出削減の視点からも公共事業を五輪後に延ばすのは合理的な判断」との声が上がる。一方、横浜市は「五輪は最大の好機」として計画を前倒しして五輪前の新市庁舎の完成を掲げており、判断の差が際立っている。

千葉県木更津市は、16年に予定していた新市庁舎の移転を東京五輪後に延ばすことにした。当初関心を示していた企業グループが試算した事業費が市の予定価格を上回り、参加を辞退。市は今年4月の入札を取りやめた。総事業費を直近の単価で再計算すると、当初より約40億円増の約150億円になったという。

同市は五輪後に人件費、資材費が下がる前提で(1)現行通り建設(150億円)(2)規模を縮小(131億円)(3)五輪後に建設(110億円)と3パターンを市議会に示し、最も安い(3)が適当だと判断した。

東京都豊島区も、15年に完成予定だった複合施設の建設を20年前後まで凍結することにした。昨年の入札は2回とも不調。今年2月、直近の資材単価で総事業費を計算し直すと、当初より19億円ほど膨らみ、約64億円となったという。

一方、みなとみらい線馬車道駅近くに新市庁舎を建設する方針の横浜市。11年度に複数のゼネコンから聞き取って採用した建設単価は1平方メートル当たり35万円。13年3月の基本構想ではこれを基に建設費を約603億円と想定し、8年程度の事業期間を見込んでいた。

ところが東京五輪の開催決定から2カ月後の13年11月、林文子市長は自民党のパーティーで「東京五輪までに移転を図りたい」と明言。会見などでも「五輪は最大の好機。世界からのお客さまをしっかりとした施設でおもてなしし、シティーセールスしたい」と早期整備の必要性を強調し始めた。

市は同月、現状を分析し建設単価を1平方メートル当たり40万円に増額。同時に高層階に整備予定だった賃貸オフィスの約1万6千平方メートル分は整備しないことを決め、建築費を約613億円とした。さらに今年3月にまとめた基本計画では、事業スケジュールを従来の8年間から6年間に短縮したほか、市会部門の面積を約500平方メートル拡大。最終的に616億円と試算した。

市は設計・施工の一括発注で早期に事業費を固め、建設費高騰リスクを軽減できると見込む。担当者は「五輪後に単価が下がるかは判断できず、そういう前提での試算は今のところは予定していない」と話す。

「五輪特需」の今後の見通しについて、浜銀総研の湯口勉主任研究員は「建築費のうち、鉄骨などの資材価格はやや頭打ちとなりつつあるが、人件費の上昇は歯止めがかかっていない。まだしばらくは上がる」とみる。一方、「五輪後に建設費がどうなるかの判断は難しいが、今のような上昇基調ではなく落ち着くはず。歳出削減の視点からも公共事業を五輪後に延ばすのは合理的」と指摘する。

また、市計画の新市庁舎移転整備に反対するかながわ市民オンブズマン代表幹事の大川隆司弁護士は「コスト増の問題はもちろんだが、東日本大震災の復興予算が執行できず、繰り越されたのも、建設業の人手、資材不足が原因。どうしても必要な公共施設すら入札不調で延期される例も出ている。こうした状況下で建設を急ぐのははた迷惑でしかない」と話している。

市は新市庁舎の設計建築費の来年度の予算計上を目指し、12月ごろには計画内容を具体化。直近の単価に基づき設計建築費を算出する予定という。

【神奈川新聞】


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