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中華街摩登(5)
中華街生まれの「幻のピアノ」 横浜開港資料館に寄贈

話題 神奈川新聞  2014年06月09日 03:00

周シュクブンさんが奏でる周ピアノに耳を傾ける寄贈者の松尾さん(左端)と調律師の川本さん(後列右端)ら=横浜開港資料館
周シュクブンさんが奏でる周ピアノに耳を傾ける寄贈者の松尾さん(左端)と調律師の川本さん(後列右端)ら=横浜開港資料館

 1910年代から横浜中華街で約300台製造されたものの、現在はほとんど残っておらず“幻のピアノ”と呼ばれる「周ピアノ」。ほぼ製造当時の部品のままの貴重な周ピアノが横浜開港資料館(横浜市中区)に寄贈された。2日には周ピアノ創業者の孫・周シュクブンさん(72)=同区=が演奏し、「関東大震災で亡くなった祖父は顔を見ることもできなかったが、こうやってピアノを弾けるのは誇り」と喜んだ。

 同館によると周ピアノは、中国・上海でピアノ製造技術を身に付けた華僑の周筱生(しょうせい)氏が横浜中華街で製造を始めた。周氏が関東大震災で亡くなった後、息子が跡を継いだが、45年の空襲で工場が焼失、製造が途絶えた。

 2003年に同館が周ピアノの調査を始めてから、「S・CHEW」の刻印が目印のピアノは全国で14台が確認されたが、その大半は音が出ないか部品を交換したものだった。

 今回、同館に寄贈されたピアノはほぼ製造当時部品のまま、演奏可能な状態で保管されていた。寄贈者の松尾典子さん(69)=相模原市南区=宅で、最近まで弾き続けられてきたからだ。

 このピアノは1933年、松尾さんの母方の祖父・小田野彦也氏が、松尾さんの母・磯部豊子さんの東京音楽学校(現・東京芸大)受験のために中古で購入したものだ。磯部さんは音楽学校入学後このピアノで練習を重ね、結婚後も松尾さんら娘たちとピアノを楽しみ続けたという。

 磯部さんが7年前に91歳で亡くなった後、同館への寄贈が決まり、周氏のひ孫に当たる川本麻樹さん(45)=横浜市中区=が調律した。川本さんは「長年弾き続けてもらったおかげで、曽祖父が製造した当時のままの音を聴くことができた」と感慨深げだ。


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