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第4次厚木訴訟判決へ
爆音の行方(上)命削るリスク懸念 悪影響「がん匹敵」

社会 神奈川新聞  2014年05月18日 16:07

厚木基地に着陸するため市街地を低空飛行する米海軍の艦載機=大和市上草柳
厚木基地に着陸するため市街地を低空飛行する米海軍の艦載機=大和市上草柳

 「妹は耳をふさぎ、ママに抱きつく。爆音は嫌だ」

 厚木基地に離着陸する米軍機、自衛隊機の飛行ルートの真下にある大和市上草柳の住宅で小学4年生の女児(9)はつぶやいた。傍らで母親の鶴丘さおりさん(37)は「爆音を聞くと心臓がドキドキして、ストレスや睡眠不足につながっている。高血圧に影響しているのでは、と考えてしまう」と話した。

 毎年5月ごろ、厚木基地周辺の騒音はピークを迎える。空母出港を控え、艦載機部隊の離着陸が増えるためだ。街中では「ゴー」というジェットエンジンの音が響き渡り、窓を閉めていても、テレビや電話の会話がかき消される。

 一般的に、電話のベル並みといわれる70デシベル以上の飛行機のエンジン音が、5秒以上続いた場合に航空機騒音と判断されている。大和市では2013年、2万2711回測定した。電車の線路脇に例えられる100デシベル以上は2919回を記録。最高音は自動車の警笛に例えられる110デシベルを大きく上回る120・3デシベルだった。

 すさまじいエンジン音を聞かされ続けて、そこで暮らす人々の健康に影響はないのか。小田急線鶴間駅近くで焼き鳥店を夫婦で営む小林智子さん(69)は「爆音を聞くとイライラする。持病の高血圧の原因の一つになっていると思う」と不安がる。とはいえここに生活の基盤があり、引っ越しはできない。

 環境騒音と健康に及ぼす影響が専門の北海道大学大学院の松井利仁教授(55)は航空機騒音により失われる命の年数を世界保健機関(WHO)の指標を使って推定した。

 その年数を100万人で比較した場合、厚木基地周辺の航空機の騒音基準「WECPNL値」(W値=うるささ指数)75以上の区域にいて騒音で失われる年数は、日本全国の心疾患で失われる年数の1・4倍となった。特にW値95以上の区域ではがんに匹敵する値となる。松井教授は「基地周辺では極めて高い健康損失が集中している」と指摘した。

 国を被告に航空機の飛行差し止めと騒音被害の損害賠償を求めて、1976年から続く厚木爆音訴訟は現在、4回目。約7千人の原告には鶴丘さんも、小林さんもいる。松井教授も横浜地裁に提出した意見書でこう断じた。

 「司法が航空機騒音について対策を行う必要がないと判断することは、騒音が健康に与える影響について人体実験が続くことに相当する」

 「これ以上、高血圧が悪化したら、生活できなくなる。損害賠償のお金が欲しくて原告になったわけでない。ただ爆音を止めてほしいのです」。小林さんの話は爆音で何度も遮られた。

  ◇

 21日、4次訴訟の判決が横浜地裁で出される。過去3回の訴訟で騒音の違法性が認定され続けているが、現在も騒音はやまない。にわかに動きだした集団的自衛権の行使容認をめぐる議論で、基地自体の認識にも変化が見られている。関係者に思いを聞いた。


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