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人気新車情報の機密を不正取得 県警が日産の元社員を逮捕

社会 神奈川新聞  2014年05月14日 12:34

容疑者が勤務していた日産テクニカルセンター =厚木市岡津古久
容疑者が勤務していた日産テクニカルセンター =厚木市岡津古久

日産自動車(本社・横浜市)の発売前の新型車情報を不正に取得したとして、県警生活経済課と厚木署は13日、不正競争防止法違反(営業秘密領得)の疑いで、元日産社員の男(37)=厚木市愛甲西3丁目=を逮捕した。業界関係者によると、同容疑者は商品企画に携わり、2013年7月末に退社後、同8月にいすゞ自動車(本社・東京都品川区)に技術職として転職した。機密情報の外部流出は確認されていないが、県警は不正に利益を得る目的で持ち出したとみている。

逮捕容疑は、13年7月27日、勤務先だった日産テクニカルセンター(厚木市岡津古久)からサーバーコンピューターにアクセスし、発売前だった「エクストレイル」の新型モデルの販売予定価格を含む計4件のファイルデータを、外付けハードディスクに4回にわたってコピーして持ち出した、としている。県警の調べに対し、「同僚らが一緒に写った写真データを入手するためだった」と供述、容疑を否認している。

県警によると、同容疑者は退社直前、新型車の機密以外にも業務に関わる情報を含む延べ約5千件のデータを自身のノートパソコンに取り込んでいた。04年8月に入社し、エクストレイルの開発に携わった経歴はあるが、当時はミニバンの企画担当だったという。端末にIDとパスワードを入力し、サーバーにアクセスしていた。

日産は13年6月の退社の申し出を受け、退職者への機密漏えい対策として同7月にアクセス履歴(ログ)を調べたところ、不正取得の形跡が見つかった。同11月と14年1月、同容疑者を告訴していた。

エクストレイルはアウトドア派の若者らを客層に狙ったスポーツタイプ多目的車(SUV)で、07~09年度の販売台数は3年連続でSUVの国内トップ。フルモデルチェンジした3代目の新型は13年12月16日に発売された。

日産広報部は「企業防衛の観点から告訴に踏み切った」と説明している。

いすゞ広報グループは「(容疑者の)入社の経緯や、日産から持ち出したとされる情報を含め、事実関係を確認中」としている。

◆問われる管理体制

「モラル低い従業員も」専門家

機密情報の流出をどう防ぐか。国際競争の中で生き残りを懸ける企業にとって生命線ともいえるだけに、企業側の管理体制とともに、従業員のモラルも問われている。

日産自動車によると、機密情報へのアクセスはIDやパスワードで制限しているほか、より高度な社内機密情報は一部の限られた幹部しか閲覧できない仕組みになっている。

「他社との競争の中で、販売計画は外部に漏れてはならない情報」と同社。その漏えいを防ぐには、制限を強化する方法もあるが、業務の停滞を招きかねない。円滑な情報交換が欠かせない企画部門などでは「ある程度、横断的に情報にアクセスできる」(同社)。県警などによると、岡村容疑者の担当もこうした企画部門だった。

とはいえ、日産の現役技術者によると、外部記録装置へのコピーには、特別な手続きが必要になる。さらに「情報を持ち出せば、ログが残る」とこの技術者。情報の移動について日常的なチェック体制も整っているという。情報の持ち出し方法について、この技術者は「職務上の必要性からコピーが必要だと申請し、社用のPCへダウンロードした後、私用の外部記録装置へ移したのでは」と推測するものの、「ばれない、と高をくくっていたのではないか」とあきれたように話した。

「新車の営業戦略は競争が熾(し)烈(れつ)。技術情報でなくとも、同業他社に情報が漏れれば損益に影響する」と指摘するのは、関西大学客員教授でリスクマネジメントに詳しい郷原信郎弁護士。「情報管理が厳しそうな大企業でも、どこに盲点があるか分からない。具体的な検証が必要だろう」と話す。

日産では、クイズ形式を取り入れるなどした研修が毎年行われているといい、同社は「以前から力を入れて情報管理教育を行っている」と強調。今回の事件を踏まえた対応は考えていないという。

自動車業界を20年にわたり分析してきたナカニシ自動車産業リサーチの中西孝樹代表は、仏ルノーと提携する日産の外資特有の厳しい情報管理体制から「非常に特殊な事件」とみる一方で、「従業員のモラルの低さの問題でもある」とし、従業員への教育の重要性を指摘している。

【神奈川新聞】


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