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「外国人労働者は『機械』ではない」 支援続けるカラバオの会・植田善嗣さん

社会 神奈川新聞  2014年05月13日 14:00

寿地区を拠点に、20年以上にわたって外国人支援に取り組んできた植田さん=横浜市中区
寿地区を拠点に、20年以上にわたって外国人支援に取り組んできた植田さん=横浜市中区

外国籍の人々は日本社会を映す鏡-。そんな思いを胸に、20年以上にわたって外国人支援に取り組む男性がいる。横浜・寿地区を拠点に活動する市民団体「カラバオの会」のスタッフ植田善嗣さん(74)=横浜市港南区。建設現場の労働力不足を補うため、外国人労働者の活用を図る安倍政権の姿勢を「使い捨ての発想」と批判。自らも日雇い労働者として長く現場に立ち、外国人労働者が身を置く厳しい境遇を間近で見続けてきただけに、目線は低く、その言葉は重い。「彼らは『機械』ではない。生身の『人間』だ」

1月中旬、横浜市中区で開かれた横浜弁護士会の2013年度の「人権賞」贈呈式。受賞のあいさつに立った植田さんは感謝の言葉を重ね、こう結んだ。「国際貢献、多文化共生という立派な言葉ではなく、目立たず、地味で、地べたをはいずり回るような活動に光を当ててくださった」

振り返れば、言葉通りの日々だった。大学卒業後、5年ほどの会社勤めを経て、会社を経営。だが、10年ほどで倒産し、1980年代初めに日雇い労働者となった。日本人が嫌う「きつい」「汚い」「危険」の3K職場。日本中が好景気に沸く中、工事現場は慢性的な労働力不足に陥り、外国人労働者がその穴を埋めていた。

目にしたのは、彼らに対する不当な扱いの数々。上司が口汚くののしり、浅黒い肌を呼び名にする。各自に番号を割り振って「1番、こっちに来い」「2番はあっちだ」などと怒鳴る。見るに見かねて「刑務所じゃない。名前があるんだ」と口を挟んだこともあった。

一方、信仰する教会活動の一環として、90年ごろから寿地区に足を運ぶようになった。外国人支援に取り組む「カラバオの会」の存在を知り、91年からはスタッフとして労働や生活に関する相談を開始。賃金の未払い、突然の解雇、労働災害時の無補償…。労働基準監督署などに訴えるすべを知らないことに付け込まれ、無保険で働き、けがをしたら放り出される。日々寄せられる切実な相談から、使い捨てにされる現実を思い知った。

2000年代初め、自身も突然、日雇いの仕事を失った。「明日から仕事がなくなった。もう来なくていい」。約20年間続けた日雇い労働者の生活は、この一言であっけなく終わった。それでも仕事にあぶれることなく、保険にも入り、健康を大きく損なうこともなく過ごした日々を振り返り、つくづく思う。「外国籍の人々に比べれば、恵まれていました」

■「蛇口開け閉め」

小柄で温和な語り口。だが一転、身を乗り出し、語気を強めて一言。「気に入らないねぇ」。安倍政権が打ち出した外国人労働者の活用策に話題が及んだときのことだ。

日本は、いわゆる単純労働者を受け入れないと言い続けながら、実際には労働力を確保するため、その時々の社会情勢に応じて「水道の蛇口を開け閉めするように、外国籍の人々を“出し入れ”してきた」。かつてはオーバーステイ(超過滞在)の外国人が現場で働くことを事実上黙認し、続いて彼らを次々と退去強制処分にした。一方で、血縁に基づく日系人と、途上国への技術移転が目的の外国人技能実習生を抜け道として利用。リーマン・ショック後は日系人の帰国を促してきたという。

そして今、建設現場での労働力不足が深刻化する中、20年の東京五輪を控え、実習生の受け入れ期間延長を模索している。

だが、技能実習制度は残業代の未払いやパワハラ、セクハラなどの問題が後を絶たず、国連や米国務省から「奴隷的労働」「人身取引」と指摘されている。そもそも、働いているのは勉強のためという建前は変わらず、将来的な帰国が大前提。「今回もまた、蛇口の開け閉めでやり過ごそうとしている」

海外からの単純労働者を排除する方針を掲げながら、裏口から受け入れる。本音と建前を使い分け、正面からの議論を避ける。そんな日本社会の姿が入国管理行政にも見て取れる。

同時に、そこから透けて見えるのは、経済的なメリットを最優先に追求する発想だ。「労働力不足を補うために入れましょうというのなら、『機械』の輸入と変わらない。外国籍の人々を『人』として見ていない」

「人」という視点の欠如は実習生に限らず、広く外国人支援策にも通底する。人が増えれば、いろいろな問題が起きるのは当然だ。そこから逃げず、解決に向けて努力を積み重ねることが欠かせない。だが実際は現実に目を背け、場当たり的な対応に終始。社会保障や学校教育などの受け入れ態勢は乏しく、親世代の貧困が子どもにまで引き継がれる「負の連鎖」が定着している。

経済優先で人権軽視-。その姿勢は、日本人にも影を落とす。「外国籍の人々が暮らしやすい社会は当然、日本人も暮らしやすい。同様に、彼らが暮らしにくければ日本人にも影響する。多くの日本人も生きづらさを感じるこの国の現状を見れば、経済最優先がもたらすひずみを誰も否定できないはずです」

■根底に差別意識

外国籍の人々への差別意識、特にアジアの人々への蔑視-。外国人労働者に対する不当な扱いの根っこの部分を、そう言い切る。建設現場ほど露骨ではなくとも、彼らに同行した役所の窓口や病院の診察室でもひしひしと感じてきた。

「なぜ外国人を助けるのか。日本人で困っている人がたくさんいるだろう」。医師にそう問われたこともある。「差別をしているという自覚がない。でもね、今の日本社会ではあの医師の意見は少数派ではなく、むしろ多数派でしょう」。ため息交じりに言葉を継ぐ。「多くの人は、根底に差別意識があることに気付いていない。だからこそ、問題の根は深い」

困っている人がいれば手を差し伸べる。人として当然だ。そこに国籍や出自、肌の色などは全く関係ない。彼らの暮らしぶりは日本社会の民度、成熟度を表すバロメーターでもある。

日本人の日雇い労働者同様、「外国籍の労働者が日本の経済成長を足元で支えてきた。彼らの献身的な働きなしには横浜の発展もなかった」。日雇い労働者として同じ現場に身を置いたからこそ、そう断言できる。

だが、「私たちは、日本人は優秀だという『共同幻想』を持ってやしないか。その上で、他国の人々、特にアジアの人々に対し、排他的で差別的な態度を取ってはいないか」。

差異はあれど、人に、社会に優劣はない。等しく素晴らしく、等しく愚かだ。人間関係の希薄さや家族の崩壊が指摘されて久しい日本。外国籍の人々に接していると、濃密な人のつながりや家族の絆がまぶしく見える。「彼らから学ぶべき事はたくさんある。外国籍の人々の問題を考えることは、私たち日本人、日本社会の問題を見詰めることでもあるんです」

人権賞の贈呈式では「外国籍の人々に多くを教えられ、多くを与えられてきた」と振り返り、こう続けた。「日本の閉鎖性に風穴をあけたい。それこそが、安倍首相がよく言う『国益』にかなうものだと思っています」

◆外国人労働者の就労

日本政府は専門的な技術や知識を必要としない分野での外国人労働者受け入れには慎重姿勢を取り、就労は限定的に認めてきた。外国人技能実習制度の受け入れ期間は最長3年で、現在約15万人が建設や食品製造などの仕事に携わっている。政府は4月の関係閣僚会議で、建設業の人手不足を解消するため、外国人の活用を拡大する緊急対策を決定。2015年度から東京五輪開催の20年度までの時限措置として、技能実習制度の期間を実質的に延ばしたり、帰国した実習生を呼び戻したりすることを柱としている。

【神奈川新聞】


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