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集う人々 憲法をめぐって(上)(1)子育てママ ランチで語ろう

社会 神奈川新聞  2014年05月02日 19:58

ランチを楽しみながら参加者と憲法問題について話し合う太田啓子弁護士(中央)=4月17日、座間市相武台のレストラン「ラ・リチェッタ」
ランチを楽しみながら参加者と憲法問題について話し合う太田啓子弁護士(中央)=4月17日、座間市相武台のレストラン「ラ・リチェッタ」

木曜の夜、座間市の主婦(30)は仕事から帰ってきた夫(31)に、それとなく話題を振ってみた。

「日本がよその国の戦争に加わることになるかもしれないんだって」

その日、4月17日の昼どき、近所のイタリア料理店「ラ・リチェッタ」で開かれたイベントに足を運んでいた。「憲法カフェって言うのよ」

「ふーん」。疲れているのか、夫の反応は薄い。主婦は聞いてきた話を思い起こしながら、続けた。

今の憲法では米国が攻められても、日本は自衛隊を出せない。安倍政権はそれを可能にしようとしている。それも歴代政権が守ってきた憲法の解釈を変えることによって-。

「そうなれば将来、子どもたちが戦争に行くこともあるんじゃないかって」

すると夫は「それは大変だ」とうなずいた。

□ □

憲法カフェは横浜弁護士会所属の弁護士、太田啓子さん(37)が始めた出前講座だ。「お堅く、難しい憲法を語ることがオシャレでカッコいい、になればいい」。街中のカフェを会場にまずは知ることからと、憲法と法律の違いの「○×クイズ」から始める。

主婦に関心があったわけではない。ママ友に声を掛けられ、「お昼ご飯も済ませられるなら」と2歳の長男を連れて参加した。「あの雑誌に載ったことも後押しになった」。子育て世代向け女性雑誌「VERY」3月号で憲法改正の問題が取り上げられていた。太田さんも座談会メンバーとして登場していた。

やはり友人に誘われたという横浜市栄区の女性(41)も「おいしそうな食事をしながらと聞き、敷居がぐっと下がった」と話す。「勉強会」や「講演会」では気後れしてしまう。「意識の高い特別な人たちが集まっていて、『そもそも憲法って何?』とは聞けなそうで」

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自身も2児の母である太田さんは言う。「お母さんたちは、特に子どもの将来に関わる問題だと分かればスイッチが入る」

同世代の母親ら約50人に語り掛けた。「法律は国民が、憲法は国が守るべきルール。個人の自由や権利が損なわれないよう国家権力を縛るのが憲法で、立憲主義の考え方です」。そうと知れば、国民の手の届かないところで憲法の解釈を変え、集団的自衛権を認める危うさが見えてくる。「自衛隊に犠牲が出るようになって志願者が減れば、徴兵制も考えられます」

消費増税は知らないうちに決まっていたと苦笑する主婦も、「憲法が子どもたちの将来と関係があると分かり、怖くなった」。

あの夜以来、夫婦の会話に憲法の話題が出ることはない。育児と家事に追われ、考え続けることは難しい。それでも、と太田さんが締めくくりに憲法の一節を引いたことを思い返す。

12条には、こうある。

〈この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない〉

憲法をめぐる論議の輪が広がりをみせている。集い始めた人々に変化の兆しを見詰める。

【神奈川新聞】


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